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2014年3月期決算「主要100信用金庫 総資金利ざや」調査

 金融機関では銀行は元より、地域に密着した信用金庫でも「総資金利ざや」の縮小に歯止めがかかっていないことがわかった。主要100信用金庫の2014年3月期決算では、過半数の52信金で「総資金利ざや」が前年同期より縮小した。金利低下が続く中、金融機関の貸出競争もあって、本業で収益を上げにくい状況が続いている。


  • 本調査は、総資産が上位の主要100信用金庫を対象に、2014年3月期決算での「総資金利ざや」を調査した。「総資金利ざや」は、「資金運用利回り」-「資金調達原価率」で算出されている。資料は各信用金庫のディスクロージャー誌から抽出した。

主要100信用金庫 3月期決算 利ざや中央地推移

資金全体の収益力を示す「総資金利ざや」

 信用金庫の「総資金利ざや」は、貸出金や余裕金等の運用収益力を表す「資金運用利回り」から、預金などの資金調達コストを示す「資金調達原価率」を差し引いた数値。幅広い運用・調達全体の状況を利回りの差で表したもので、経営効率や全体の収益力をみる指標の一つ。
この数値がプラスだと資金運用で収益を上げ、マイナスは「逆ざや」で貸出や運用で利益が出ていないことを示す。

主要信金の過半数で「総資金利ざや」が縮小

 主要100信用金庫の2014年3月期決算での「総資金利ざや」は、52信金(構成比52.0%)で前年同期より縮小した。さらに、前年同期と同率の8信金を含めると、前年同期の「総資金利ざや」を上回らない信用金庫は60信金にのぼった。
一方、前年同期より「総資金利ざや」が拡大したのは40信金。個別では、長浜信用金庫の0.25ポイント拡大(0.28→0.53%)、飯田信用金庫0.20ポイント拡大(0.63→0.83%)、福島信用金庫0.17ポイント拡大(0.18→0.35%)、鹿児島信用金庫0.15ポイント拡大(0.12→0.27%)など。

総資金利ざや 「0.0%以上0.1%未満」が3年前より倍増

 主要100信用金庫の決算期別の「総資金利ざや」の分布では、2014年3月期は「0.2%以上0.3%未満」が29信金で最も多かった。次いで、「0.1%以上0.2%未満」が28信金と続く。
3月期決算の推移をみると、低率の「0.0%以上0.1%未満」は2011年が11信金だったが、12年が13信金、13年が17信金になり、14年は23信金に増え2011年と比べて2倍になった。
このように、主要信用金庫では金利低下や金融機関間の貸出競争により、本業収益が低迷している現状が浮きあがった。

8割の信金で「資金運用利回り」が低下

 主要100信用金庫の貸出金や余裕金等の運用収益力を表す「資金運用利回り」は、2014年3月期では84信金(構成比84.0%)で前年同期より低下した。
決算期別の「資金運用利回り」の分布をみると、2014年3月期は「1.3%以上1.4%未満」が28信金で最も多かった。次いで、「1.4%以上1.5%未満」が22信金と続く。
3月期決算の推移では、2011年には「1.5%以上2.0%未満」が73信金と最も多かったが、その後は12年に56信金、13年が32信金、14年が19信金と減少が著しい。
これに対し、2011年に「1.3%未満」はゼロだったが、2014年は29信金に増えて、年々資金運用が難しくなっていることを物語った。


 金融機関の収益源である「総資金利ざや」が年々縮小を続けている。日銀による大胆な金融緩和の影響から貸出金利が低下し、貸出だけで利ざやを稼ぐことが年々難しくなっている。
さらに、信用金庫は定期預金による資金調達が多く、経費に占める人件費の割合も大きいため、低金利下でも資金調達コストが下がりづらいとされる。
信用金庫は営業地域が限定され、顧客も営業地域内の企業や個人に限られているなかで、地元の地銀や同業との貸出金の金利競争が激しさを増し、経営のホームグラウンドである地域経済の疲弊が厳しさに追い打ちをかけている。各信金は地元企業の資金需要が低迷するなか、個人客の掘り起こしなどに努めているが、有効な手だての模索が今後も続く。

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