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今年の上場企業「早期・希望退職」、8月ですでに50社超に

 2020年に早期・希望退職者募集を開示した上場企業は、8月13日までに52社に達した。8月半ばで50社を超えたのは2012年以来、8年ぶり。すでに6月までに2019年通年の35社を超えており、ハイペースで推移している。
 52社のうち、新型コロナウイルスの影響を要因に挙げたのは15社で、7月からの1カ月半で7社増加した。また、半数の27社(同51.9%)が赤字で、直近四半期を含む赤字企業は36社(構成比69.2%)と約7割に達する。

  • 本調査は、希望・早期退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた上場企業を対象に抽出した。実施が翌年以降の企業は除く。原則、『会社情報に関する適時開示資料』(2020年8月13日公表分まで)に基づく。募集形態は「早期・希望退職」に加え、退職時に加算金を盛り込む退職勧奨も含める。

新型コロナの影響が顕在化 外食が6月以降に急増

 早期・希望退職者募集を開示した52社の業種別は、アパレル・繊維製品が8社で最多。次いで、新型コロナや米中貿易摩擦が響いた電機機器が7社、自動車などの輸送用機器が5社、消費増税と暖冬に加え、新型コロナの三重苦に見舞われた小売、外出自粛や営業時短が直撃した外食が各4社だった。外食は、6月中旬から約2カ月で4社が開示している。
 繊維・アパレルは直近決算で5社が最終赤字、2社で減収減益だった。外食は4社すべてが赤字を計上した。新型コロナ感染拡大で業績悪化の企業が増え、雇用に影響が及び始めている。

募集人数、最多はレオパレス21の1000人 業績不振の中堅企業の募集が目立つ

 募集人数は、最多がレオパレス21の1000人。次いで、ファミリーマート800人(応募1025人)、複数の子会社で募集を実施するシチズン時計が750人、ノーリツ600人(同789人)が続く。募集人数が判明した43社の対象人数は、合計9323人にのぼる。
 2019年通年で1000人以上の大型募集は4社あったが、2020年は8月13日までで1社にとどまる。一方で、募集人数は300人以下が38社で、部門を限った募集や中堅企業の実施が目立つ。

実施企業、半数以上が直近通期で赤字

 2019年は黒字企業の募集が目立ったが、一転して2020年は従来の赤字企業の募集が急増している。2019年に募集した35社のうち、直近決算の赤字は15社(構成比42.8%)だった。だが、2020年は募集を開示した52社のうち、半数の27社(同51.9%)が赤字だった。これに直近四半期を含めると、赤字企業は36社(構成比69.2%)と約7割に達する。
 赤字企業の早期・希望退職者の募集は、本決算の発表後に集中する傾向があり、下期以降に募集が加速する可能性が高い。新型コロナで先行きに不透明さが増しており、希望退職の募集が正社員から、次第に契約社員や他の雇用形態にまで広がることも懸念される。

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