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「東日本大震災」関連倒産(7月)

 2018年7月の「東日本大震災」関連倒産は、施設などが被害を受けた直接型が2件だった。2カ月連続で前年同月を下回ったが、震災から89カ月連続で関連倒産が発生している。累計件数は東日本大震災から7年を経過して1,880件(7月31日現在)に達した。

東日本大震災関連倒産 震災後月次推移

2018年7月の倒産事例

 水産物加工販売の太洋産業(株)(TSR企業コード:291081398、東京都)は、北海道や岩手県に加工工場を持ち、ピーク時の売上高は330億円を計上した。「タイサン」ブランドとして知られていたが、東日本大震災の津波で主力の大船渡工場(岩手県)が全壊したことで業績が落ち込んだ。経常利益ベースでは連続赤字に歯止めがかからず、ここにきて自力再建を断念して民事再生法の適用を申請した。
清酒製造の醉富銘醸(株)(TSR企業コード:280059558、茨城県)は、大正6年(1917年)創業の老舗企業で、清酒「醉富」は地元で知名度が高かった。しかし、東日本大震災で醸造設備が被災してからは売上低迷が続き、2016年8月には工場閉鎖に追い込まれた。最近は不動産賃貸を営んでいたが、破産手続きに踏み切った。

 2018年7月の地区別は、関東2件(東京と茨城)だった。
累計件数1,880件の都道府県別で、最も多かったのは東京の563件。次いで、宮城164件、北海道85件、神奈川78件、岩手77件、千葉と茨城が各75件、福岡70件、福島68件、群馬61件、栃木60件、静岡50件、山形48件、埼玉46件、大阪45件と続く。直接被災地の東北6県の倒産件数は411件(構成比21.8%)だった。
産業別では、最多が宿泊業や飲食業などを含むサービス業他の500件(構成比26.5%)。次に、製造業430件(同22.8%)、卸売業347件(同18.4%)、建設業222件(同11.8%)、小売業175件(同9.3%)、運輸業78件、情報通信業63件と続く。
被害型で分類すると、「間接型」1,689件(構成比89.8%)に対して、「直接型」が191件(同10.1%)だった。

東日本大震災関連倒産

震災関連の集計基準

「震災関連」の経営破綻は、原則として次の3つのどれかに該当するものを集計している。

  1. 震災により施設・設備・機械等に被害を受けて経営破綻した(直接型)
  2. 以前から経営不振だったが、震災による間接影響を契機に経営破綻した(間接型)
  3. 震災の影響による経営破綻が、取引先や弁護士等への取材で確認できた(直接・間接型)
  • 集計では、すでに震災前に再建型の法的手続を申請しながら、震災による影響で再建を断念し破産手続に移行したケースなどは、倒産件数のダブルカウントになるため集計から除外している。
  • 「震災関連」の経営破綻は下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」として集計。「事業停止」や「弁護士一任」、「破産手続き中」などの企業は、今後の展開次第で事業再開の可能性もあるため、「実質破綻」として区別した。

倒産の定義(対象:負債額1,000万円以上の法人および個人企業)

  • 会社更生法、民事再生法、破産、特別清算を裁判所に申請した企業(法的倒産)
  • 手形決済などで6カ月間に2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けた企業(私的倒産)
  • 企業が経営破綻により事業継続を断念したが、法的手続きを採らず弁護士などに事後を一任して私的整理(内整理)を明らかにした企業(私的倒産)

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