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2018年度「人手不足」関連倒産

年度ベース過去最多の400件、前年度より28.6%増

 2018年度(2018年4月-2019年3月)の「人手不足」関連倒産は400件(前年度比28.6%増、前年度311件)に達した。年度ベースでは、2013年度に調査を開始以来、これまで最多だった2015年度(345件)を上回り、最多件数を塗り替えた。

「求人難」型が2.6倍増

 2018年度の「人手不足」関連倒産400件の内訳は、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」型が269件(前年度比7.6%増、前年度250件)が最多。
 次いで、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が76件(同162.0%増、同29件)、賃金等の人件費のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型が30件(同114.2%増、同14件)、中核社員の独立、転職などで事業継続に支障が生じた「従業員退職」型が25件(同38.8%増、同18件)だった。事業承継が重要課題になるなか、「後継者難」型が全体の6割(構成比67.2%)を超え、さらに「求人難」型や「人件費高騰」型が押し上げた。

人手不足関連倒産件数年度推移

産業別、サービス業他が最多105件

 2018年度の産業別では、最多がサービス業他の105件(前年度比34.6%増、前年度78件)だった。内訳は、飲食業23件、老人福祉・介護事業12件、医療関係10件、人材派遣業9件、建築設計業などを含む土木建築サービス業7件など。
 このほか、建設業75件(同4.1%増、同72件)、製造業62件(同58.9%増、同39件)、卸売業59件(同43.9%増、同41件)、貨物自動車運送などの運輸業34件(同61.9%増、同21件)と続く。

 2018年度の地区別では、全国9地区のすべてで倒産が発生した。このうち、関東(125→173件)、九州(39→62件)、中部(34→43件)、近畿(33→39件)、東北(24→28件)、中国(18→19件)、北陸(3→5件)の7地区で前年度を上回った。一方、減少は北海道(21→18件)と四国(14→13件)の2地区だった。


 企業倒産が低水準をたどるなか、「人手不足」関連倒産の増勢ぶりが目を引く。特に、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型と人件費のコストアップから収益悪化を招いた「人件費高騰」型の増加が際立つ。人手不足の早急な解消が難しい現状では、今後の企業倒産を押し上げる複合的な要因にもなっており、景気動向と併せてその推移が注目される。

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