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飲食業の倒産 5年ぶりの600件台にとどまる、コロナ関連は前年度の1.5倍(2021年度)

 2021年度(4-3月)の「飲食業」倒産(負債1,000万円以上)は612件(前年度比21.9%減)で、2年連続で前年度を下回った。年度で600件台は、2016年度以来、5年ぶり。
 ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた倒産は309件(前年度比52.2%増)と半数を占め、前年度比1.5倍と大幅に増加した。3月21日、新型コロナ感染拡大に伴うまん延防止等重点措置が全面解除されたが、営業制限の長期化やコロナ禍での生活様式の変化によって、飲食店の置かれた状況は依然として厳しい。
 業種別では、休業や時短営業、酒類の提供中止などで営業活動が制限された「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が150件と、過去30年間で2020年度(175件)に次ぐ2番目の多さになった。また、居酒屋のコロナ関連倒産は150件のうち、85件(構成比56.6%)にのぼった。
 飲食業倒産は、政府・自治体、金融機関の資金繰り支援策や雇用調整助成金の特例措置などが下支えし、前年度(784件)から大幅に減少した。だが、コロナ関連の各種支援が縮小されるなかで、感染者数は高止まりが続いている。
 また、コロナ禍で家飲みなどの新たな生活様式が定着し、在宅勤務・テレワークを継続する企業も多く、コロナ以前の業況に戻るのは難しい。特に、中小・零細規模が多い飲食業界は、資金余力に乏しく、支援策に依存した営業維持が実情だ。コロナ禍の収束が不透明ななか、新型コロナへの対応が遅れた飲食業者も多く、飲食業は支援策が一巡した今後、倒産や廃業が本格的に増勢に転じることが懸念される。

  • 本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー, キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2021年4月-2022年3月の倒産を集計、分析した。

2021年度の飲食業倒産612件のうち、新型コロナウイルス関連は半数超える

 2021年度(4-3月)の「飲食業」倒産は612件(前年度比21.9%減)で、2年連続で前年度を下回った。新型コロナウイルス関連倒産は309件(前年度比52.2%増、前年度203件)で、前年度の1.5倍と大幅に増えた。コロナ関連の各種支援策で飲食業倒産は抑制されているが、コロナ禍の影響を克服できず息切れ倒産する企業が目立つ。
 コロナ関連倒産は、年末年始にかけて感染状況が一時的に落ち着き、2022年1月は2021年度で最少の17件(前年同月23件)にとどまった。だが、感染者数は高止まりし、客足がコロナ以前の水準には戻らず、2月(21件)・3月(39件)は再び増加し、息切れする飲食業者が増加した。

飲食業

業種別 コロナ禍で「喫茶店」業態が苦戦

 業種別では、日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼き肉店などの「専門料理店」が151件(前年度比16.1%減)で最多。以下、コロナ禍で深刻な打撃を受けた「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が150件(同14.2%減)、「食堂,レストラン」が117件(同33.5%減)と続く。
 コロナ関連支援で倒産全体が抑制され、飲食業倒産も前年度比21.9%減だった。ただ、「喫茶店」は56件(前年度59件)発生し、減少率は前年度比5.0%減にとどまった。安価な「コンビニコーヒー」などとの競合に加え、コロナ禍での外出自粛や対面での商談減少など、喫茶店の利用機会の減少が痛手となったとみられる。
 また、業種細分類では「ハンバーガー店」が6件(前年度1件)と、大幅に増加した。

飲食業

原因別 『不況型倒産』が546件で構成比約9割を占める

 原因別は、最多が「販売不振」の509件(前年度比23.8%減)。次いで、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」37件(同5.7%増)、「他社倒産の余波」(同35.7%増)と「事業上の失敗」(同38.7%減)がそれぞれ19件と続く。
 『不況型倒産』(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は546件で、構成比約9割(89.2%)を占めた。
 一方、放漫経営による「事業外の失敗」も5件(前年度1件)発生した。

形態別 消滅型が構成比97.3%を占める

 形態別では、消滅型の「破産」が585件(前年度比20.8%減)で、構成比95.5%を占めた。
 一方、再建型の「民事再生法」は構成比1.9%(12件)で、前年度の同3.1%(25件)から1.2ポイント低下した。コロナ禍で先行きが見通せず、消滅型の倒産を選択する飲食店が増えている。

飲食業

負債額別 「1億円未満」が約9割

 負債額別は、「1億円未満」が541件(前年度比22.2%減)で、構成比は約9割(88.3%)。
 内訳は、「1千万円以上」が444件(前年度比26.3%減、構成比72.5%)、「5千万円以上」が97件(同4.3%増、同15.8%)だった。
 「10億円以上」の倒産も7件(前年度同数)発生した。
 負債額の最大は、アンドモワ(株)(東京、居酒屋経営ほか、破産)の80億円で、飲食業のコロナ関連倒産では最大となった。

従業員数別 「5人未満」の小零細規模が8割

 従業員数別は、「10人未満」が573件(前年度比22.4%減)で、構成比9割(93.6%)を占めた。
 内訳は、「5人未満」が517件(前年度比21.0%減、構成比84.4%)、「5人以上10人未満」が56件(同33.3%減、同9.1%)。
 「50人以上300人未満」は前年度と同件数の2件で、「300人以上」はゼロだった。

都道府県別 増加14、減少27、同数6

 都道府県別件数は、「増加」が14道県、「減少」が27都府県、「同数」が6県だった。
 件数が10件以上の都道府県では、増加が栃木50.0%増(10→15件)、北海道30.7%増(13→17件)、兵庫18.1%増(44→52件)、静岡11.7%増(17→19件)。
 一方、減少は、埼玉52.3%減(21→10件)、福岡45.4%減(44→24件)、愛知43.2%減(67→38件)、山口33.3%減(15→10件)、大阪30.6%減(137→95件)、東京30.1%減(126→88件)、京都27.2%減(33→24件)、神奈川22.5%減(31→24件)、岐阜14.2%減(14→12件)、富山14.2%減(14→12件)、奈良11.7%減(17→15件)、広島11.1%減(18→16件)、千葉7.6%減(13→12件)。
 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令によって営業制限が長期化した地域での倒産増加が懸念されたが、給付金や協力金を含むコロナ関連の各種支援が奏功し、多くの地域で飲食業の倒産は大幅に抑制された。

飲食業

地区別 北海道と東北、四国の3地区で増加

 地区別では、9地区のうち、北海道と東北、四国の3地区のみ増加した。
 増加率の最大は、北海道の30.7%増(13→17件)。次いで、四国の18.1%増(11→13件)、東北の12.5%増(16→18件)。
 一方、減少率の最大は8県中5県が前年度比40.0%減以上だった九州の40.0%減(75→45件)。次いで、関東の24.4%減(229→173件)、近畿の22.2%減(256→199件)、中部の21.8%減(110→86件)、北陸の21.4%減(28→22件)、中国の15.2%減(46→39件)の順。
 東名阪とその周辺を含む大都市圏で減少傾向が顕著となった。

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