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「チャイナリスク」関連倒産(2016年2月)

 2月の「チャイナリスク」関連倒産は10件だった。前年同月比では8件、前月比は7件、それぞれ増加した。2014年1月の集計開始以降、2月としては最多を記録した。2月に倒産した10件は、中国国内の人件費高騰や為替変動による仕入費用の上昇など「コスト高」を要因としたものだった。中国の人件費は引き続き上昇しており、今後も中国国内のコスト高を要因とした倒産は高水準で推移する可能性を残している。
 負債総額は29億5,300万円(前年同月比25.6%増)だった。負債10億円以上の倒産はなく、29億600万円の負債を抱え松山地裁西条支部へ民事再生法の適用を申請した(株)テラマチ(TSR企業コード:810006731、法人番号:6500001009323、愛媛県)が集計された前月と比べて35.3%減と大幅に減少した。
 倒産には集計されないが、事業停止や破産準備中などの「実質破綻」は6件(前年同月ゼロ)発生した。両者を合算したチャイナリスク関連破綻は16件となり、集計開始以来の最多を記録した。


  • 「チャイナリスク」関連の集計基準
    「チャイナリスク」関連の経営破綻は、破綻の原因が次の6項目のどれかに該当するものを集計している。
    1. コスト高(人件費、製造コストの上昇、為替変動など)
    2. 品質問題(不良品、歩留まりが悪い、模倣品、中国生産に対する不信など)
    3. 労使問題(ストライキ、工場閉鎖、設備毀損・破棄など)
    4. 売掛金回収難(サイト延長含む)
    5. 中国景気減速(株価低迷、中国国内の消費鈍化、インバウンドの落ち込みなど)
    6. 反日問題(不買、取引の縮小、暴動など)
    ※ 「チャイナリスク]関連の経営破綻は、下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」として集計。「事業停止」や「破産申請の準備中」などは、倒産とは区別し「実質破綻」としている。
  • 倒産の定義(対象:負債額1,000万円以上の法人および個人企業)
    A. 会社更生法、民事再生法、破産、特別清算を裁判所に申請した企業(法的倒産)
    B. 手形決済などで6カ月間に2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けた企業(私的倒産)
    C. 企業が経営破綻により事業継続を断念したが、法的手続きを採らず弁護士などに事後を一任して私的整理(内整理)を明らかにした企業(私的倒産)
    ※「チャイナリスク」関連倒産の集計開始は2014年1月。

チャイナリスク関連倒産月次推移

 2月の「チャイナリスク関連倒産」は10件発生した。2015年8月から7カ月連続で前年同月を上回っており、中国経済の減速の影響は確実に日本企業にも波及している。
 倒産の背景には、人件費高騰や為替変動などによる「コスト高」がある。産業別では製造業が7件(構成比70.0%)と大半を占め、中国国内の生産に依存している企業には「コスト高」が直撃している。
 「コスト高」を要因に行き詰まったケースとしては、中国の現地法人で住設機器・家電品を製造していた(株)HEATEC(TSR企業コード:294017895、法人番号:1010701012036、東京都)が、日本での受注不振に加え、中国国内の人件費高騰で製造コストが上昇して資金繰りが破たん、2月4日に再度の資金ショートを起こした。負債総額は5億200万円だった。
 中国指導部は、2020年を目標に国民1人あたり所得を2010年に比べ倍増させる方針を打ち出している。これを受け、景気減速下でも中国国内の賃金水準は上昇が続いており、中国への生産依存度が高い日本企業では、引き続き「コスト高」を要因とした倒産が出る可能性がある。
 3月5日に開幕した第12期全国人民代表大会(全人代)で、李克強首相は過剰な生産や設備に対してメスを入れる方針を示した。石炭や鉄鋼、セメントなど製造業の工場閉鎖や人員削減、在庫圧縮に踏み切るとみられる。
 中国国内では生産能力が飛躍的に向上したが、景気減速で消費が低迷し、中国国内の過剰在庫が安価で日本に流入する事態も現実味を帯びている。また、日本だけでなく国際市場への流入は市場価格の下落にもつながりかねない。すでに、鉄鋼業界では中国生産の余剰分が国際市場に出回り鋼材価格を押し下げ、鉄鋼メーカーの業績に暗い影を落としている。中国の動向次第では素材デフレのさらなる進行も懸念される。
 全人代では、2016年の国内総生産(GDP)の実質経済成長率の目標を、従来の「7%前後」から「6.5%~7%」に引き下げることを表明した。中国人の訪日観光客数は堅調に推移しているが、経済成長の鈍化がいずれインバウンド効果の恩恵を受ける観光関連や小売、流通業者にも影響が広がる恐れがある。このため、チャイナリスク関連倒産は、当面前年を超える水準で発生していく可能性が高いとみられる。

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