• TSRデータインサイト

2020年12月期決算 上場企業34社がGC注記・重要事象を記載

 上場企業の2020年12月期決算(2020年1~12月)がほぼ出揃った。
 2月28日までに決算発表した企業のうち、同期の決算短信に「継続企業の前提に関する注記」(ゴーイング・コンサーン注記、GC)を記載した企業は16社だった。
 また、GCに至らないまでも、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業の前提に関する重要事象」(重要事象)を記載した企業は18社だった。


 GC注記・重要事象の記載企業は合計34社で、前年同期(2019年12月期)の22社から12社増加した。このうち、「新型コロナウイルス」による業績への悪影響を理由に挙げた企業は20社と、約6割(58.8%)にのぼり深刻さが増している。

ブライダル・観光関連などに初めて記載

 中間決算まではGC注記の記載がなかったが、本決算で記載した企業は4社だった。
 ブライダル事業を展開し、ホテル・結婚式場「雅叙園東京」を経営するワタベウェディング(株)(TSR企業コード:641093977、東証1部)は、新型コロナの影響を受けて婚礼・宿泊・飲食・旅行関連で大幅赤字を計上。2020年12月期末時点で8億6,300万円の債務超過(連結ベース)に転落した。
 このほか、インバウンド消失や渡航制限で売上が低迷した(株)HANATOUR JAPAN(TSR企業コード:296506427、マザーズ)、ベルトラ(株)(TSR企業コード:293198497、マザーズ)の旅行業の2社。和装雑貨販売と観光客向けの着物レンタルを主力とする(株)和心(TSR企業コード:296593370、マザーズ)も、インバウンド消失や外出自粛の影響が直撃した。
 また、重要事象でも、名門ホテル「椿山荘」を経営する藤田観光(株)(TSR企業コード:291046878、東証1部)や婦人フォーマル大手の(株)東京ソワール(TSR企業コード:291181210、東証2部)など3社が、同期決算で初めて重要事象を記載した。

「資金繰り悪化・調達難の懸念」が急増

 GC・重要事象の記載理由では、上場廃止基準でもある「債務超過」に陥った企業が5社。前年同期は、債務超過はゼロだったが、5社ともに新型コロナの影響で大幅な赤字を計上し、自己資本が消失した。
 また、「資金繰り悪化や、資金調達難が懸念される」とした企業も8社(前年同期2社)と大幅に増加した。
 金融機関のコロナ対応融資など、手厚い資金繰り支援で、企業倒産は抑制されている。ただ、影響が長期間に及び業績回復が見通せないなか、上場企業でも資金繰りに苦慮する姿が表面化している。


 サービス業や飲食を含む小売業などを中心に、12月期決算企業でも新型コロナの悪影響を色濃く受けた。
 長引くコロナ禍で経営体力を削がれている企業も多く、引き続きGC・重要事象の記載企業の動向に注目が集まっている。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年3月2日号に「GC注記・重要事象」記載企業34社を掲載予定)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ