• TSRデータインサイト

「包括的担保法制」で事業性評価・伴走型支援の深化へ=金融庁

 11月4日、金融庁は「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会」の第1回会合をオンラインで開催した。座長は神田秀樹・学習院大学大学院法務研究科教授。

 現在、担保は不動産(有形資産)などの個別資産が中心だが、ノウハウや顧客基盤などの無形資産を含む「事業全体の価値」を包括的に担保とする仕組みの導入を目指す。

 新たな担保法制を巡り、2019年3月に法務省が「動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会」を立ち上げ、検討が進んでいる。ただ、担保法制は金融実務に直結し、借り手の企業への資金供給に影響を及ぼすため、金融庁として融資のあり方を整理する。

 これまで金融庁は、金融機関に企業のキャッシュフローや、将来性などを加味した「事業性評価」に基づく金融仲介機能の発揮を求めてきた。事業価値が包括的に担保となることで、企業と金融機関は「将来生み出すキャッシュフローの増大」が共通の価値となり、事業性評価を含めた伴走型支援が一段と深化する可能性がある。

 例えば、創業間もなく有形資産や財務基盤の薄い企業に新株予約権やコベナンツを組み合わせたデッド性資金の供給を拡大できるほか、経営が悪化した企業への早期の再生支援なども想定される。

 事業全体の価値は、金融機関に理解を求めるだけでなく、企業も自己分析やプレゼン力の向上が必要だ。東京商工リサーチの取材に対し、金融庁の担当者は「今日の会合では、(包括的担保を)活用できるようになるには、事業者側も努力しないといけないとの発言もあった」と明かす。

 担保法制の見直しが進むと、経済産業省が提唱する「ローカルベンチマーク」の活用に加え、これまで以上に企業と金融機関のリレーションの活性化が重要になるだろう。


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

建材販売業の倒産 コロナ禍の2倍のハイペース コスト増や在庫の高値掴みで小規模企業に集中

木材や鉄鋼製品などの建材販売業の倒産が、ジワリと増えてきた。2025年1-7月の倒産は93件で、前年同期(75件)から2割(24.0%)増加した。2年連続の増加で、コロナ禍の資金繰り支援策で倒産が抑制された2021-2023年同期に比べると約2倍のハイペースをたどっている。

2

  • TSRデータインサイト

「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり

異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職を、直近3年で企業の30.1%が経験していることがわかった。大企業では38.0%と異動範囲が全国に及ぶほど高くなっている。

3

  • TSRデータインサイト

女性初の地銀頭取、高知銀行・河合祐子頭取インタビュー ~「外国人材の活用」、「海外販路開拓支援」でアジア諸国との連携を強化~

ことし6月、高知銀行(本店・高知市)の新しい頭取に河合祐子氏が就任した。全国の地方銀行で女性の頭取就任は初めてで、大きな話題となった。 異色のキャリアを経て、高知銀行頭取に就任した河合頭取にインタビューした。

4

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。

5

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

TOPへ