• TSRデータインサイト

2025年度の「倒産発生率」 10年間で最悪の0.284% 建設業、小売業、サービス業他など労働集約型の産業で悪化

~ 2025年度の「倒産発生率(普通法人)」動向 ~


 2025年度の倒産発生率は、10年間で最悪の0.284%(前年度0.278%)となった。コロナ禍の資金繰り支援が浸透した2021年度は0.167%まで低下したが、その後は円安などによる物価高や人材確保による人件費の上昇などで倒産件数は増勢に転じ、倒産発生率の悪化が続く。
 2025年度の企業倒産は2年連続で1万件を超えた。2月以降、イラン情勢の緊迫感は続いていて、原油をはじめ関連製品などの価格上昇もあり、さらなる企業収益の圧迫も懸念されている。また、コロナ借換保証の返済開始の最後のピークを迎えていて、企業倒産の増勢とともに、倒産発生率も悪化する可能性が高まっている。

 都道府県別の倒産発生率では、悪化が27道府県(前年度37都府県)、改善は19都県(同10道府県)、同水準が1県(同ゼロ)。ワーストが徳島県の0.445%(同0.272%)で、最も低かったのが熊本県の0.174%(同0.205%)だった。
 産業別では、建設業(0.347%)、小売業(0.318%)、サービス業他(0.251%)、農・林・漁・鉱業(0.234%)、不動産業(0.084%)の労働集約型の産業で悪化した。
 倒産発生率の最高は、情報通信業の0.458%(同0.488%)で、2年連続でワーストになった。また、ドライバー不足や燃料高などの問題を抱える運輸業が0.440%(同0.447%)と2番目に高い水準にあるが、価格転嫁の浸透で倒産件数は減少し、倒産発生率は改善した。
 円安基調のなかで物価が値下がりする要素は乏しく、また、賃上げによる人件費の上昇も企業の資金繰りに重くのしかかっている。そうしたなか、イラン情勢の不確定要素もあり、倒産発生率の悪化が続くとみられる。
倒産発生率は、普通法人の倒産件数÷普通法人×100で算出した。分母は国税庁統計法人税表に基づく内国普通法人数、分子は東京商工リサーチ(TSR)の個人企業等を除く普通法人の倒産件数。2025年度の普通法人数は2024年度のデータを採用した。
普通法人は、会社等(株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、合同会社、協業組合、特定目的会社、相互会社)、企業組合、医療法人を対象にした。
※本調査は、国税庁の「統計年報書」の法人税課税対象の内国普通法人(302万5,599件)と、TSRが集計した2025年度の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、普通法人(8,618件)を基に算出した。

倒産発生率推移


【地区別】東北を除く8地区で悪化

 地区別では、8地区で悪化した。
 地区別ワーストは、東北の0.343%(前年度0.364%)だったが唯一、改善した。次いで、近畿の0.311%(同0.294%)で、この2地区が0.3%台だった。
 このほか、中部0.294%(同0.285%)、中国0.292%(同0.282%)、関東0.274%(同0.272%)、九州0.272%(同0.253%)、北陸0.266%(同0.263%)、四国0.265%(同0.256%)と続く。
 最低は、北海道の0.226%で、前年度(0.220%)より0.006ポイント悪化した。

地区別(普通法人)倒産発生率

【産業別】10産業のうち、5産業で倒産発生率が悪化

 産業別の倒産発生率では、製造業、卸売業、金融・保険業、運輸業、情報通信業の5産業で改善。農・林・漁・鉱業、建設業、小売業、不動産業、サービス業他の5産業で悪化した。
 産業別ワーストは、情報通信業の0.458%だが、前年度(0.488%)より0.030ポイント改善した。ソフトウェア業など小規模企業が多く、2年連続でワーストになった。
 次いで、卸売業の0.441%(前年度0.462%)、運輸業の0.440%(同0.447%)で、この3産業(同3産業)が倒産発生率0.4%台だった。
 卸売業は、円安による仕入コストだけでなく、人件費なども上昇している。しかし、価格転嫁が徐々に進み、4年ぶりに倒産件数が減少し、倒産発生率は改善した。
 また、運輸業は、ドライバー不足や燃料高などがあるが、他の産業に遅れながらも価格交渉が進み、2年連続で倒産件数が減少し、倒産発生率が改善した。

産業別(普通法人)倒産発生率



 2025年度の全国企業倒産は、物価高や人件費の上昇などもあり、4年連続で増加し、2年連続で1万件を超えた。
 2025年度の普通法人の倒産は8,618件(前年度比2.3%増)で、倒産発生率は0.284%(前年度0.278%)だった。2021年度を底に4年連続で倒産発生率が悪化した。
 コロナ禍での資金繰り支援の副作用として過剰債務を抱えた企業も多いが、コロナ禍が落ち着くと同時に、物価高や人件費の上昇などが企業収益を圧迫し、労働集約型の産業を中心に倒産件数を押し上げている。
 2026年度には、コロナ借換保証の返済が最後のピークを迎える一方で、イラン情勢の動向による原油や関連製品の供給に支障が出始めている。企業倒産は緩やかに増勢すると同時に、倒産発生率の悪化も続くとみられる。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「円安」、企業の40.7%が「経営にマイナス」 望ましい為替レートは、「1ドル=136.8円」

東京商工リサーチは6月1日~8日、円安に関するアンケート調査を実施した。その結果、望ましい為替レートは、平均値「1ドル=136.8円」、中央値「1ドル=140.0円」で、現状の「1ドル=160円前後」とは、約20円の乖離があることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

「ナフサ供給」 支障がある85.0% 製造業で40.4%が在庫積み増しに動く

ナフサやシンナーなど石油化学製品基礎原料の供給不安が広がっているが、在庫を積み増した企業は30.7%(5,707社中、1,757社)で、製造業では40.4%(1,600社中、647社)に達したことがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

α・Z世代から大人まで巻き込み、「ぬい活」業界が好調 ~ 売上高は成長路線に、利益は4年前から倍増 ~

「ぬい活」の勢いが止まらない。 「おもちゃ」という枠を超え、1990年代中盤以降生まれの「α・Z世代」から大人まで活動に勤(いそ)しみ、ぬいぐるみ業界は特需に沸いている。 東京商工リサーチの企業データベースからぬいぐるみの販売やサービスなどを主な事業とする34社の業績を抽出した。

4

  • TSRデータインサイト

【第2回中東情勢アンケート調査】「マイナスの影響」 企業の80.6%に広がる 原油、ナフサなどの高騰、品薄に懸念強まる

米国とイスラエルのイラン攻撃による混迷が、世界経済に深刻な影響を及ぼしている。東京商工リサーチは6月1日~8日、2回目の「中東情勢」が企業の事業活動に与える影響をアンケート調査した。 「マイナスの影響がある」と回答した企業は80.6%(7,614社中、6,142社)で、8割を超えた。

5

  • TSRデータインサイト

【債権者集会詳細】船井電機の管財人、元代表への損害賠償請求を公表

破産手続き中の船井電機(株)の第3回債権者集会が6月10日15時過ぎから東京地裁で開かれた。 破産管財人側は、6月4日に大阪地裁に元代表を被告とした2億460万円及び遅延損害金の支払いを求める損害賠償請求訴訟を提起したことを公表した。

TOPへ