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深刻!運送業の「人手不足」倒産率は他業種の3倍

  2019年(1-12月)の道路貨物運送業の倒産は、件数が196件(前年比7.6%増)、負債総額187億1,700万円(同9.8%増)で、ともに2年連続で前年を上回った。ただ、平均負債額は9,500万円(同2.1%増)と3年連続で1億円を下回り、小・零細企業を中心にしている。
 四半期別では、2019年1-3月が前年同期比25.0%増(44→55件)、4-6月が同44.7%増(38→55件)、7-9月が同8.8%増(45→49件)と3四半期連続で増加したが、10-12月は一転して同32.7%減(55→37件)と減少し、年前半が増加、後半が減少と明暗を分けた。 

  「人手不足」関連倒産は31件(前年比47.6%増)で、2013年に調査を開始以来、最多を記録した。全業種の2019年「人手不足」関連倒産比率は約5%に対し、道路貨物運送業は15.8%と約3倍も高く、ドライバー不足が倒産に直結しやすい環境が透けて見える。内訳は、「求人難」が16件(前年8件)と前年から倍増し、「後継者難」(同9件)と「人件費高騰」(同3件)が各6件、「従業員退職」が3件(同1件)だった。採用コスト増、賃上げなど、人手不足が収益悪化を招く悪循環が深刻さを増している。

  運送業界は、M&Aが活発に動いている。営業基盤を築きながらもドライバー不足や後継者難にあえぐ中小企業は多い。こうした企業の経営資源(受注先、ドライバー等)をまるごと引き受けるメリットは相互に大きく、今後も中小企業同士のM&Aが注目される。
 運送業界は、「人手不足」への対応力が問われている。また、中東問題の展開次第では原油価格の上昇も懸念される。首都圏では東京五輪・パラリンピック開催に伴う混雑対策も必要だろう。当面、運輸業界の倒産は人手不足への対応が遅れた小・零細企業を中心に、緩やかに増勢をたどる可能性が高い。


 

道路貨物運送業の「人手不足」関連倒産年次推移

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