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国内銀行109行「2020年3月期単独決算 預貸率」調査

 2020年3月期の国内銀行109行の預貸率は66.2%(前年同期65.7%)で、前年同期を0.5ポイント上回った。3月期では、2年連続で上昇した。預貸率100%超は、熊本銀行(112.3%)と長崎銀行(同110.5%)の九州の第二地銀2行で、前年同期の3行から1行減少した。
業態別では、大手行が58.5%(前年同期58.4%)、地方銀行が76.9%(同75.7%)、第二地銀が77.1%(同76.1%)で、全業態で前年同期を上回った。ただ、大手行との差は、地方銀行が前年同期比1.1ポイント(17.3→18.4ポイント)、第二地銀が同0.9ポイント(17.7→18.6ポイント)、それぞれ拡大した。大手行は貸出金と預金がそろって大幅に増加したため、預貸率は0.1ポイント上昇にとどまった。
預金と貸出金の差を示す預貸ギャップは282兆6,391億円で、前年同期279兆3,914億円から3兆2,477億円(1.1%増)拡大し、過去最大を更新した。地元企業と密接な関係を築いている地方銀行や第二地銀は、貸出金の伸びに対して預金は低く、5年連続で預貸ギャップが縮小した。

  • 預貸率は、銀行預金の運用状況を示す経営指標の一つで、預金残高に対する貸出残高の比率。
  • 本調査は、国内銀行109行を対象に2020年3月期の単独決算ベースの預貸率を調査した。預貸率(%)は、「貸出金÷預金×100」で算出。
  • 「貸出金」は貸借対照表の資産の部から、「預金」と「譲渡性預金」は貸借対照表の負債の部から抽出した。
  • 銀行業態は、1.埼玉りそなを含む大手行7行、2.地方銀行は全国地銀協加盟行、3.第二地銀は第二地銀協加盟行。

預貸率は66.2%、前年同期より0.8ポイント上昇

 2020年3月期の国内銀行109行の預貸率は、66.2%(前年同期65.7%)だった。預貸率は2010年3月期から9年連続で低下していたが、2018年3月期を底に2年連続で前年同期を上回った。
2009年12月、中小企業等金融円滑化法の施行で貸出が伸び悩み、伸び率は預金が貸出金を上回る状態が続いた。2019年3月期は不動産融資などで、伸び率は貸出金が預金を上回った。
2020年3月期は不動産融資が低迷し、貸出金・預金ともに伸び率は前年同期を下回った。ただ、金額では貸出金が前年同期比3.3%増と、預金の同2.5%増を0.8ポイント上回った。

6割の銀行で預貸率が上昇

 預貸率が前年同期を上回ったのは109行のうち、68行(構成比62.3%)で、前年同期(82行)から14行減少した。預貸率の伸び率の最高は、愛知銀行の8.7ポイント上昇(64.8→73.5%)。
同行は貸出金(前年同期比14.3%増)に対し、預金(同0.8%増)の伸び率が低く、預貸率が大幅に上昇した。次いで、みちのく銀行6.5ポイント上昇(76.6→83.1%)、清水銀行5.9ポイント上昇(77.5%→83.4%)の順。

預貸上半期

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