• TSRデータインサイト

(株)ステークスの決算書を読む

 10月2日に東京地裁から破産開始決定を受けたステーキチェーン運営の(株)ステークス(TSR企業コード:295376414、東京都)。
 破産直前の2016年12月期の売上高は14億1,417万円(前期比12.1%減)と減収だったが、最終利益は3,787万円(前期は4,440万円の赤字)の黒字だった。黒字転換は減価償却の見送りで捻出されたものだ。ステークスの財務内容を独自に入手し、分析してみた。


アンバランスな資産内容

 ステークスの貸借対照表で目につくのが、「現預金」の少なさだ。2015年12月期の1億766万円が、2016年12月期は5,448万円に半減。飲食店という事業特性から、大半は即金回収だ。仕入代金も短期決済が多く、過剰なキャッシュ保持はあり得ない。だが、それにしても現金の減少は異常な水準だ。売掛金等も加味した当座比率は、2015年12月期が210.5%に対し、2016年12月期は54.4%。100%が一つの目安だが、手元資金の困窮ぶりがうかがえる。
 また、多額の「建物附属設備」も気になる。2015年12月期の6億1,252万円が、2016年12月期は7億1,125万円に増え、総資産の半分以上を占めている。「土地」や「建物」であれば、担保設定で資金調達にも結びつくが、「付属設備」では資金調達のハードルは高い。また、店舗閉鎖で原状回復を求められた場合、大幅な除却を迫られる可能性もある。「建物附属設備」は資産計上されていても、将来に渡る資産価値が未知数で、膨らみも検証が必要だろう。

(株)ステークスの貸借対照表

利益率の低下

 損益計算書では、2015年12月期62.7%だった総利益率が、2016年12月期は58.0%に下落した。安売りの直撃だろう。「地代家賃」は2015年12月期1億7,794万円、2016年12月期1億6,185万円と、さほど削減できていない。支払利息は1,561万円で、借入金は7億7,426万円。単純金利は2.0%程度だが、キャッシュアウトが資金繰りの負担になっていた。

(株)ステークスの損益計算書

 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2017年10月31日号掲載「Weekly Topics」を再編集)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ