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2021年上半期(1-6月)宿泊業の倒産状況調査

 2021年上半期(1-6月)の宿泊業の倒産は、件数が43件(前年同期比40.2%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、前年同期は過去20年で2011年(87件)に次ぐ2番目の高水準だったが、反動減となった。
 負債総額は1,197億2,700万円(同178.9%増)で、2年ぶりに前年同期を上回った。14年ぶりに負債1,000億円超の大型倒産((株)東京商事、TSR企業コード:320178285、東京都、負債1,004億8,300万円)が発生し、負債総額を押し上げた。しかし、負債額別では1億円未満の構成比が前年同期比6.2ポイント上昇(26.3%→32.5%)し、倒産の小規模化がみられた。
 コロナ禍を一因とする倒産は22件で、全体の5割(構成比51.1%)を占めた。

宿泊業倒産

 原因別では、「販売不振」が34件(前年同期比24.4%減)で、全体の約8割(構成比79.0%)を占めた。次いで、「既往のシワ寄せ」が3件(前年同期比80.0%減)、「設備投資過大」と代表者死亡などを含む「その他(偶発的原因)」が各2件で続く。
 形態別では、破産が34件(同40.3%減)で、全体の約8割(構成比79.0%)を占めた。次いで、特別清算が6件(同13.9%)で続き、破産と合わせた「消滅型倒産」40件が9割超(同93.0%)を占める。一方、「再建型」は民事再生法3件にとどまった。
 資本金別では、1千万円以上5千万円未満が16件(同37.2%)で最多。次いで、1百万円以上5百万円未満が11件(同25.5%)、5千万円以上1億円未満と5百万円以上1千万円未満が各5件。個人企業他は4件(前年同期比20.0%減、前年同期5件)発生した。
 負債額別では、1億円以上5億円未満が20件(構成比46.5%)で最多。一方で、1千万円以上5千万円未満が10件(同23.2%)で、構成比は前年同期(20.8%)より2.4ポイント上昇した。5千万円以上1億円未満も前年同期同数の4件で、倒産の小規模化が進んだ。
 従業員数別では、5人未満が26件で6割(構成比60.4%)を占めた。構成比は前年同期(50.0%)より10.4ポイント上昇し、小型化の様子をみせた。
 地区別では、増加が2地区、減少が6地区、同数が1地区。関東13件(前年同期12件)が最多で、中部7件(同21件)、近畿(同13件)と中国(同5件)、九州(同7件)が各5件、東北4件(同9件)、北海道3件(同1件)、北陸1件(同3件)の順。四国(同1件)は発生しなかった。都道府県別では東京都5件が最多で、北海道と千葉県が各3件で続く。


 2021年上半期(1-6月)の宿泊業の倒産は前年同期比40.2%減(72→43件)だった。初めて緊急事態宣言が発令され、上半期では過去20年間で2番目の高水準だった前年同期から一転、2年ぶりの減少となった。コロナ禍での政府や金融機関による金融支援が、倒産増加を抑制しているとみられる。
 しかし、新型コロナウイルス関連倒産の第1号発生から1年余りを経過した。今なお、国内外ともに人の移動が制限され、当面の業況見通しが厳しい宿泊業では、経営破たんが増加に転じてもおかしくない。さらなる金融支援や需要喚起策が求められているほか、業態転換も視野に入れた抜本的な経営の見直しが必要といえるかもしれない。

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