• TSRデータインサイト

2015年「休廃業・解散企業」動向調査

 2015年の休廃業・解散件数は2万6,699件(前年比2.4%減)で、2年連続で前年を下回った。だが、リーマン・ショック後の2009年以降、2万5,000件以上の高水準で推移している。2015年の企業倒産は25年ぶりに9,000件を下回った。この流れと対照的に、後継者難や業績ジリ貧などビジネスモデルの不透明感を払拭できず、事業継続を断念する中小企業が依然として多いことがわかった。


  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベースから休廃業、解散が判明した企業を抽出した。「休廃業」は、資産が負債を上回る「資産超過」状態での事業停止で、倒産には集計されない。また、「解散」は事業継続を断念する点では倒産と同じだが、資産に余力を残す状態で清算手続きをとるケースもあり、「解散」を決議した段階では倒産に集計されない。

2015年の休廃業・解散件数、年間倒産の3倍に

 2015年の休廃業・解散は、2万6,699件(前年比2.4%減)だった。輸出企業を中心にした大手企業の業績拡大や景気の下支え効果から、2年連続で前年を下回った。ただ、企業倒産の減少ぶりが際立つなか、休廃業・解散は高水準を持続し、2015年の年間の倒産件数8,812件の3倍にのぼった。また、「倒産」と「休廃業・解散」の合計は、リーマン・ショック直後の2009年(4万877件)には及ばないものの、依然として3万5,000件以上で推移している。

休廃業・倒産、年次推移

サービス業他、情報通信業、金融・保険業で前年を上回る

 2015年の休廃業・解散の産業別では、最多が建設業の6,856件(前年比6.0%減、構成比25.7%)だった。公共事業の下支えや建築・住宅需要の高まりで業績は回復しているが、受注の先行懸念や人手不足、労務費などの高騰もあり、余裕のあるうちに事業継続を断念したケースが多いとみられる。
 次いで、飲食業や宿泊業などを含むサービス業他が6,726件(前年比1.4%増)、小売業3,918件(同1.9%減)、製造業2,777件(同0.6%減)と続く。前年比では、10産業のうち、零細規模の多い飲食業を含むサービス業他と情報通信業、金融・保険業の3産業が前年を上回った。

地区別、中国は過去10年間で最多

 地区別では、9地区のうち6地区で前年を下回った。中国は小売業やサービス業他の増加が目立ち、2,750件(前年比24.3%増)と過去10年間で最多件数を記録した。
 2015年の企業倒産は25年ぶりの低水準だったが、「休廃業・解散」は後継者難や業績ジリ貧などから高水準で推移した。こうしたことから中小・零細企業の経営環境の把握は、企業倒産に加えて「休廃業・解散」の動向も必要だろう。中小企業の後継者難という事業承継問題も絡み、今後の景気動向によっては再び「休廃業・解散」企業が増勢に転じる可能性がある。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ