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負債1000万円未満のコロナ関連倒産、小規模倒産は一服し2年ぶりの300件台(2021年1-8月)

 2021年1-8月の負債1,000万円未満の企業倒産は、累計315件(前年同期比27.0%減)で、同期間では2年ぶりに300件台にとどまった。
 負債1,000万円未満の「新型コロナウイルス」関連倒産は65件(前年2-8月累計20件)で、前年同期の3.2倍に拡大し、5社に1社(構成比20.6%)が新型コロナ関連倒産となった。
 産業別では、最多はサービス業他の149件(前年同期比28.0%減)で、構成比は47.3%とほぼ半数を占めた。このうち、美・理容業やエステティック業、芸能プロダクションなどの「生活関連サービス業,娯楽業」が34件(同17.2%増)だった。ただ、コロナ禍で休業や時短営業、酒類提供の自粛が求められる飲食業は41件(同38.8%減)と約4割減少し、給付金や協力金などで倒産は抑制されている。
 原因別では、最多は「販売不振」の237件(同19.9%減)で、負債1,000万円未満の75.2%(前年同期68.5%)を占めた。
 2021年の負債1,000万円未満の倒産は、3月と前年に裁判所の一部業務が縮小した反動の5月を除く6カ月間で前年同月を下回った。コロナ禍の資金繰り支援策は、小・零細規模まで浸透してきた。だが、金融支援も当初の赤字補填から本業支援に変化し、業績回復が遅れた企業にとっては新たな資金調達は難しくなっている。
 コロナ禍の長期化で、多くの企業は業績回復の遅れから経営体力も疲弊している。さらに、小・零細企業では債務の過剰感が強まっており、コロナ禍の国や自治体、金融機関、商工会議所などによる実態に合わせた支援が重要になっている。

  • 本調査は2021年1-8月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の「倒産集計」(負債1,000万円以上)に含まれない負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

倒産件数315件、このうち2割が新型コロナ関連倒産

 2021年1-8月の負債1,000万円未満の企業倒産は315件(前年同期比27.0%減)で、2019年同期以来、2年ぶりに300件台にとどまった。
 コロナ禍での国や自治体、金融機関による緊急避難的な資金繰り支援効果で、負債1,000万円以上の企業倒産は歴史的な低水準が続くが、小・零細規模にも同様の風が吹いている。
 2021年の負債1,000万円未満の倒産は、3月と5月を除いて前年同月を下回り、倒産は抑制された状態が続いている。
 負債1,000万円未満の倒産のうち、「新型コロナ」関連倒産の構成比は1月18.1%、2月5.8%、3月13.2%と低水準だったが、4月以降は4月29.7%、5月26.3%、6月24.3%、7月29.7%に上昇。8月は19.0%にとどまったが、コロナ禍で足元の企業体力が疲弊していることに注意が必要だ。

1000万未満

【産業別】10産業のうち、6産業で減少

 産業別は、10産業のうち、増加は農・林・漁・鉱業(3→6件)、小売業(43→45件)、金融・保険業(1→2件)の3産業。一方、減少は建設業(58→41件)、製造業(23→10件)、卸売業(40→28件)、運輸業(12→11件)、情報通信業(38→16件)、サービス業他(207→149件)の6産業。不動産業(7件)は前年同期と同件数だった。
 産業別の最多は、サービス業他の149件(前年同期比28.0%減)。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は47.3%(前年同期47.9%)で、約5割を占めた。
 次いで、小売業45件(前年同期比4.6%増、構成比14.2%)、建設業41件(同29.3%減、同13.0%)、卸売業28件(同30.0%減、同8.8%)、情報通信業16件の順。
 倒産が増加した小売業は、飲食料品小売業が9件(前年同期比28.5%増、前年同期7件)、機械器具小売業が7件(同75.0%増、同4件)と増加した。
 負債1,000万円未満の「新型コロナ」関連倒産では、サービス業他が36件(構成比55.3%)で最も多い。内訳は、美容業(3件)やエステティック業(2件)を含む「生活関連サービス業,娯楽業」が12件、「飲食業」が11件など。

1000万未満

【形態別】破産の構成比が97.1%

 形態別では、最多が「破産」の306件(前年同期比27.1%減)。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は97.1%(前年同期97.2%)で、前年同期より0.1ポイント低下した。
 このほか、「民事再生法」は5件(前年同期8件)で、すべてが小規模個人再生手続きだった。
 また、「取引停止処分」は2件(同3件)、「特別清算」は2件(同1件)だった。
 負債1,000万円未満は小・零細企業が中心で、業績低迷から抜け出すことは容易でない。それだけに先行きの見通しが立たず、事業継続を断念し、ほとんどが「破産」を選択している。
 コロナ禍の収束が見えないなか、代表者の高齢化も進み、後継者不在も事業継続をあきらめる一因となっている。

【原因別】販売不振の構成比が7割以上

 原因別では、『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)が254件(前年同期比19.6%減、前年同期316件)だった。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は80.6%で、前年同期の73.1%より7.5ポイント上昇した。
 「販売不振」が237件(前年同期比19.9%減)で、構成比が75.2%(前年同期68.5%)と前年同期より6.7ポイント上昇した。
 「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が17件(前年同期19件)だった。
 そのほか、代表者の死亡・病気を含む「その他」が17件(前年同期比13.3%増)。「他社倒産の余波」が22件(同62.0%減)で、関連企業の連鎖倒産が大半を占めた。
 また、「運転資金の欠乏」が8件(同20.0%減)、「事業上の失敗」が7件(同76.6%減)で、設立10年未満の企業がほとんど。

【資本金別】1千万円未満の構成比が9割超

 資本金別では、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が295件(前年同期比25.6%減、前年同期397件)で、2015年同期以来、6年ぶりに前年同期を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は93.6%で、前年同期(91.8%)より1.8ポイント上昇した。
 内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が117件(前年同期比24.5%減)、「個人企業他」が101件(同26.2%減)、「1百万円未満」が50件(同18.0%減)、「5百万円以上1千万円未満」が27件(同38.6%減)だった。
 そのほか、「1千万円以上5千万円未満」が20件(同42.8%減)。
 「5千万円以上1億円未満」は3年連続、「1億円以上」は2年連続で発生がなかった。

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