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2021年上半期(1-6月)「負債1,000万円未満の倒産」調査

 2021年上半期(1-6月)の負債1,000万円未満の企業倒産は236件(前年同期比21.8%減)で、2年ぶりに前年同期を下回り、200件台に減少した。
 また、236件のうち、「新型コロナウイルス」関連倒産は46件(構成比19.4%)だった。
 四半期別では、新型コロナの感染が拡大した当初の2020年4-6月は168件(前年同期比51.3%増)と急増したが、その後は増加率が縮小。2021年1-3月は120件(同10.4%減)、4-6月は116件(同30.9%減)と減少率が拡大した。コロナ禍の資金繰り支援策が、小・零細規模の企業、商店に広がり、負債1,000万円未満の倒産抑制につながった。
 産業別で、最多はサービス業他の109件(前年同期比27.8%減、構成比46.1%)。内訳では、「生活関連サービス業,娯楽業」が28件(前年同期比40.0%増)と増加した。一方、コロナ禍の打撃が大きい飲食業は30件(同34.7%減)、宿泊業は1件(前年同期3件)とそろって減少した。
 原因別では、最多は「販売不振」の176件(前年同期比14.5%減)で、構成比は74.5%(前年同期68.2%)と前年同期より6.3ポイント上昇した。
 2021年に入り、3月と5月を除く4カ月で前年同期を下回った。コロナ関連の金融支援は、1年を経過し、当初の赤字補填から本業支援に移行しつつある。このため、業績回復が遅れた企業は、新たな資金調達が限界に達しつつある。
 また、経営基盤がぜい弱で、過剰債務に陥っている小・零細企業は、経営再建の支援を受けるのもハードルが高い。今後は、国や自治体、金融機関、商工会議所などが手を組み、企業の実態に合わせた支援が求められる。

  • 本調査は2021年上半期(1-6月)に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の「倒産集計」(負債1,000万円以上)に含まれない負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

倒産件数236件、2年ぶりに200件台に

 2021年(1-6月)上半期の負債1,000万円未満の企業倒産は236件(前年同期比21.8%減)で、2年ぶりに200件台にとどまった。コロナ禍の四半期ごとの倒産では、2020年1-3月134件(同0.7%増)、4-6月168件(同51.3%増)、7-9月187件(同36.4%増)、10-12月141件(同7.6%増)と前年同期を上回った。特に、緊急事態宣言が発令された2020年4-6月、7-9月は増勢が強まった。その後、資金繰り支援などの拡充で増加率は縮小し、2021年1-3月は120件(同10.4%減)、4-6月は116件(同30.9%減)と減少に転じた。
 コロナ禍の資金繰り支援策は、小・零細規模の企業・事業所にも一定の効果を見せた。だが、コロナ禍の長期化で業績回復が遅れた小・零細企業は多い。こうした企業では、体力も疲弊感を強めており、今後の動向が注目される。

1000万未満

【産業別】10産業のうち、6産業で減少

 産業別は、10産業のうち、増加は農・林・漁・鉱業(3→6件)、小売業(32→34件)、不動産業(4→6件)の3産業。減少は、建設業(37→30件)、製造業(13→8件)、卸売業(26→21件)、運輸業(11→9件)、情報通信業(24→12件)、サービス業他(151→109件)の6産業。金融・保険業(1件)は前年同期と同件数だった。
 産業別の最多は、サービス業他の109件(前年同期比27.8%減)。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は46.1%(前年同期50.0%)で、4割以上を占めた。
 次いで、小売業34件(前年同期比6.2%増、構成比14.4%)、建設業30件(同18.9%減、同12.7%)、卸売業21件(同19.2%減、同8.8%)、情報通信業12件の順。
 倒産件数が増加した小売業では、飲食料品小売業が7件(前年同期比75.0%増、前年同期4件)、機械器具小売業が6件(同100.0%増、同3件)と増加した。
 一方、コロナ禍で休業や時短営業などで動向が注目された飲食業は30件(同34.7%減、同46件)だった。ただ、飲食業のうち、酒場,ビヤホールは8件(同14.2%増、同7件)と、業況の厳しさがうかがわれる。

1000万未満

【形態別】破産の構成比が97.0%

 形態別では、最多が「破産」の229件(前年同期比22.3%減)。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は97.0%(前年同期97.6%)で、前年同期より0.6ポイント低下した。
 そのほか、「民事再生法」は4件(前年同期3件)で、前年同期より1件増加したが、すべて個人企業の小規模個人再生手続きだった。
 また、「取引停止処分」は2件(同3件)、「特別清算」は前年同期と同件数の1件だった。
 負債1,000万円未満は、小・零細企業が中心のため、業況回復は遅れている。それだけに先行きの見通しが立たず、事業継続を断念して破産を選択する企業が多い。
 また、長引くコロナ禍に加え、代表者の高齢化による後継者不在も事業継続をあきらめる一因となっている。

【原因別】『不況型』倒産の構成比80.5%、上半期として2年ぶりに8割台に

 原因別では、『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)が190件(前年同期比14.0%減、前年同期221件)だった。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は80.5%で、前年同期の73.1%より7.4ポイント上昇した。構成比の80%台は2年ぶり。
 「販売不振」が176件(前年同期比14.5%減)で、構成比が74.5%(前年同期68.2%)と前年同期より6.3ポイント上昇した。
 「既往のシワ寄せ(赤字累積)」は前年同期と同件数の14件だった。
 そのほか、代表者の死亡・病気を含む「その他」が14件(前年同期比75.0%増)。「他社倒産の余波」は16件(同62.7%減)で、関連企業に連鎖し、倒産するケースが大半。
 また、「事業上の失敗」(同77.2%減)と「運転資金の欠乏」(同16.6%減)がそれぞれ5件で、設立10年未満の企業がほとんど。

【資本金別】1千万円未満の構成比が94.0%、10年間で最高

 資本金別では、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が222件(前年同期比20.4%減)だった。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は94.0%で、前年同期(92.3%)より1.7ポイント上昇し、2012年以降の10年間で最高を記録した。
 内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が89件(前年同期比20.5%減)、「個人企業他」が72件(同28.7%減)、「1百万円未満」が38件(同15.1%増)、「5百万円以上1千万円未満」が23件(同30.3%減)だった。
 そのほか、「1千万円以上5千万円未満」が14件(同39.1%減)。「5千万円以上1億円未満」は3年連続、「1億円以上」は2年連続で、上半期としては発生がなかった。

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