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国内107銀行、コロナ関連支援で中小企業向け貸出が過去最高

 コロナ禍で企業への資金繰り支援の貸出が進み、国内107銀行の2021年3月期の総貸出金残高は501兆611億円(前年比5.1%増)と急増した。調査を開始した2010年3月期以降、総貸出金残高が500兆円台に乗せたのは初めて。
 このうち、中小企業等向け貸出金残高は340兆8,744億円(同4.4%増)で、貸出金全体の約7割(68.0%)を占めた。また、2012年3月期から10年連続で増加を続け、過去最高を更新した。
 地方公共団体(以下、地公体)向け貸出金残高も36兆2,237億円(同7.9%増)と、調査を開始以降の最高額を更新した。
 貸出金の伸び率は、中小企業等向けが前年(1.9%増)から2.5ポイント増、地公体向けが前年(6.4%増)から1.5ポイント増となった。
 総貸出金残高に対する貸出比率は、中小企業等向けが68.03%(前年68.48%)で、2019年3月期以降、3年連続で低下した。一方、地公体向けは7.22%(同7.04%)で、2年連続で上昇した。企業は資金繰り支援の借入金、各種給付金や助成金などで預金残高が増大しており、銀行は国や自治体への貸出や有価証券への運用を拡大している。
 コロナ禍の当初、銀行は企業の赤字補填、資金繰り支援で積極的に貸出を実行してきた。だが、2021年4月以降は、本業支援に軸足を戻しつつある。今後、過剰債務を抱えた中小企業への対応やアフターコロナに向けた企業の事業再生にどう取り組むのか注目される。

  • 本調査は、国内銀行107行の2021年3月期決算の「地方公共団体向け」と「中小企業等向け」の貸出金残高を前年と比較、分析した(りそな銀行、沖縄銀行は信託勘定を含む)。「中小企業等」には、個人向け貸出を含む。

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地公体向け貸出金残高 前年比7.9%増

 2021年3月期の地公体向け貸出金残高は36兆2,237億円(前年比7.9%増)で、2011年3月期から11年連続で前年を上回り、最高記録を更新した。銀行は資金繰り支援策で企業向け貸出を積極的に進めたが、一方で貸出金が預金として還流し預金残高を増加している。このため、銀行は資金運用が急務で、国や地方自治体などへの貸出を進め、貸出残高を押し上げた。
 107行のうち、地公体向け貸出金残高が前年を上回ったのは57行(構成比53.2%)。前年の54行から3行増加した。
 総貸出金残高のうち、地公体向け構成比は7.22%を占めた。前年の7.04%を0.18ポイント上回り、2年連続で貸出比率が上昇した。また、地公体向け貸出金の構成比が前年を上回ったのは40行(同37.3%)で、前年の44行から4行減少した。
 地公体向け貸出金構成比の最高は、十八親和銀行の39.10%(前年36.59%)。次いで、熊本銀行35.41%(同29.08%)、北洋銀行32.20%(同30.86%)、青森銀行31.23%(同32.11%)、北都銀行28.65%(同29.52%)の順で、構成比30%以上は4行(同3行)だった。

中小企業等向け貸出金残高は過去最高を記録、伸び率上位10行のうち、第二地銀が8行挫

 コロナ禍の中小企業への資金繰り支援などで、2021年3月期の中小企業等向け貸出金残高は340兆8,744億円(前年比4.4%増、同14兆4,327億円増)と急増し、過去最高を記録した。
 ただ、総貸出金残高が増加しており、中小企業等向けの貸出比率は68.03%(前年68.48%)と、3年連続で前年を下回った。
 中小企業等向け貸出金残高が増加したのは、新生銀行、あおぞら銀行、スルガ銀行、東京スター銀行を除く103行(構成比96.2%、前年96行)。
 内訳は、大手行は7行のうち5行(前年7行)、地方銀行は62行のうち61行(同55行)、第二地銀は38行のうち37行(同34行)だった。
 中小企業等向け貸出金残高の伸び率トップは、愛知銀行の前年比22.0%増。中小企業等向け貸出金は2兆482億円で、総貸出金に占める構成比は80.78%(同81.08%)だった。
 次いで、大東銀行が同16.3%増、仙台銀行が同14.8%増、名古屋銀行が同14.5%増、福岡中央銀行が同12.9%増と続き、伸び率上位10行のうち、第二地銀が8行を占めた。
 一方、減少率では、賃貸用不動産向け貸出が減少したスルガ銀行が同8.2%減(1,174億円減)で、減少率が最も大きかった。

中小企業等向け貸出金構成比トップはスルガ銀行、調査開始以来、トップを維持

 中小企業等向け貸出金の構成比トップは、スルガ銀行の97.02%(前年97.92%)。調査を開始した2010年3月期からトップを維持している。
 以下、南日本銀行が94.09%(同93.71%)、関西みらい銀行(同93.95%)と神奈川銀行(同91.90%)が93.78%、静岡中央銀行が93.58%(同93.27%)と続く。
 貸出金構成比の上位10行のうち、第二地銀が7行、地方銀行が3行だった。
 中小企業等向け貸出比率が最も低かったのは、山口銀行の49.44%。ただ、前年の48.42%から1.02ポイント上昇した。貸出比率が50%を下回ったのは、山口銀行だけで、前年の2行(東邦銀行・山口銀行)から1行減少した。

地区別 全10地区で中小企業等向け貸出が増加

 銀行本店の所在地別では、10地区のうち、地公体向け貸出金残高は東京、北陸、中国の3地区を除く、7地区で増加した。増加率トップは近畿の24.8%増、貸出比率のトップは北海道27.47%。
 中小企業等向け貸出金残高は、全10地区で前年を上回った。増加率トップは北海道9.5%増。以下、中部6.5%増、四国6.2%増、九州5.7%増、東北5.5%増の順。貸出比率は近畿78.69%を筆頭に、四国77.91%、関東77.87%、中部76.05%、九州69.96%と続く。


 国内107銀行の2021年3月期の総貸出金残高は、調査を開始した2010年3月期以降、初めて500兆円台に乗せた。コロナ禍の中小企業等への緊急避難的な資金繰り支援で、貸出金を大きく伸ばした。一方で、その副作用として中小企業の過剰債務が新たな問題に浮上し、単なる従来の貸出業務だけでなく、企業育成への力量が問われている。
 コロナ禍が長引き、多くの中小企業は業績回復が遅れている。「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」の民間金融機関分は2021年3月末で受付が終了し、当初の赤字補填から本業支援へのシフトも見受けられるが、まだ動きは鈍いのが実状だ。
 銀行は、コロナ禍で苦境から抜け出せない中小企業の本業支援と同時に、アフターコロナを見据えた経営再建、事業再構築への支援という重い課題への取り組みも求められている。

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