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信用金庫254金庫「総資金利ざや」調査 2020年3月期決算

 全国の254信用金庫の2020年3月期決算の「総資金利ざや(中央値)」は0.12%で、前年同期の0.09%から0.03ポイント上昇した。
 運用収益力を示す「資金運用利回り(中央値)」は前年同期と同水準の1.10%だったが、「資金調達原価率(中央値)」が0.97%(前年同期1.00%)で、前年同期より0.03ポイント低下。
 なお、銀行109行の2020年3月期の「総資金利ざや(中央値)」は0.13%(同0.14%)で、信用金庫より0.01ポイント高かったが、2年連続で低下している。
 「資金調達」が「資金運用」を上回る、いわゆる「逆ざや」は19金庫(前年同期25金庫)で、6金庫減少した。このうち、2年連続の「逆ざや」は12金庫(構成比63.1%)だった。
 2020年3月期に「逆ざや」に転落は6金庫、一方で、2020年3月期に「逆ざや」を脱却したのは13金庫だった。
 「総資金利ざや」は、資金の運用利回りと調達利回りとの差を示す。日本銀行が2016年2月にマイナス金利を導入し、金融機関の低金利競争は厳しさを増し、貸出利回りは落ち込んでいる。 
 このため、他の金融機関との金利競争に一線を画し、独自に貸出先のリスクに応じた金利設定に動く信用金庫も出ている。ただ、貸出金利の大幅アップは見込めず、M&Aや事業承継のためのコンサルティングなど、従来の本業から新たな収益源を見出す動きが急務になっている。

  • 本調査は信用金庫259金庫のうち、非公開の1金庫を除く254金庫の2020年3月期決算の「総資金利ざや」を調査。
    「総資金利ざや」とは、「資金運用利回り」-「資金調達原価率」で算出した。
    2017年3月期以前は主要152金庫の数値を参考までに記載。

「総資金利ざや」の中央値は0.12%に上昇

 254金庫の2020年3月期の「総資金利ざや(中央値)」は0.12%で、前年同期の0.09%より0.03ポイント上昇した。254金庫のうち、合併等を除き前年同期との比較可能な250金庫をみると、「総資金利ざや」が前年同期を上回ったのは160金庫(構成比64.0%)、低下は71金庫(同28.4%)、同水準は19金庫だった。
 「総資金利ざや」が上昇した信用金庫が6割を超え、適正金利に向けた動きもうかがわれる。ただ、上昇した160金庫のうち、3割以上の57金庫(同35.6%)では貸出金などの運用収益を表す「資金運用利回り」が前年同期を下回り、まだ資金運用の厳しさは続いている。

りざや1

「総資金利ざや」トップは大阪厚生信用金庫の0.96%

 254金庫の2020年3月期の「総資金利ざや」の分布状況は、「0.0%以上0.1%未満」が85金庫(構成比33.4%)で最も多かった。以下、「0.1%以上0.2%未満」が78金庫(同30.7%)、「0.2%以上0.3%未満」が44金庫(同17.3%)、「0.0%未満(逆ざや)」が19金庫、「0.3%以上0.4%未満」が11金庫の順。
 「0.0%以上0.1%未満」が24金庫減(109→85金庫)、「0.0%未満(逆ざや)」が6金庫減(25→19金庫)と減少。一方、「0.1%以上0.2%未満」が12金庫増(66→78金庫)、「0.2%以上0.3%未満」が11金庫増(33→44金庫)と、総資金利ざやの改善が進んでいる。

 「総資金利ざや」の最高は、大阪厚生信用金庫(大阪)の0.96%。前年同期(0.90%)より0.06ポイント上昇した。次いで、阿南信用金庫(徳島)の0.60%(前年同期0.25%)、天草信用金庫(熊本)の0.56%(同0.47%)、西武信用金庫(東京)の0.55%(同0.61%)、長浜信用金庫(滋賀)の0.55%(同0.48%)の順。
 上位30位(33金庫)のうち、「総資金利ざや」が前年同期を上回ったのは22金庫(構成比66.6%)、低下は7金庫、同水準は4金庫だった。
 上昇率の最高は、阿南信用金庫(徳島)で前年同期比0.35ポイント上昇(0.25→0.60%)した。以下、唐津信用金庫(佐賀)の同0.30ポイント上昇(0.21→0.51%)、福岡ひびき信用金庫(福岡)の同0.19ポイント上昇(0.14→0.33%)など。

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10地区のうち、7地区で「総資金利ざや」が上昇

 10地区のうち、東京、中国、九州を除く7地区で、「総資金利ざや(中央値)」が上昇した。
 「総資金利ざや」の最高は、四国0.28%(前年同期0.26%)。次いで、九州の0.16%(同0.16%)、近畿0.15%(同0.10%)、北海道0.13%(同0.12%)、東京0.13%(同0.14%)。
 最低は、北陸0.07%(同0.05%)だった。
 都道府県別では、「総資金利ざや」が前年同期を上回ったのは、32道府県(構成比68.0%)で、約7割を占めた。一方、低下は12都府県、同水準は3県だった。最高は徳島県の0.47%。次いで、沖縄県0.43%、高知県0.41%の順で、この3県が0.4%台だった。一方、最低は山口県の▲0.01%で、唯一、「逆ざや」となった。

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