• TSRデータインサイト

2015年1-4月「老人福祉・介護事業」の倒産状況

 2015年1-4月の「老人福祉・介護事業」の倒産は、前年同期より6割増の31件(前年同期19件)にのぼり、介護保険法が施行された2000年以降では過去最多のペースで推移している。
介護関連事業は、慢性的な人手不足に加え、他産業からの新規参入も加わり競争が激化している。このため、資本力の脆弱な小規模事業者を中心に過当競争から息切れするケースが増えているとみられる。さらに、2015年度の介護報酬改定が9年ぶりに引き下げとなったことで、経営への打撃が大きく、今後の動向が注目される。
※調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む。

老人福祉・介護事業の倒産 年次推移

2015年1-4月の倒産が6割増の31件

 全体の企業倒産が低水準に抑制されるなか、2015年1-4月の老人福祉・介護事業の倒産は31件(前年同期比63.1%増、前年同期19件)にのぼり、著しい増加をみせた。
また、負債総額も34億3,300万円(同21.3%増、同28億2,900万円)と前年同期を上回っている。ただし、負債10億円以上の大型倒産がゼロ(前年同期ゼロ)だったのに対し、負債5千万円未満が21件(前年同期比110.0%増、前年同期10件)と倍増し、小規模企業が目立った。

「訪問介護事業」と「通所・短期入所介護事業」が増勢

 2015年1-4月の老人福祉・介護事業倒産の内訳をみると、「訪問介護事業」が12件(前年同期比50.0%増、前年同期8件)で最も多く、次いで施設系のデイサービスセンターなどを含む「通所・短期入所介護事業」が11件(同120.0%増、同5件)と続き、いずれも増勢している。

設立5年以内の事業者の倒産が6割

 従業員数別では、5人未満が21件(前年同期比133.3%増、前年同期9件)で、小規模事業所の倒産が全体の約7割(構成比67.7%)を占めた。
また、2010年以降に設立した事業所が19件(構成比61.2%)と6割を占め、設立から5年以内の新規事業者の倒産が多かった。このように小規模かつ新規事業者が倒産増加の中心になっていることを浮き彫りにした。

原因別、販売不振(業績不振)が最多

 原因別では、最多が販売不振(業績不振)の11件(前年同期比37.5%増、前年同期8件)。次いで、事業上の失敗が10件、他社倒産の余波が4件の順だった。
形態別では、事業所の解体・消滅である破産が30件(前年同期比76.4%増、前年同期17件)と全体の9割(構成比96.7%)を占めた。この一方で、再建型の民事再生法は1件(前年同期ゼロ)にとどまり、業績不振の事業所の再建が難しいことを物語った。

 2015年度の介護報酬改定は、全体で2.27%の大幅引き下げで、9年ぶりのマイナス改定になった。今回の改定では、中重度の要介護者や認知症高齢者への対応強化と、介護職員の処遇改善が拡充された一方で、ほとんどの関連サービスの基本報酬が減額された。
特に小規模型のデイサービス事業は約1割も引き下げられるなど、今回の介護報酬のマイナス改定は、小規模事業者には厳しい内容が多いため、今後の経営にも大きな影響が及ぶことが懸念される。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ