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建設業向け貸出金調査 貸出金減少行が約7割

 アベノミクスによる機動的な財政政策による公共事業の拡大から建設市場が活況をみせている。しかし、銀行114行の2014年3月期の建設業向け貸出金残高は、前年同期より2.2%減少し、銀行貸出自体は低迷していることがわかった。

建設業向け貸出金残高推移

  • 本調査は、銀行114行を対象に、2014年3月期連結決算ベースの建設業向け貸出金残高を調べた。なお、信託銀行2行、りそな銀行、沖縄銀行は信託勘定を含む。傘下の銀行が連結子会社となっている場合や単体データのみ公表の銀行は、単独決算の業種別貸出状況を比較した。
  • 2012年4月1日に住友信託銀行・中央三井信託銀行・中央三井アセット信託銀行の合併で発足した三井住友信託銀行は、過去データとの比較ができないため、調査対象に含まれていない。

建設業向け貸出金残高 前年同期比2.2%減

 銀行114行の2014年3月期連結決算ベースの建設業向け貸出金残高は、11兆1,063億8,400万円(前年同期11兆3,642億5,500万円)。1年前の2013年3月期と比べて2.2%減(前年同期比2,578億7,100万円減)になった。
これに対し、銀行114行の総貸出金残高は、423兆2,332億3,000万円(前年同期413兆7,884億1,500万円)。2013年3月期と比べて2.2%増(前年同期比9兆4,448億1,500万円増)と、全体の貸出が伸びるなかで建設業向けは前年同期を下回った。

貸出金減少行が約7割を占める

 前年同期比の増減額では、114行のうち77行(構成比67.5%)で貸出金残高を減らした。減少額が最も大きかったのは、三菱東京UFJ銀行(単体)の639億円7,200万円減。
次いで、みずほ銀行(単体)の537億円減、静岡銀行269億円400万円減、横浜銀行136億7,300万円減と続く。ただし減少額100億円以上は5行(前年同期12行)と前年同期より7行減った。
減少率のトップは、新生銀行の28.6%減。次いで、スルガ銀行13.7%減、山梨中央銀行12.1%減、きらやか銀行12.0%減、長崎銀行(単体)11.5%減、佐賀共栄銀行(単体)9.7%減の順。
一方、増加率が最も大きかったの、あおぞら銀行の20.9%増。次いで、大分銀行19.6%増、宮崎銀行19.2%増、仙台銀行(単体)18.3%増、東京スター銀行12.7%増と続く。

貸出比率 前年同期比0.13ポイント低下の2.62%

 総貸出金に占める建設業向け貸出比率は、2014年3月期は平均2.62%で、前年同期(2013年3月期2.75%)より0.13ポイント低下した。
個別でみると、筑邦銀行が11.7%でトップ。次いで、福岡中央銀行(単体)11.2%、神奈川銀行10.4%、静岡中央銀行8.5%、東北銀行8.1%、愛知銀行7.7%と続く。
一方、建設業向け貸出比率が低かったのは、新生銀行0.2%、東京スター銀行0.3%、スルガ銀行0.8%、あおぞら銀行0.9%、三菱UFJ信託銀行1.0%の順だった。

地銀の7割で建設業向け貸出が前年同期を下回る

 業態別では、地銀64行は5兆8,927億9,800万円で前年同期比1.8%減。第二地銀41行は2兆3,274億2,300万円で同0.3%減。大手銀行他9行は2兆8,861億6,300万円で同4.6%減だった。業態別では3業態すべてで貸出金が前年同期を下回った。
地銀64行のうち、貸出金の減少は47行(構成比73.4%)、増加は17行で、地銀の7割が建設業向け貸出を減らした。第二地銀41行では、減少が24行(同58.5%)、増加が17行。大手行他9行では、減少が6行、増加が3行だった。

地区別 10地区のうち9地区で建設業向け貸出を減らす

 本店所在地の地区別では、全国10地区の九州を除く9地区で貸出金が前年同期を下回った。
減少率は中部14行の4.5%減を筆頭にして、東京11行の4.2%減、四国8行が3.3%減、北陸6行が2.8%減、北海道2行が2.2%減、近畿11行が2.0%減、東北15行が1.0%減、関東(東京を除く)17行が0.4%減、中国9行が0.1%減の順。一方、増加は唯一、九州21行の0.1%増だった。
九州は台風、大雨などの天災被害等の復旧工事が活発だったことも影響しているとみられる。

地区別の増減行は、北海道(減少行2、増加行ゼロ)、東北(減少行10、増加行5)、関東(減少行8、増加行9)、東京(減少行5、増加行6)、中部(減少行12、増加行2)、北陸(減少行5、増加行1)、近畿(減少行9、増加行2)、中国(減少行6、増加行3)、四国(減少行7、増加行1)、九州(減少行13、増加行8)だった。

アベノミクスで公共事業が拡大されるなか、銀行の建設業向け貸出残高は縮小している。
これは、前払金保証制度(公共工事の発注者が保証会社の保証を条件に、着工時に工事代金の一部を請負者に着工資金として支払うことができる制度)を導入している公共工事の増加で、金融機関からの借り入れがなくても、前払金等で当面の資金繰りが工面できている企業が多いためとみられる。ただし、厳しい見方をすれば、前向きな資金需要が依然乏しく、資金繰りも公共工事頼みの表れともいえる。

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