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国内銀行111行「2019年3月期単独決算 預貸率」調査、預貸ギャップ279兆円、10年連続で拡大

 2019年3月期の国内銀行111行の預貸率は65.7%(前年同期65.2%)で、前年同期より0.5ポイントアップし、3月期としては2009年以来、10年ぶりに上昇した。熊本銀行(預貸率108.0%)、長崎銀行(同104.8%)、北九州銀行(同101.9%)と、九州の3行で預貸率が100%を超えた。
 業態別では、大手行58.4%(前年同期58.1%)、地方銀行75.4%(同73.9%)、第二地銀77.2%(同76.2%)と全業態で預貸率が上昇。ただ、大手行との差は、地方銀行が前年同期比1.2ポイント(15.8→17.0ポイント)、第二地銀が同0.7ポイント(18.1→18.8ポイント)、それぞれ拡大した。大手行は貸出金と預金がそろって大幅に増加し、預貸率の上昇は僅かにとどまった。
 預貸ギャップは279兆3,914億円で、前年同期の272兆8,441億円より6兆5,473億円(2.3%増)拡大し、過去最大を更新した。地域経済により密接な地方銀行や第二地銀は、4年連続で預貸ギャップが縮小した。


  • 預貸率は、銀行預金の運用状況を示す経営指標の一つで、預金残高に対する貸出残高の比率。
  • 本調査は、国内銀行111行を対象に2019年3月期の単独決算ベースの預貸率を調査した。預貸率(%)は、「貸出金÷預金×100」で算出。「貸出金」は貸借対照表の資産の部から、「預金」と「譲渡性預金」は貸借対照表の負債の部から抽出した。
  • 預金は、「預金」(普通預金、当座預金など)と「譲渡性預金」の合算。
  • 銀行業態は、1.埼玉りそなを含む大手行7行、2.地方銀行は全国地銀協加盟行、3.第二地銀は第二地銀協加盟行。

預貸率は65.7%、前年同期より0.5ポイント上昇

 国内銀行111行の2019年3月期の預貸率は65.7%(前年同期65.2%)だった。預貸率は、2010年3月期以降、9年連続で低下していたが、2019年3月期は10年ぶりに前年同期を上回った。
 2009年3月期は貸出金が前年同期比4.3%増、預金が同2.1%増と、伸び率は貸出金が預金を上回った。しかし、リーマン・ショック後は中小企業の資金繰りが悪化し、2009年12月に中小企業等金融円滑化法が施行された。これに伴い、金融機関の貸出は伸び悩み、伸び率は預金が貸出金を上回る状態が続いていた。2019年3月期は貸出金の伸び率が前年同期比5.0%増に対し、預金は同4.1%増で、貸出金が0.9ポイント上回った。

7割の銀行で預貸率が上昇

 111行のうち、預貸率が前年同期を上回ったのは82行(構成比73.8%)で、前年同期(45行)から37行増えた。預貸率の伸び率の最高は、熊本銀行の17.1ポイント上昇(90.9→108.0%)。同行は貸出金(前年同期比16.7%増)を伸ばす一方、預金(同1.8%減)が減少し預貸率が大幅に上昇した。次いで、スルガ銀行12.2ポイント上昇(79.3→91.5%)、十八銀行8.2ポイント上昇(63.4%→71.6%)の順。

預貸ギャップと預貸率の推移

業態別 全業態で前年同期を上回る

 業態別の預貸率は、大手銀行が58.4%(前年同期58.1%、前年同期比0.3ポイント上昇)、地方銀行が75.4%(同73.9%、同1.5ポイント上昇)、第二地銀が77.2%(同76.2%、同1.0ポイント上昇)と、全業態で前年同期を上回った。
 預貸率が前年同期を上回ったのは、大手行で7行のうち3行(構成比42.8%、前年同期ゼロ)、地方銀行で64行のうち50行(同78.1%、同27行)、第二地銀で40行のうち29行(同72.5%、同18行)、計82行(前年同期45行)。全体の約7割(構成比73.8%)を占めた。
 大手行との預貸率の差は、地方銀行が前年同期より1.2ポイント、第二地銀が同0.7ポイント拡大した。大手行は貸出金(前年同期比6.6%増)と預金(同6.2%)がともに大幅に増加し、預貸率の上昇は僅かにとどまり、地方銀行と第二地銀の差が拡がった。

業態別 預貸率推移

地区別 最高は九州の82.6%

 銀行の本店所在地別にみた預貸率は、全国10地区で前年同期を上回った。最高は九州の82.6%(前年同期79.3%)。次いで、中部77.2%(同75.5%)、中国76.9%(同75.1%)、北海道75.5%(同74.9%)、近畿73.8%(同73.2%)の順。最低は東京の58.2%(同57.9%)。
 伸び率は、九州の前年同期比3.3ポイント増が最高。次いで、中国の同1.8ポイント増、東北の同1.7ポイント増と続く。

 国内銀行111行の2019年3月期の預貸率は、10年ぶりに前年同期を上回った。預貸率の中央値は75.3%(前年同期比1.4ポイント上昇)で、2014年3月期から6年連続で上昇した。
 積極的な貸出を背景に、規模の大きい銀行を擁するグループ(持ち株会社)は、グループからの資金調達も加わり、預貸率が100%を超えた銀行も3行あった。
 業態別の預貸率の中央値では、地方銀行は2年連続、第二地銀は3年連続で上昇、貸出を伸ばすことで預貸率が底上げされた。ただ、大手行は預金量の伸びも大きく、貸出増加が預貸率の上昇に繋がらず、中央値は2年連続で低下した。
 全体的に貸出を伸ばすとともに、預金も増加しており、企業の資金需要に活発さがみられない現状では、しばらく預貸率は緩やかな上昇にとどまるとみられる。

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