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2019年(1-11月) 上場企業「早期・希望退職」実施状況

 2019年1-11月に早期・希望退職者を募集した上場企業は延べ36社、対象人数は1万1,351人に達した。社数、人数ともに11月までで2014年以降の年間実績を上回り、最多を更新した。
 過去20年間で社数、人数ともに最少を記録した2018年(1-12月)と比較すると、社数が12社から3倍増、人数も4,126人から約3倍増と大幅に増えた。
 業種別では、業績不振が目立つ電気機器が12社(延べ)でトップだった。子会社で年に2回募集を実施した東芝をはじめ、市況低迷など業況の変化を反映している。次いで、薬価改定や国外メーカーのライセンス販売終了などを控えた製薬が4社で続く。卸売、機械、食料品、繊維製品は各3社だった。

  • 本調査は、2019年1月以降に希望・早期退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた上場企業(とその子会社)を対象に抽出した。希望・早期退職者の募集予定を発表したが、実施に至っていない企業は除外した。資料は原則、『会社情報に関する適時開示資料』(2019年11月29日公表分まで)に基づく。

11月末までに36社が募集を実施、前年の3倍増

 2019年1-11月に年内の希望・早期退職者の募集実施を公表したのは延べ36社だった。募集人数は合計1万1,351人(判明分)に達し、人数では2013年(1-12月、1万782人)を上回った。早期希望退職者の募集人数は、最多は、富士通の2,850人。次いで、非開示だが取材で判明したルネサスエレクトロニクスの約1,500人、子会社の売却、事業など選択・集中を進める東芝が1,410人、経営再建中のジャパンディスプレイの1,200人と続く。
 2019年に実施された1,000人以上の募集・応募は4社で、2018年(1-12月、1社)より3社多い。

大手企業で「先行型」の実施も 一方で約7割は業績不振

 アステラス製薬や中外製薬、カシオ計算機、キリンHD (キリンビール含)など、業績が堅調な業界大手でも将来の市場環境を見据えた「先行型」の実施がみられた。その一方、36社のうち、16社が募集発表時の直近決算(通期)で最終赤字を計上。減収減益となった企業8社も含めると、合計24社(構成比66.6%)が業績不振だった。 製造業では市況悪化、海外を含む同業との競合などによる業績不振で、国内製造拠点の撤退・縮小が相次いだ。
 また、婦人靴販売や繊維小売など、既存の主力商品の不振などで赤字を計上した企業を中心に、事業や人員の見直しに着手するケースもみられた。

主な上場企業 希望・早期退職者募集状況

2020年、目立つ業界大手 雇用の流動性を背景に

 2020年以降の実施では、すでに7社が判明しており、計1,500人の早期・希望退職の募集を予定している。実施を発表した7社は、直近決算で最終赤字を計上した1社を除き、足元の業績が堅調な業界大手が占めている。
 食料品や消費材、小売業など業績が堅調な企業でも、国内市場の成熟化に伴う先行きを懸念している。各社は、経営体力のあるうちに既存の事業の見直しに加え、データ解析やマーケティングなど不足する人材の確保を急いでいる。「マーケティングやR&D(研究開発)に携わる人材は不足している。今後も強化の方針」(キリンHD)など、外部からの即戦力を積極的に狙う意向を示している。
 また、足もとでは「セカンドキャリアの形成」、「社外組織での活躍」をテーマに掲げた募集も多くみられる。みずほ証券では、福利厚生の一環として、希望退職者を2020年1月から3月にかけて募る。希望した人のみが対象で「対象年齢を設けてはいるが、応募者がゼロでも構わない」という姿勢。応募後、半年以内に次のキャリアが決まらなかった場合、応募の撤回も可能という希望者の意向を尊重した取り組みを実施する。
 大手企業を中心に定年制度の見直しが動き出している。また、働き方改革の実施等に伴い雇用の流動化も進んでいる。こうした動きを背景に、多様なテーマを用いた募集は今後、ますます増えていくとみられる。

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