• TSRデータインサイト

【独自】エアポートリムジン運行会社が金融機関に支援要請、コロナ禍で業績悪化

 

 「エアポートリムジン」を運行する東京空港交通(株)(TSR企業コード:290777569、東京都中央区)が長引くコロナ禍で業績が悪化し、金融機関に支援を要請したことが5月26日、わかった。
成田空港や羽田空港と都市を結ぶリムジンバスを運行し、東京オリンピック・パラリンピックを見込んで車両を増車していた。だが、コロナ禍で航空便の運休や減便が相次ぎ、利用客が激減し多額の赤字を計上した。
東京空港交通は、バス500台超を保有する空港リムジンバス会社の大手。成田空港や羽田空港と主要ターミナルやホテルなどをつなぎ、コロナ前は1日約1300便を運行し、2019年度の年間乗合輸送人員は912万5000人に達していた。

返済猶予や劣後ローンなどの支援を要請

 複数の関係者が、東京商工リサーチ(TSR)の取材に応じた。東京空港交通は新型コロナの影響を受け、外国人観光客や国内旅行客の減少で乗客数が落ち込み、2021年3月期の売上高は約32億円(前期182億円)と大幅に減少。営業利益は約100億円の赤字を計上したとみられる。
このため、21年3月期中に金融機関が約50億円のコミットメントラインを設定し、融資額を増やしていた。また、同期末に東京空港交通を持分法適用会社としている日本空港ビルデング(株)(TSR企業コード:291157068、東京都大田区、東証1部)などの一部株主が普通株や優先株を引き受け、約40億円の資金を調達。3月29日に資本金を14億4000万円から32億9000万円に増資した後、4月27日に14億4000万円へ減資している。
各種支援策を受けたが、空港リムジンバス事業の回復は不透明で、22年3月期も多額の赤字が見込まれている。こうした状況から取引金融機関に21年6月から23年3月まで22カ月間の借入金の返済猶予を要請した。さらに日本政策投資銀行と商工組合中央金庫から劣後ローンやシニアローンによる合計約30億円の資金調達を計画している。
東京空港交通は、金融機関に役員報酬カット、従業員の削減や雇用調整助成金の活用なども説明しているとみられる。コロナ収束後を見据え、返済猶予(リスケ)と資本増強、コスト削減を柱にした事業再建を目指すとしている。今後、金融機関と支援方法などを調整していく。
東京空港交通の担当者は、「現状、お話できることはない」とコメント。日本空港ビルデングの担当者は、「(東京空港交通は)リムジンバス以外もランプバス(ターミナルビルから航空機までの輸送)など重要な役割を担っている。コロナで厳しい状況だが、ともにコロナを乗り越えていきたい」と支援意向を示している。

東京空港交通(株)

コロナの影響が深刻なエアポートリムジン(5月26日TSR撮影)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ