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2020年1-2月 上場企業「早期・希望退職」実施状況

 2020年1-2月に早期・希望退職者を募集した上場企業は19社(前年同期9社)に達した。前年同期を10社上回り、わずか2カ月で2019年1年間(36件)の半分と急増している。
 最近は、各業界で大手中心に、事業の新規展開に伴う既存事業や人員の見直しに着手する企業の増加が特徴になっている。一方、昨秋の消費増税や暖冬がアパレルや消費財などを直撃し、上場企業も影響を受けている。さらに、1月下旬から新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、業績の下方修正を開示した上場企業は87社、また何らかの影響を開示した上場企業は461社に達している。
 3月に入り、株価乱高下、円高進行など景気後退局面の兆しもみえ、“黒字リストラ”といわれる業績堅調な企業の人員削減だけでなく、業績の不振企業の退職者募集も増勢に転じそうだ。  このため、早期・希望退職の募集は業績の好不調の企業に二分化し、増える可能性が出てきた。

  • 本調査は、希望・早期退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた上場企業を対象に抽出した。
    実施が翌年以降の企業は除く。原則、『会社情報に関する適時開示資料』(2020年2月28日公表分まで)に基づく。

業種別 小売と食料品が各3社でトップ

 19社の業種別では、少子高齢化で国内の消費人口の頭打ちとなるなど、今後の消費動向を見据えた小売と食料品が各3社でトップ。店舗の抜本的見直しを図る百貨店(三越伊勢丹ホールディングス、以下HD)とコンビニ(ファミリーマート)、2月はインバウンド激減で大打撃を受けるラオックスが子会社の構造改革と併せて募集を発表した。
 食料品は、味の素に加え、19年に実施したキリンHDに続き、サッポロHDが20年内に2回の募集を行う予定。同じく、飲料が主力のダイドーHDも「ライフシフト支援施策」の名称で50代以上の社員を募集する一方、20代~40代の社員約100人の新規採用も予定し、社内の若返りを図る。

業績別 黒字企業は約7割、業績の“二極化”が鮮明に

 2月末までに希望・早期退職者を募集した19社の業績は、直近の本決算で最終赤字が6社、残る13社が黒字(構成比68.4%)だった。2019年同期の黒字は7社(構成比77.7%)で、黒字企業の比率は前年同期を下回っている。2020年は黒字の業界大手が実施する一方で、インバウンド減少やグローバル市況の悪化で、業績不振の赤字企業の募集も目立つ。さらに、「新型コロナウイルス」感染拡大による業績の下方修正が相次ぎ、今後は“黒字リストラ”が一服する可能性も出てきた。

業績別推移

募集人数別 1,000人超の募集は“ゼロ”

 2019年1-2月の募集人数は9社合計で、4,374人だった。富士通の2,850人が一気に押し上げる形となった。一方、2020年の募集人数は、ファミリーマートの募集時800人(応募1,025人)が最多で、比較的小規模な募集人数にとどまっている。19年11月に開示していたLIXILグループは3月9日、応募人数が497人であったと開示した。また、一部企業で募集人数が非開示のため、これらの企業の募集人数が判明すると全体人数を押し上げる可能性もある。

業績別推移

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