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2014年9月期「中小企業の業績」動向調査

 資本金1億円未満の中小企業の2014年9月期決算は、売上高が前期比5.9%増、利益面でも同14.6%増と全体の総額では増収増益となった。ただし、企業数で比較すると増収企業率は54.5%、増益企業は49.0%と半数程度で、2014年3月期と比べて増収企業率、増益企業率ともに比率がダウンした。2013年9月期以降、中小企業の決算内容は大企業を追いかける形で増収基調を辿り、景気回復が中小企業にも浸透しつつある。増収、増益企業比率は伸び悩みをみせ、増収増益が一部の企業に偏り、景気回復の波に乗れない中小企業が多い実態が浮かび上がった。
産業別では、10産業のうち金融・保険業を除く9産業が増収だった。公共工事の前倒し発注など、旺盛な受注環境が続く建設業の増収幅がトップ。また、2013年9月期以降、連続して減益が続いていたサービス業他が増益になったが、小売業は減益に転じ、赤字企業の比率も上昇した。


  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約269万社)から、決算期ごとに業績が比較可能な約31万社を無作為に抽出し分析した。

中小企業の増収企業の比率が低下

 資本金1億円未満の中小企業の2014年9月期売上高合計は、前期比5.9%増の増収だった。2013年12月期(前期比3.8%増)、2014年3月期(同3.9%増)と比較して3決算期連続で増加し、増加幅もアップした。ただし増収企業数の割合は54.5%で、2014年3月期(56.0%)より低下した。
一方、資本金1億円以上の大企業の2014年9月期の売上高合計は、前期比7.5%増、2014年3月期から1.5ポイント上昇した。増収企業率も70.2%と3.1ポイント拡大した。中小企業は大企業の業績回復を追いかけてきたが、増収企業率では大企業との格差が拡がった。
損益面では、資本金1億円未満の中小企業の増益率が49.0%と、2014年3月期(50.1%)を下回り5割を割り込んだ。横ばいが11.8%と4.6ポイントアップし、減益企業比率が39.2%(2014年3月期42.8%)に縮小したが、ここにきて中小企業の利益の伸び悩みもうかがえる。

決算期別増収企業率

産業別売上高 建設業が2決算期連続で増収額トップ

 産業別の売上高合計は、10産業のうち金融・保険業を除く9産業で前期比増収だった。とりわけ建設業は、前期比10.6%増と全産業で唯一2ケタの伸びを示し、活況を呈する業界環境が反映された。消費税増税で注目される小売業は、2014年3月期は駆け込み需要もあって9.6%増と高い伸びを示したが、2014年9月期は3.2%増にとどまった。増税による反動減、消費の冷え込みで増収幅が縮小したのか、今後の推移が注目される。

産業別損益 小売業が減益に転じる

 産業別の利益合計は、10産業のうち金融・保険業、農・林・漁・鉱業、小売業、情報通信業の4産業を除く6産業で増益だった。サービス業他が増益となり収益の改善がみられたが、小売業は減益(12.9%減)に転じた。また小売業は赤字企業の割合が20.4%と2013年12月期(10.1%)から倍増した。増税に加え、円安による仕入価格の上昇、人件費の高騰などで経営環境が悪化、中小企業ほど価格転嫁が難しく、じりじりと赤字企業が増えている現状が浮き彫りになった。

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