主な「地ビールメーカー」1-8月出荷量は2年連続で増加 ビールメーカーの6割弱が前年割れ、首位は「エチゴビール」
~ 第17回「地ビールメーカー動向」調査 ~
主な地ビールメーカー49社の2026年1-8月の総出荷量は9,093kℓ(前年同期比3.7%増)で、2年連続で前年を上回った。
夏場の記録的な酷暑による外出控えや、物価高の影響で消費が抑制され、地ビールの出荷量は2024年から2年連続で苦戦を強いられた。だが、地ビールブームは根強く、2026年の出荷量は前年を上回った。
ただ、出荷量は6割弱(55.1%)のメーカーが前年を下回り、二極化が進行していることがわかった。
ビール大手4社がカルテル問題で揺れるなか、地ビールメーカー各社は地道に味や品質向上とともに、営業開拓に取り組み、地ビール市場を広げている。
出荷量ランキングは、15年連続でエチゴビール(株)(新潟県)がトップの座を守った。また、出荷量伸び率のトップは(株)金澤ブルワリー(石川県)で、地場でのシェア拡大を図っている。
全国の主な地ビールメーカー49社の2026年1-8月の出荷量は、「増加」が20社(構成比40.8%)に対し、「減少」が27社(同55.1%)、「横ばい」が2社(同4.0%)と、半数以上のメーカーが前年を下回った。
1-8月の出荷量は2010年の調査開始以来、コロナ禍の2020年に初めて前年同期を下回ったが、その後は2023年まで順調に回復した。酷暑に見舞われた2024年は前年同期比8.6%減と4年ぶりに前年同期を下回ったが、2025年は同0.5%増、2026年も同3.7%増と2年連続で上回った。
近年は醸造施設を併設したビアバーも増え、小規模の新規参入が地ビールブームの底上げに一役買っている。その一方で、地ビールメーカー大手が市場を牽引する構図が年々強まり、生き残り競争は厳しさを増している。地ビールは、希少性と地産地消の付加価値をアピールできる強みがあるだけに、各社の戦略が注目される。
※本調査は、2026年1-8月の出荷量が判明した49社を有効回答とし、その他の項目は、回答が得られた52社を有効回答としてアンケート調査を実施、分析した。本調査は2010年9月に第1回調査を実施し、今回で17回目。
2026年1-8月の主要49社の総出荷量 前年同期比3.7%増
出荷量が判明した全国の地ビールメーカー49社の2026年1-8月の総出荷量は、9,093kℓ(前年同期比3.7%増)で、2年連続で増加した。
2026年の月別出荷量は、3月には1,112kℓ(前年同月比11.7%増)となり、5月は1,111kℓ(同9.4%増)、6月は1,184kℓ(同5.9%増)、7月は1,446kℓ(同5.4%増)、8月は1,188kℓ(同5.7%増)と大型連休以降で順調に増えている。夏場後半は全国的な天候不順に見舞われたが、前年同月を上回る状況が続いた。

地ビール出荷量 6割弱のメーカーが減少
49社の2026年1-8月の出荷量は、前年同期と比べ、「増加」は20社(構成比40.8%)だった。
一方、「減少」は27社(同55.1%)と半数以上を占め、「横ばい」は2社(同4.0%)だった。
出荷量が増加した要因は、「飲食店、レストラン向けが堅調」「スーパー、コンビニ、酒店向けが好調」が各11社(構成比50.0%)で最多だった。次いで、「インバウンドが回復し需要が伸びた」が6社(同27.2%)と続く。
減少の要因は、「物価上昇による消費の抑制」が13社(構成比56.5%)で最多だった。次いで、「飲食店、レストラン向けが不調」が12社(同52.1%)と続く。長引く物価高を背景に、消費者の二極化の行動が見え隠れしている。

「酒税法改正」 半数以上が「特に良い影響はない」
販売先は、最多が「自社販売(イベント販売含む)」で21社(構成比40.3%)だった。次いで、「小売業者」で11社(同21.1%)、「スーパー、コンビニ、酒店」が7社(同13.4%)、「観光地、道の駅」が6社(同11.5%)と続く。
酒税法改正の影響について、54.9%のメーカーが「特に良い影響はない」と回答した。一方、「消費者の関心が高まる」(21.5%)も上位で、比較的前向きに捉えている。

他社との差別化 独自の味や宣伝・ブランディング、パッケージ
大手ビールメーカーが地ビールや、職人がこだわりをもって作るクラフトビールにも進出し、消費者はスーパーやコンビニなどで幅広い種類のビールを手軽に購入できるようになった。
こうした状況で、ビール大手や他社との差別化に力を注ぐ点は、「独自の味・品質」が46社(構成比90.1%)で最多。次いで、「宣伝・ブランディング(SNS活用)」が17社(同33.3%)、「パッケージ(瓶や缶のデザイン)」が16社(同31.3%)、「地道な営業」が12社(同23.5%)で続く。
近年、人気が高まっているノンアルや微アル(低アルコール)の製品について、改善予定を聞いた。最多は、「変更なし」で33社(構成比63.4%)が回答した。次いで、「種類を増やし、改善もする予定」が9社(同17.3%)、「種類を増やし、既存の商品は現行のまま」、「種類は増やさず、既存の商品を改善する予定」が各5社(同9.6%)で続く。
製品コンセプトが確立しているメーカーが大半のため、オリジナリティを追求しつつ、ノンアルや微アル(低アルコール)など、消費者の嗜好変化に対応する取り組みが伺われる。

製品値上げ メーカーの半数が「実施・予定」、原材料の高騰が不安材料
値上げについて、最多は「値上げの予定はない」の21社(構成比40.3%)で4割を占めた。次いで、すでに「値上げを行った」が17社(同32.6%)、「いずれ値上げを予定」が12社(同23.0%)、「値上げはしたいができない」が2社(同3.8%)で続く。
「値上げを行った」は3割で値上げを実施し、「いずれ値上げを予定」まで含むと半数を超える55.7%にのぼった。一方、「値上げの予定はない」も4割(40.3%)を占め、値上げによる客離れを懸念する動きもみられた。
今後の懸念は、最多が「原材料の高騰(燃料代、運送費含む)」で45社(構成比86.5%)だった。次いで、「設備、施設(老朽化、管理、修繕など)」が33社(同63.4%)、「人件費高騰、人手不足、高齢化など」が32社(同61.5%)、「物価上昇による更なる消費の減退」が31社(同59.6%)、「競合および品質低下」が29社(同55.7%)で続く。

出荷量ランキング トップは14年連続で新潟のエチゴビール
2026年1-8月の出荷量トップは、エチゴビール(株)(新潟県)の2,824kℓで2位にダブルスコアの強さをみせた。地ビール全国第1号の「エチゴビール」を擁し、15年連続トップとなった。
エチゴビールの阿部誠社長は、「各社との積極的なコラボレーションによりクラフトビール市場活性化への貢献を図る」と、業界を牽引する意欲をみせる。
2位は「常陸野ネストビール」の(株)木内酒造1823(茨城県)の1,313kℓ、3位は「伊勢角屋麦酒」の(有)二軒茶屋餅角屋本店(三重県)の1,109kℓ、4位は「ベアレンビール」の(株)ベアレン醸造所(岩手県)で560kℓ、5位は「御殿場高原ビール」のGKB(株)(静岡県)が255kℓで続く。
また、出荷量の伸び率ランキングは、トップが「金澤麦酒」の(株)金澤ブルワリー(石川県)だった。次いで、「城山ブルワリー」の城山観光(株)(鹿児島県)が続く。城山観光は鹿児島を代表する名門ホテルで、ホテル地下で醸造するオリジナルクラフトビールはファンを広げている。

地ビールの出荷量2位の(株)木内酒造1823は、1823年(文政6年)創業の老舗酒蔵で、茨城県北でビール麦などが栽培できることに着目し、1996年からビールの製造を始めた。日・英・独・米のビールコンテストで金賞を受賞し、はばたく中小企業小規模事業者300社(経済産業省)に選ばれ、茨城おみやげ大賞などの表彰も受けている。
また、3位の(有)二軒茶屋餅角屋本店は、2026年に創業450周年を迎えた。国内だけでなく輸出にも取り組み、マーケットはアジアを中心に南米市場など10カ国以上に広がり、日本のクラフトビールを世界へ届けるプロジェクトを牽引している。
今回のアンケートでは、「クラフトビール市場は、醸造所数の増加や認知度の向上を歓迎する反面、品質面でのばらつきが大きいことに課題を感じる」と、地ビール・クラフトビールに対するレピュテーションリスクを懸念する声もあった。
また、酒税法改正は、半数を超える54.0%が「特に良い影響はない」と回答する一方で、「酒税法改正で、より安価な大手メーカーが有利になる」といった懸念の声もあった。
今後の懸念や課題について、「原材料の高騰(燃料代、運送費含む)」「人件費高騰、人手不足、高齢化」「物価上昇による更なる消費の減退」など、物価高、後継者、人手不足が広がる深刻な声が多かった。
一方で、「今までクラフトビールを飲んでいない人たちにどうやって飲んでもらうか重要」「クラフトビールの美味しさ・楽しさを通じ、ビール業界全体への魅力を広げていきたい」「一過性のブームではなく、日本の酒文化として根付くため、個々の醸造所の成長だけでなく、業界全体の品質向上と信頼の醸成が不可欠」など、業界を盛り上げたい声も多く寄せられた。
地ビールは地域性と同時に、メーカー各社の個性やこだわりが色濃く反映され、これが高付加価値の源泉でもある。「原料選びから製造工程の細やかな管理まで一切妥協せず、細部の製造工程の見直しなどで会社全体の管理レベルの向上を日々徹底して追求」「地域素材を活用した商品づくりを通し、地域ならではの価値や魅力を伝え、その背景にあるストーリーにも共感していただけるような取り組みを進めていく」など、職人の矜持にあふれた回答もあった。
地ビールの希少性と地産地消で価値を高めながら、根強い地ビールブームを継続、発展できるか各社の戦略が問われている。