• TSRデータインサイト

2017年1-8月「主な上場企業 希望・早期退職者募集状況」調査

 「人手不足」が深刻さを増すなか、希望・早期退職者を募った上場企業数が5年ぶりに前年を上回った。2017年1月以降に希望・早期退職者の募集実施を公表した上場企業は8月末時点で20社に達し、すでに前年(1‐12月)の18社を上回った。


  • 本調査は、2017年に希望・早期退職者募集の実施を情報開示、具体的な内容を確認できた上場企業を抽出した。希望・早期退職者の募集予定を発表したが、まだ実施に至っていない企業、および上場企業の子会社(未上場)は対象から除いた。資料は原則として『会社情報に関する適時開示資料』(2017年8月31日公表分まで)に基づく。

希望・早期退職者募集の実施企業、5年ぶりに前年を上回る

 2017年に希望・早期退職者募集の実施を公表した主な上場企業は、8月末時点で20社に達し、2016年(18社)を上回った。これまで希望・早期退職者募集を実施した上場企業数は、リーマン・ショック直後の2009年は191社にのぼったが、円安進行で輸出産業を中心に大手企業の業績が好転した2013年から減少をたどり、2016年は調査を開始以来、最少の18社にとどまった。

主な上場企業 希望・早期退職者募集状況

業種別の最多は、電気機器の8社

 2017年の募集人数は、最多がニコン(グループ会社を含む)の1,000人。次いで、スズケン(グループ会社を含む)の350人、ジャパンディスプレイの240人、スリーエフの180人と続く。
 募集人数が100人以上は7社(前年8社)で前年を1社下回った。業種別では、日立国際電気、ジャパンディスプレイ、ウシオ電機など、電気機器が8社で最も多かった。


 2017年の上場企業の希望・早期退職者募集は、すでに8月末時点で前年1年間の実績を上回った。これは業績不振で人員削減に踏み切る企業に加え、業績好調だからこそ将来のビジネス展開を見据えた事業の「選択と集中」で、筋肉質の経営体質へ「攻め」の希望・早期退職募集を実施しているケースも押し上げた。
 また、有効求人倍率が高水準で推移し、雇用環境の緩和が組織スリム化の追い風になっていることも見逃せない。
 今後も企業競争力を高めるための人員の適正化、あるいは新たな事業参入に向けた既存事業の廃止など、次の事業展開を視野に入れた人員削減に踏み切る企業が続く可能性がある。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ