• TSRデータインサイト

「飲食業の倒産動向」調査【速報】2020年1-12月22日現在

 年の瀬も押し迫ってきたが、新型コロナウイルス第三波の襲来で、「真剣勝負の3週間」に突入した。
 新型コロナ感染拡大で、稼ぎ時の忘年会も消失した「飲食業」は苦境に追い込まれ、2020年(1-12月22日)の飲食業倒産(負債1,000万円以上)は、累計810件に達する。年間で過去最多の2011年の800件をすでに上回り、過去最多を塗り替えた。
 「食堂,レストラン」と「バー,キャバレー,ナイトクラブ」の2業種を除く8業種で、前年の件数を上回った。特に、感染抑制のために、休業や時短営業を要請された「酒場,ビヤホール(居酒屋)」は168件と、これまで最多だった2012年(141件)を大きく上回った。
 資本金別では、倒産した810件すべてが資本金1億円未満の中小・零細企業が占めている。形態別では、破産が767件(構成比94.6%)と大半を占め、再建が難しいことを示している。

 コロナ禍でインバウンド需要が消失し、在宅勤務の広がりで外食機会も減少した。そこに11月中旬以降の「第三波」で営業時間の短縮に加え、飲み会や会食の需要も減少し、新型コロナ感染拡大が始まった2月以降、飲食業は苦しい状況が続く。また、11月27日以降は10都道府県で「Go To イート」新規発券の一時停止もあって、企業活動と感染防止対策の両立を模索している。
 飲食業は過小資本で起業できるため、小・零細企業・店舗が多く、零細規模の倒産が全体の約9割を占める。新型コロナ第三波で感染者数が日ごとに増加しており、企業や個人の多くが忘年会や新年会を中止する方向に動いている。一年で最大の書き入れ時である年末年始の売上消失が、年明け以降の倒産や休廃業の増加につながることが懸念される。

  • 本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー, キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2020年1-12月の倒産を集計、分析した。
    2020年12月は22日現在の倒産件数。

飲食業倒産810件、通年最多の800件を更新

 2020年1-12月の「飲食業」倒産は810件(前年比1.3%増)に達し、2011年の800件を上回り過去最多となった。新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言で、裁判所業務が一部縮小した5月を除き、倒産は月間60件以上で推移するなど年間を通して高い水準だった。
 12月22日時点で、通年最多を記録した2011年の800件を10件上回る810件となり、コロナ禍での飲食業の苦境が改めて鮮明になった。

飲食業

原因別 「不況型倒産」が724件で、約9割を占める

 原因別は、「販売不振」が688件(前年比3.1%増)で最多。次いで、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」36件(同28.5%増)、「事業上の失敗」30件(同21.0%減)と続く。
 『不況型倒産』(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は724件で、構成比は約9割(89.3%)を占めた。感染状況の悪化による自治体などの時短営業要請に加え、忘年会の自粛などもあり、年末年始にかけて体力のない企業の淘汰がさらに進む可能性もある。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ハンバーガー店の倒産、最多更新 ~ 材料高騰、大手と高級店の狭間で模索 ~

年齢を問わず人気のハンバーガー店が苦境だ。2024年は1件だった倒産が、2025年は8月までに7件に達し、過去最多の2014年の年間6件を上回った。

2

  • TSRデータインサイト

2025年「全国のメインバンク」調査 ~GMOあおぞらネット銀行 メイン社数の増加率2年連続トップ~

「2025年全国企業のメインバンク調査」で、GMOあおぞらネット銀行が取引先のメインバンク社数の増加率(対象:500社以上)が2年連続でトップとなった。

3

  • TSRデータインサイト

タクシー業界 売上増でも3割が赤字 人件費・燃料費の高騰で二極化鮮明

コロナ禍を経て、タクシー業界が活況を取り戻している。全国の主なタクシー会社680社の2024年度業績は、売上高3,589億5,400万円(前期比10.6%増) 、利益83億3,700万円(同11.1%増)で、増収増益をたどっている。

4

  • TSRデータインサイト

「葬儀業」は老舗ブランドと新興勢力で二極化 家族葬など新たな潮流を契機に、群雄割拠

全国の主な葬儀会社505社は、ブランド力の高い老舗企業を中心に、売上高を堅調に伸ばしていることがわかった。 ただ、新たに設立された法人数が、休廃業・解散や倒産を上回り、市場は厳しい競争が繰り広げられている。

5

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

TOPへ