• TSRデータインサイト

コロナ破たん、100件超えは4都府県 「新型コロナウイルス」関連破たん状況

 9月29日は16時時点で「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1000万円以上)が10件判明、全国で累計2030件(倒産1925件、弁護士一任・準備中105件)となった。
 月別では、2021年に入って2月(122件)以降、3カ月連続で最多件数を更新した。5月は124件と4カ月ぶりに前月を下回ったが、6月は155件で過去最多を記録、7月(140件)、8月(124件)に続き、9月も29日までに前月超えとなる136件に達し、高水準で推移している。
 倒産集計の対象外となる負債1000万円未満の小規模倒産は累計108件判明。この結果、負債1000万円未満を含めた新型コロナウイルス関連破たんは累計で2138件となった。
 「緊急事態宣言」は全国で全面解除される見込みで、飲食や観光業を中心に需要回復への期待が高まっている。だが、地域によっては営業時間の短縮要請やイベントの制限などが継続し、当面はサービス業の流動的な事業環境は続く見込みだ。
 また、コロナ関連の金融支援策は継続するが、業績不振が長期化し過剰債務の問題も浮上している。息切れや事業継続をあきらめて破たんに至る小規模事業者などを中心に、コロナ関連破たんは今後も高水準で推移するとみられる。

【都道府県別】(負債1,000万円以上) ~ 16都道府県で30件超え ~

 都道府県別では、東京都が459件(倒産437件、準備中22件)に達し、全体の2割強(構成比22.6%)を占め、突出している。以下、大阪府220件(倒産209件、準備中11件)、神奈川県99件(倒産96件、準備中3件)、 愛知県94件(倒産94件)、兵庫県92件(倒産83件、準備中9件)、福岡県88件(倒産85件、準備中3件)、北海道73件(倒産70件、準備中3件)と続く。
 29日は愛知県で3件のほか、千葉県や埼玉県など7県で各1件ずつ判明した。10~20件未満が18県、20~30件未満が9県、30件以上は16都道府県に広がっている。一方、5件未満は山梨県、鳥取県(各4件)の2県のみ。

【業種別】(負債1,000万円以上)~ 飲食が最多の366件、建設、アパレル、食品卸、宿泊が続く ~

 業種別では、来店客の減少、休業要請などで打撃を受けた飲食業が最多で366件に及ぶ。緊急事態宣言などの対象地域では休業や時短営業、酒類提供の制限などが続き、飲食業の新型コロナ破たんがさらに増加する可能性が強まっている。
 次いで、工事計画の見直しなどの影響を受けた建設業が199件、小売店の休業が影響したアパレル関連(製造、販売)の166件。このほか、飲食業などの不振に引きずられている飲食料品卸売業が97件。インバウンドの需要消失や旅行・出張の自粛が影響したホテル,旅館の宿泊業が95件と、上位を占めている。

【負債額別】(負債1,000万円以上)

 負債額が判明した1990件の負債額別では、1千万円以上5千万円未満が最多の736件(構成比36.9%)、次いで1億円以上5億円未満が649件(同32.6%)、5千万円以上1億円未満が362件(同18.1%)、5億円以上10億円未満が128件(同6.4%)、10億円以上が115件(同5.7%)の順。
 負債1億円未満が1098件(同55.1%)と半数以上を占める。一方、100億円以上の大型倒産も6件発生しており、小・零細企業から大企業まで経営破たんが広がっている。

【形態別】(負債1,000万円以上)

 新型コロナ」関連破たんのうち、倒産した1,925件の形態別では、破産が1,712件(構成比88.9%)で最多。次いで民事再生法が95件(同4.9%)、取引停止処分が87件(同4.5%)、特別清算が21件、内整理が9件、会社更生法が1件と続く。
 「新型コロナ」関連倒産の約9割を消滅型の破産が占め、再建型の会社更生法と民事再生法の合計は1割未満にとどまる。業績不振が続いていたところに新型コロナのダメージがとどめを刺すかたちで脱落するケースが大半。
 先行きのめどが立たず、再建型の選択が難しいことが浮き彫りとなっている。

【従業員数別】(負債1,000万円以上)

  「新型コロナ」関連破たんのうち、従業員数(正社員)が判明した1913件の従業員数の合計は2万1443人にのぼった。
 1913件の内訳では従業員5人未満が1066件(構成比55.7%)と、半数以上を占めた。次いで、5人以上10人未満が371件(同19.3%)、10人以上20人未満が246件(同12.8%)と続き、従業員数が少ない小規模事業者に、新型コロナ破たんが集中している。
 また、従業員50人以上の破たんは2021年1-3月で12件、4月以降は11件発生している。

※ 企業倒産は、負債1,000万円以上の法的整理、私的整理を対象に集計している。
※ 原則として、「新型コロナ」関連の経営破たんは、担当弁護士、当事者から要因の言質が取れたものなどを集計している。
※ 東京商工リサーチの取材で、経営破たんが判明した日を基準に集計、分析した。


改20210929以上

‌               (負債1,000万円以上)                  

20210929以上

‌               (負債1,000万円未満を含む)                      

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ