• TSRデータインサイト

飲食業倒産のうち、コロナ関連が約5割(2021年度上半期)

 2021年度上半期(4-9月)の飲食業倒産(負債1,000万円以上)は、338件(前年同期比22.4%減)で、年度上半期では2016年度同期以来、5年ぶりに減少した。
 コロナ関連融資や給付金、協力金などの支援策が飲食業の資金繰りを下支えし、倒産は抑制された。ただ、飲食業倒産のうち、コロナ関連倒産は158件と約5割(構成比46.7%)を占め、新型コロナの影響の大きさが改めて浮き彫りとなった。
 9月30日で全国の緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が全面解除された。しかし、2021年度上半期は新型コロナの感染再拡大により、東京など各地で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の適用が長期化していた。対象地域の飲食店は、三密回避への投資に加え、時短営業や酒類提供の停止などを求められ、売上減少とコスト負担で厳しい経営が続いた。
 飲食業倒産では、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が76件(うち、新型コロナ関連倒産42件)、「バー,キャバレー,ナイトクラブ」が32件(同14件)と、コロナ関連倒産は高水準を持続している。酒類提供を前提とした業態では、営業時間の制限による来店客の減少や客単価の低下だけでなく、三密回避による座席削減など客回転の悪化も経営のネックになっている。
 宣言解除後も時短営業や新たな生活様式の浸透、感染への不安などで飲食店の客足がコロナ前に戻るか不透明だ。感染防止対策のコスト増もあり、通常営業へのハードルは高い。さらに、営業再開による資金需要など、過剰債務を抱えた事業者への新たな支援策も必要になっている。

  • 本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2021年度上半期(4-9月)の倒産を集計、分析した。

飲食業倒産の約半数が新型コロナ関連

 2021年度上半期(4-9月)の飲食業倒産は、338件(前年同期比22.4%減)で、5年ぶりに前年同期を下回った。
 飲食業は、人件費高騰などで2016年度上半期以降、倒産が増勢をたどっていた。そこに新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言などで、2020年度同期は過去30年間で最多の436件を記録した。
 しかし、コロナ関連の制度融資や持続化給付金、時短営業協力金、休業協力金などの支援効果が浸透し、2021年度上半期の倒産は大幅に抑制された。
 ただ、コロナ関連倒産は158件(構成比46.7%)に達し、2021年度上半期の飲食業倒産のほぼ半数を占めた。月別では、4月53.7%、5月49.0%、6月38.3%、7月52.5%、8月48.2%、9月38.4%と推移した。

飲食業

【業種別】居酒屋の倒産が30年間で2番目の多さ

 業種別は、最多が日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」が97件(前年同期比5.8%減)。次いで、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」76件(同17.3%減)、「食堂,レストラン」56件(同45.0%減)の順。
 居酒屋は前年同期より減少したが、30年間では前年同期(92件)に次いで、2番目の多さとなった。長期化するコロナ禍で、酒類提供の制限が居酒屋の経営に大きな打撃を与えた。
 新型コロナ関連倒産が占める構成比では、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が55.2%(新型コロナ関連倒産42件)で最も高く、以下、「食堂,レストラン」が53.5%(同30件)、「専門料理店」が50.5%(同49件)と続く。

飲食業

【原因別】『不況型』倒産の構成比が9割超

 原因別の最多は、「販売不振」の290件(前年同期比22.2%減)だった。
 前年同期から増加したのは、「事業外の失敗」の3件(同200.0%増)と、「既往のシワ寄せ」の18件(同12.5%増)だった。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は308件(同20.8%減)で、飲食業倒産に占める構成比は91.1%(前年同期89.2%)にのぼった。コロナ禍での業績悪化により、事業を断念した飲食業者が多かった。

【負債額別】「5億円以上10億円未満」が唯一増加

 負債額別では、唯一、「5億円以上10億円未満」が6件(前年同期比50.0%増、前年同期4件)と、増加した。コロナ関連支援が奏功し飲食業倒産が抑制されるなか、中堅規模の事業者においては支援策とのミスマッチもあったようだ。
 最多は、「1千万円以上5千万円未満」の250件(前年同期比24.6%減、構成比73.9%)で、飲食業倒産の7割以上を占め、体力の乏しい小・零細企業を中心に厳しい業況が続いている。
 「10億円以上」は1件(前年同期比66.6%減、前年同期3件)にとどまった。

飲食業

都道府県別 増加15、減少25、同数7

 都道府県別では、増加が15県、減少が25都道府県、同数が7府県だった。
 増加したのは、青森2→3件、岩手0→3件、山形0→3件、茨城3→6件、栃木6→11件、三重1→2件、富山5→7件、石川4→6件、福井1→2件、兵庫26→37件、島根1→2件、山口7→8件、高知1→4件、佐賀0→1件、長崎2→3件の15県。
 地区別では、東北が前年同期比11.1%増(9→10件)、北陸が同50.0%増(10→15件)、四国が同11.1%増(9→10件)で3地区で増加した。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ