• TSRデータインサイト

2020年「老人福祉・介護事業」の休廃業・解散調査

 2020年の「老人福祉・介護事業」の休廃業・解散は、455件(前年比15.1%増)だった。2010年に調査を開始以来、2018年の445件を抜き、過去最多を記録した。新型コロナ感染拡大の収束が見えず、経営者の事業継続意欲の低下や高齢化なども影響したとみられる。
 なお、2020年の「老人福祉・介護事業」の倒産(負債1,000万円以上)も過去最多の118件(同6.3%増)発生。2020年は倒産と休廃業・解散で573事業者が市場から消滅した。
 高齢化社会を睨んで、市場拡大が見込まれる介護事業に参入した事業者も多い。だが、大手との競合や人手不足、ノウハウ不足などで事業継続が厳しく、淘汰される事業者が増えている。
 政府は2021年4月、介護報酬を改定する。厚生労働省の方針では、すべての介護保険サービスの基本料金を引き上げ、全体の介護報酬は0.7%の増額が見込まれる。コロナ禍で経営体力が削がれた介護事業所が多く、報酬改定で経営の安定化や介護職員の処遇改善などを進める。
 介護事業者、コロナ感染防止策への資金負担が重くのし掛かっている。さらに、三密回避で介護サービスを控える利用者も増え、経営環境は厳しさを増している。介護事業者は経営強化や人材定着などの課題が山積し、2021年も倒産や休廃業・解散は増勢をたどる可能性が高い。
※ 本調査は、日本産業分類(小分類)の有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業など「老人福祉・介護事業」の休廃業・解散を集計、分析した。調査開始は2010年から。
※「休廃業・解散」は、倒産(法的整理、私的整理)以外で、事業活動を停止した企業と定義した。
2020年の「老人福祉・介護事業」倒産は1月8日、プレスリリース済み。


休廃業・解散は過去最多を記録、倒産と合わせて573事業者が市場から退出

  2020年に全国の「老人福祉・介護事業」で、事業を停止した休廃業・解散は455件(前年比15.1%増)と急増、過去最多を更新した。これまでの最多は、2018年の445件だった。
 2020年は倒産も118件と過去最多で、休廃業・解散と合わせ過去最多の573件となった。
 2020年の休廃業・解散は、人手不足や後継者難、業歴の浅い企業のノウハウ不足など、従来の要因で事業継続を断念した事業者が多かった。だが、新型コロナで利用客の減少や感染防止対策の負担に加え、コロナ禍の収束の見通しが立たず、経営体力のあるうちに事業をたたむなど、コロナ禍が休廃業・解散の決断の背中を押したケースも増えた。
 高齢化社会はこれからが本番で、介護事業者の存在はますます重要になる。新型コロナ支援に重きを置くことも必要だが、効率的な業務への転換など、ビジネスとしての側面を強化する支援も同時に必要になっている。

「老人福祉・介護事業」の休廃業解散推移


 

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ゴールデンウィーク明け、「退職代行サービス」の利用は慎重に

長かったゴールデンウィークが終わる。職場「復帰」を前に例年4月の新年度からGW明けにかけ、退職する人の話題が持ち上がる。この時期の退職代行サービスの利用も増加するという。4月に実施した「退職代行に関する企業向けアンケート調査」から利用するリスクの一端が浮き彫りになった

2

  • TSRデータインサイト

トーシンホールディングスの「信用調査報告書」

5月8日に東京地裁に会社更生法の適用を申請した(株)トーシンホールディングス(TSRコード:400797887、名古屋市、東証スタンダード)を取り上げる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~

生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増している。バブル経済1988年度(4-3月)以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録した。

4

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度の「早期・希望退職」 は2万781人 約7割が「黒字リストラ」、2009年度以降で4番目の高水準

2025年度に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年度51社)で、人数は2万781人と前年度(8,326人)の約2.5倍に急増したことがわかった。社数は前年度から約1割(9.8%減)減少したが、募集人数は2009年度以降で4番目の高水準となった。

TOPへ