• TSRデータインサイト

「東日本大震災」関連倒産(1月度速報値)

 2021年1月の「東日本大震災」関連倒産は2件(速報値:1月29日現在)で、2カ月連続で前年同月(3件)を下回った。
 昨年(2020年1-12月)の年間集計は34件で、9年連続で前年を下回り、収束傾向をみせる。しかし、震災関連倒産は昨年5月を除いて毎月発生しており、震災発生から10年弱を経てもなお、爪痕の深さを改めて浮き彫りにしている。震災当月の2011年3月以来、震災関連倒産の累計件数は1,977件(1月29日現在)に達した。
 また、震災による直接または間接的な経営ダメージを克服し、立て直しを図ってきた企業に、2020年はコロナ禍が直撃し、事業継続を断念するケースも発生している。3月には震災発生から丸10年を迎えるが、関連倒産の収束にはまだしばらく時間を要しそうだ。

震災1

1月の倒産事例

 (株)喜楽屋(TSR企業コード:151041849、法人番号:9380001012592、福島県いわき市)は、1883年に創業した白鳥山温泉の老舗旅館「杜のおやど喜楽苑」を運営。浜通り地区唯一の日本秘湯を守る会会員として知名度を得て、東日本大震災前は売上高1億円以上を維持していた。しかし、2011年3月に発生した震災後は、福島第一原発事故による風評被害の影響を受けて業績が低迷、2019年8月期の売上高は5,700万円にまで落ち込んでいた。赤字決算も強いられて厳しい資金状況が続き、2020年2月には事業を停止した。今後の対応を模索していたが2021年1月13日、福島地裁いわき支部より破産手続開始決定を受けた。負債総額は1億8,800万円。

 累計件数1,977件のうち、都道府県別で最も多かったのは東京の576件。次いで、宮城199件、福島88件、岩手86件、北海道85件、神奈川80件、茨城79件、千葉77件、福岡71件、栃木62件、群馬61件、静岡51件、大阪49件、山形48件、埼玉46件と続く。東北6県の倒産件数は478件(構成比24.1%)だった。  産業別では、最も多かったのが宿泊業や飲食業などを含むサービス業他の526件(構成比26.6%)。次いで、製造業460件(同23.2%)、卸売業363件(同18.3%)、建設業225件(同11.3%)、小売業186件(同9.4%)、運輸業82件、情報通信業66件と続く。  被害型で分類すると、「間接型」1,737件(構成比87.8%)に対して、「直接型」が240件(同12.1%)だった。

震災2

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

建材販売業の倒産 コロナ禍の2倍のハイペース コスト増や在庫の高値掴みで小規模企業に集中

木材や鉄鋼製品などの建材販売業の倒産が、ジワリと増えてきた。2025年1-7月の倒産は93件で、前年同期(75件)から2割(24.0%)増加した。2年連続の増加で、コロナ禍の資金繰り支援策で倒産が抑制された2021-2023年同期に比べると約2倍のハイペースをたどっている。

2

  • TSRデータインサイト

「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり

異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職を、直近3年で企業の30.1%が経験していることがわかった。大企業では38.0%と異動範囲が全国に及ぶほど高くなっている。

3

  • TSRデータインサイト

女性初の地銀頭取、高知銀行・河合祐子頭取インタビュー ~「外国人材の活用」、「海外販路開拓支援」でアジア諸国との連携を強化~

ことし6月、高知銀行(本店・高知市)の新しい頭取に河合祐子氏が就任した。全国の地方銀行で女性の頭取就任は初めてで、大きな話題となった。 異色のキャリアを経て、高知銀行頭取に就任した河合頭取にインタビューした。

4

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。

5

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

TOPへ