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「人手不足」関連倒産(4月)

 2020年4月の「人手不足」関連倒産は45件(前年同月比73.0%増)で、8カ月連続で前年同月を上回った。2020年1-4月累計は190件に達し、前年同期比1.6倍増で推移している。
 2019年に過去最多の426件を記録した「人手不足」関連倒産は、2020年に入っても増勢が衰えず、前年よりハイペースで推移している。しかし、今年に入って新型コロナウイルスの感染拡大が企業の採用意欲を低下させ、2月の有効求人倍率は1.45倍と2年11カ月ぶりの低水準となった。
 また、人員削減に取り組む大手企業が増加しており、今後の人手不足を要因とする倒産の推移が注目される。


人手不足関連倒産 月次推移

4月の「人手不足」関連倒産は45件

 2020年4月の「人手不足」関連倒産は45件(前年同月比73.0%増)で、2019年9月以降、8カ月連続で前年を上回った。
 内訳は、代表者や幹部役員の死亡、入院などの「後継者難」が37件(前年同月15件)で最多。次いで、人員確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」が5件(同4件)、幹部や中核社員の独立、転職などの退職から事業継続に支障が生じた「従業員退職」が2件(同5件)、賃金上昇が収益を圧迫した「人件費高騰」が1件(同2件)だった。

産業別 建設業が最多

 産業別では、最多が建設業13件(前年同月4件)。次いで、卸売業(同3件)とサービス業他(同11件)が各7件、小売業6件(同1件)、製造業4件(同2件)、不動産業(同1件)と運輸業(同1件)が各3件、情報通信業が2件(前年同月ゼロ)。農・林・漁・鉱業(前年同月1件)と金融・保険業(前年同月ゼロ)は発生がなかった。

地区別 9地区すべてで発生

 地区別では、全国9地区で発生した。関東15件(前年同月9件)を筆頭に、中国8件(同2件)、北海道(同0件)と中部(同5件)、近畿(同5件)が各5件、九州3件(同5件)、四国2件(同0件)、東北(同0件)と北陸(同0件)が各1件。都道府県別では、最多が広島7件(前年同月2件)で、北海道5件(同0件)、兵庫4件(同4件)と続く。

2020年1-4月の要因別、「後継者難」型が2倍増

 2020年1-4月の「人手不足」関連倒産は190件(前年同期比61.0%増、前年同期118件)で、過去最多の推移をたどっている。
 内訳は、「後継者難」が142件(前年同期比100.0%増、前年同期71件)、「求人難」が22件(同15.3%減、同26件)、「従業員退職」が15件(同36.3%増、同11件)、「人件費高騰」が11件(同10.0%増、同10件)だった。「後継者難」が前年同期の2倍増となり、全体の7割(構成比74.7%)を占め、「求人難」は唯一減少した。

2020年1-4月、建設業が最多46件

 2020年1-4月の産業別では、建設業46件(前年同期比109.0%増、前年同期22件)が最多。次いで、サービス業他が39件(同21.8%増、同32件)、卸売業31件(同121.4%増、同14件)、製造業26件(同100.0%増、同13件)、小売業19件(同58.3%増、同12件)、運輸業14件(同16.6%増、同12件)が続く。
 2020年1-4月の地区別では、9地区のうち中国(5→17件)、東北(6→16件)、北陸(1→5件)、北海道(4→10件)、四国(3→6件)、関東(44→73件)、近畿(18→26件)、中部(13→15件)の8地区で前年同期を上回った。減少は九州(24→22件)のみ。

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