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2015年「倒産企業の財務データ分析」調査

 2015年(1-12月)に倒産した企業の赤字企業率は46.0%で、生存企業の2倍超を示した。また、借入依存度は平均64.6%で、過剰債務を抱えた企業が目立った。大手企業を中心に好業績が目立つなか、業績改善の動きが鈍い中小企業が多いことがわかった。


  • 本調査は、東京商工リサーチが保有する財務情報から3期連続データがある、2015年の倒産企業565社(個人企業を含む)と生存企業(30万4,630社)を無作為に抽出、比較した。最新決算データは2015年12月期まで。

2015年倒産企業、「減収」が過半数

 2015年に倒産した565社の最新期の総売上高は、5,064億3,652万円(前期比15.6%減、前期6,003億7,130万円)だった。このうち「減収企業」が、320社(構成比56.6%)と過半数を占め、倒産企業の売上不振を物語った。これに対し、生存企業の最新期の総売上高は前期比1.1%増と前期を上回り、「増収企業」が全体の53.4%を占めた。

赤字企業率、倒産企業は46.0%で生存企業が21.4%

 赤字企業率(当期純損失を計上した企業数の比率)は、2015年の倒産企業565社は46.0%を示した。全体の約半数が赤字経営で、生存企業の21.4%と比べて2倍超になった。
 倒産企業の赤字企業率は、前々期43.0%→前期41.7%→最新期46.0%と推移し、景気回復機運を横目に、業績不振から抜け出せない企業の実態を浮き彫りにした。
 一方、生存企業の赤字企業率は、前々期24.8%→前期21.5%→最新期21.4%と経営改善が図られていて、対照的な図式をみせた。

赤字企業率

倒産企業の有利子負債構成率、平均64.6%

 借入依存度を示す「有利子負債構成率(総資産に対する長短借入金、社債などの割合)」では、2015年の倒産企業565社は平均64.6%、生存企業の平均28.9%と比べて高率さが目立った。
 倒産企業の有利子負債構成率は、前々期55.4%→前期54.8%→最新期64.6%と上昇し、生存企業が、前々期30.1%→前期29.2%→最新期28.9%と年々低下しているのに対し、過大な有利子負債(過剰債務)が経営の足かせになったことうかがわせた。

有利子負債構成率

倒産企業の総資産、前期比16.9%減

 総資産額では、2015年の倒産企業565社は前期比16.9%減だった。生存企業の最新期の総資産が同3.6%増とプラスになったのと比べて、倒産企業の減少ぶりが目立った。倒産企業は、現預金、売掛債権、有形固定資産の売却、在庫減少などが総資産のマイナスにつながったとみられる。

倒産企業の自己資本比率、債務超過企業が54.5%

 自己資本比率(総資産に占める自己資本の割合)は、2015年の倒産企業565社の平均が▲5.6%(▲はマイナス)だった。自己資本比率は企業の基礎体力や安全性を示す指標で、この比率が低いほど借入金等への依存度が高く、比率のマイナスは債務超過を示す。生存企業の自己資本比率38.8%に比べて、倒産企業の財務内容の脆弱さが際立った。
 最新期での自己資本比率別の構成比をみると、生存企業では自己資本比率30%以上が全体の半数(50.0%)を占めた。これに対し、倒産企業565社では全体の10.2%にとどまり、逆に債務超過が54.5%(308社)を占め最も多かった。

自己資本比率

倒産企業の経常利益率、平均▲7.6%

 経常利益率(売上高に占める経常利益の割合)は、2015年の倒産企業565社の平均が▲7.6%だった。生存企業が平均5.5%だったのと比べ、倒産企業の収益力は極めて低い。
 経常利益率は、金融収支などを含めた総合的な収益性を反映するため、一般的に比率が高いほど良好といえる。倒産企業は、多額の有利子負債を抱えて金利負担が収益を圧迫したり、受注単価の引き下げなどで利益率が低下したほか、経常利益の減少などで比率が低下したとみられる。

経常利益率

倒産企業の当座比率、平均49.3%にとどまる

 2015年の倒産企業565社の当座比率は平均49.3%だった。当座比率は、企業の短期支払能力を判断する指標。短期間に支払い期限が到来する「流動負債」に対し、当座資産(短期間に現金化しやすい現金預金、受取手形、売掛金など)をどれだけ保有しているかを示す。比率が高いほど短期的な支払担保能力があるとされ、当座比率100%以上が安全性の目安とされる。
 倒産企業の当座比率は、前々期65.5%→前期56.8%→最新期49.3%と推移し、支払能力の低下を如実に示した。生存企業の当座比率が平均78.9%だったのと比べて、倒産企業は資金繰りに余裕を欠いていることを物語った。


 2015年に倒産した565社の3期連続財務データをみると、倒産企業の多くが売上減少に加えて、過剰債務を抱えていることを裏打ちした。元々、倒産企業は体力が脆弱で、経営不振に陥ると財務悪化が一気に進み、自力再建を図ることが難しいことをうかがわせた。
 「中小企業金融円滑化法」が終了して3年が経過したが、金融機関が引き続きリスケ要請に柔軟に応じるなどの支援により、中小企業が下支えされている面が強い。
 大手企業の好業績を横目に見ながらも、中小企業が自律的な業績改善を図ることは、当面はかなり高いハードルになっているのが現状である。実効ある中小企業支援策の実施が待たれる。

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