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「東日本大震災」関連倒産(1月)

 2018年1月の「東日本大震災」関連倒産は2件(前年同月1件)で、2カ月連続で前年を上回った。ただし、低水準な推移は変わらず収束傾向が続いている。
 累計件数は東日本大震災から丸7年を前にして1,853件(1月31日現在)に達した。なお、1月の負債総額は13億5,100万円で2カ月連続で前年同月を上回った。

東日本大震災関連倒産 震災後月次推移

2018年1月の倒産事例

 味噌・醤油醸造販売の(株)高砂長寿味噌本舗(TSR企業コード:141053399、法人番号:2370301000775、宮城県)は、昭和21年創業の仙台味噌の老舗醸造元。「長寿味噌」ブランドは地元で知名度が高く、内閣総理大臣賞など数多くの受賞歴があり、県の衛生施設モデル工場の指定も受けていた。ただし、こだわりの商品は他社に比べて割高で販売が伸び悩み、設備投資負担が重荷となっていた。このため企業再生支援機構による経営指導を受けて、平成23年4月からは再生計画に沿った経営に移る予定であったが、この矢先に東日本大震災で本社工場が大きな被害を受け、災害損失などから5,000万円の赤字を計上した。その後は、改めて再生計画を策定して新たな営業展開を図っていたが業績を回復できず、事業継続を断念して破産を申請した。

 2018年1月の地区別は、東北1件(宮城)と関東1件(神奈川)。
 「震災関連」倒産の累計1,853件を都道府県別でみると、最多は東京の555件。次いで、宮城158件、北海道85件、神奈川77件、千葉74件、岩手と茨城が各73件、福岡70件、福島64件、群馬61件、栃木59件、静岡50件、山形47件、埼玉46件、大阪45件と続く。直接被災地の東北6県の倒産件数は398件(構成比21.4%)だった。
 「震災関連」倒産の累計1,853件を産業別でみると、最多は宿泊業・飲食店などを含むサービス業他の491件(1月1件)。次いで、製造業が420件(同1件)、卸売業が342件、建設業が222件、小売業が174件と続く。
 被害型で分類すると、「間接型」1,679件(構成比90.6%)に対し、「直接型」は174件(同9.3%)だった。

東日本大震災関連倒産

震災関連の集計基準

「震災関連」の経営破綻は、原則として次の3つのどれかに該当するものを集計している。

  1. 震災により施設・設備・機械等に被害を受けて経営破綻した(直接型)
  2. 以前から経営不振だったが、震災による間接影響を契機に経営破綻した(間接型)
  3. 震災の影響による経営破綻が、取引先や弁護士等への取材で確認できた(直接・間接型)
  • 集計では、すでに震災前に再建型の法的手続を申請しながら、震災による影響で再建を断念し破産手続に移行したケースなどは、倒産件数のダブルカウントになるため集計から除外している。
  • 「震災関連」の経営破綻は下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」として集計。「事業停止」や「弁護士一任」、「破産手続き中」などの企業は、今後の展開次第で事業再開の可能性もあるため、「実質破綻」として区別した。

倒産の定義(対象:負債額1,000万円以上の法人および個人企業)

  • 会社更生法、民事再生法、破産、特別清算を裁判所に申請した企業(法的倒産)
  • 手形決済などで6カ月間に2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けた企業(私的倒産)
  • 企業が経営破綻により事業継続を断念したが、法的手続きを採らず弁護士などに事後を一任して私的整理(内整理)を明らかにした企業(私的倒産)

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