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「東日本大震災」関連倒産(10月度速報値)

 2018年10月の「東日本大震災」関連倒産は前年同月同数の4件(速報値:10月31日現在)だったが、震災から92カ月連続で関連倒産が発生した。累計件数は震災から7年半を経過して1,888件(10月31日現在)に達した。

2018年10月の倒産事例

 水産物加工の(有)マリンプロセス(TSR企業コード:142117927、宮城県)は、主に切身の漬魚、数の子などの加工を手がけていたが、東日本大震災による津波で本社が全壊し、事業停止に追い込まれた。平成26年7月に本社移転して事業を再開したが、従来の販路を失い業績が伸び悩んだ。このため従業員数も半減以下になるなど厳しい経営が続き、業績好転の見通しが立たないことから、平成29年2月に株主総会で解散を決議し、このたび破産を申請した。
豆腐製造販売の(有)たつみ菅野食品(TSR企業コード:032997043、福島県)は、地元の小売店などを販路とし、ピーク時には約3,000万円の年商をあげていた。しかし、福島第一原発事故による風評被害等から業績が伸び悩み、営業損失が続いた。東京電力からの賠償金の打ち切りに加え、売上回復の見通しも立たないことから今年7月以降は事業を停止し、破産手続きに踏み切った。

東日本大震災関連倒産 震災後月次推移

 2018年10月の地区別は、東北4件(福島3、宮城1)だった。
累計件数1,888件の都道府県別で、最も多かったのは東京の564件。次いで、宮城165件、北海道85件、岩手79件、神奈川78件、千葉と茨城が各75件、福島71件、福岡70件、群馬と栃木が各61件、静岡50件、山形48件、埼玉46件、大阪45件と続く。直接被災地の東北6県の倒産件数は418件(構成比22.1%)だった。
産業別では、最多が宿泊業や飲食業などを含むサービス業他の501件(構成比26.5%)。次いで、製造業433件(同22.9%)、卸売業348件(同18.4%)、建設業223件(同11.8%)、小売業176件(同9.3%)、運輸業78件、情報通信業64件と続く。
被害型で分類すると、「間接型」1,694件(構成比89.7%)に対して、「直接型」が194件(同10.2%)だった。

東日本大震災関連倒産

震災関連の集計基準

「震災関連」の経営破綻は、原則として次の3つのどれかに該当するものを集計している。

  1. 震災により施設・設備・機械等に被害を受けて経営破綻した(直接型)
  2. 以前から経営不振だったが、震災による間接影響を契機に経営破綻した(間接型)
  3. 震災の影響による経営破綻が、取引先や弁護士等への取材で確認できた(直接・間接型)
  • 集計では、すでに震災前に再建型の法的手続を申請しながら、震災による影響で再建を断念し破産手続に移行したケースなどは、倒産件数のダブルカウントになるため集計から除外している。
  • 「震災関連」の経営破綻は下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」として集計。「事業停止」や「弁護士一任」、「破産手続き中」などの企業は、今後の展開次第で事業再開の可能性もあるため、「実質破綻」として区別した。

倒産の定義(対象:負債額1,000万円以上の法人および個人企業)

  • 会社更生法、民事再生法、破産、特別清算を裁判所に申請した企業(法的倒産)
  • 手形決済などで6カ月間に2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けた企業(私的倒産)
  • 企業が経営破綻により事業継続を断念したが、法的手続きを採らず弁護士などに事後を一任して私的整理(内整理)を明らかにした企業(私的倒産)

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