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「在留資格の厳格化」 企業の5%が廃業検討 ビザの厳格化で、外国人企業の半数近くが影響

~ 2026年 「経営・管理の在留資格の厳格化に関するアンケート」調査 ~


 「経営・管理」の在留資格(ビザ)の厳格化の影響が広がっている。2025年10月、許可基準が見直しされ、従来の資本金要件が500万円から3,000万円以上へ6倍に引き上げられた。さらに、これまでなかった申請者又は常勤職員のいずれかが日本語能力を有するなどの要件も加わり、関係企業は対応を迫られている。
 東京商工リサーチは外国人経営者にアンケート調査を実施し、299社から回答を得た。これによると半数近い45.2%の企業が、何らかの影響を受けると回答。廃業を検討すると回答した企業も5.3%あり、在留資格の厳格化に伴い、日本で活動する外国人経営者の企業では、事業継続の断念も現実味を帯びている。

 「経営・管理」の厳格化は、在留者が年々増え、ペーパーカンパニーなどの実態不明の企業を利用して日本に在留する外国人が増えている疑いがあるためだ。許可要件の資本金を3,000万円以上に引き上げ、一人以上の常勤職員の雇用義務、日本語能力などの要件が厳格化された。このため、実態不明の企業は大幅に減りそうだ。
 また、申請住所も自宅を事業所との兼用が認められず、税金などの履行状況も確認するなど、企業の信用チェックが強化される。
 すでに在留資格を得ている在留外国人は、3年を経過して更新する場合、改正後の許可基準に適合しなくても適合見込みなどを判断するという。だが、小・零細規模の外国人経営の企業が、厳格化に対応することは容易ではない。また、外国人の起業意欲が喪失する可能性もある。グローバル化が進む中、時代に逆行しないように事業実態のある企業との両立が求められる。
※本調査は、2026年3月31日~4月7日にインターネットによるアンケート調査を実施し、日本人経営の回答を除く有効回答299社を集計・分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。


Q1. 昨年(2025年)10月、政府は、日本で起業、事業を営む外国人の在留資格「経営・管理」の取得要件を厳格化しました。従来の資本金「500万円以上」から「3,000万円以上」などが柱です。これにより、貴社の経営はどう変化しますか?(複数回答)

 最多は「外国人による経営だが大きな変化はなかった」の54.8%(299社中、164社)だった。次いで、「増員など要件を満たすよう対応する」27.4%(82社)、「企業や事業の売却、他社との合併を検討する」11.7%(35社)、「経営権を日本人や永住資格のある人物へ移譲する」6.3%(19社)、「廃業を検討する」5.3%(16社)の順だった。
 規模別では、「影響はない」が大企業70.0%(20社中、14社)に対し、中小企業は53.7%(279社中、150社)と16.3ポイントの開きが出た。すでに資本金1億円以上の大企業は、資本金の増加見直しの影響が少なく、差が出たようだ。
 産業別では、「影響がない」が最も低かったのは、小売業の37.5%(16社中、6社)。次いで、不動産業の46.1%(13社中、6社)、建設業の46.9%(49社中、23社)、サービス業他の49.1%(59社中、29社)が続く。
 一方、「廃業検討」が最も高かったのは、情報通信業の16.6%(18社中、3社)小売業の12.5%(2社)。次いで、サービス業他の10.1%(6社)で、この3産業が10%を超えた。

Q1. 昨年(2025年)10月、政府は、日本で起業、事業を営む外国人の在留資格「経営・管理」の取得要件を厳格化しました。従来の資本金「500万円以上」から「3,000万円以上」などが柱です。これにより、貴社の経営はどう変化しますか?

Q2.その判断に影響を与えたのは、どの厳格化された要件ですか?(複数回答)

■資本金の引き上げが44.4%
 厳格化された要件は複数ある。影響を受けたとの回答で最多は、従来の500万円から6倍の3,000万円以上への「資本金・出資総額」で44.4%(45社中、20社)だった。
 次いで、要件なしから1人以上の常勤職員の雇用を求められる「雇用義務」が35.5%(16社)、要件なしから相当程度の日本語能力を求める「日本語能力」が28.8%(13社)、要件なしから公認会計士など経営に関する専門的な知識を有するものによる確認の「事業計画書」が11社(24.4%)、要件なしから経営・管理経験3年以上または修士相当以上の学位の「経営者の経歴・学歴」が20.0%(9社)。様々な要件の厳格化が影響を及ぼしていることがわかる。

Q2.その判断に影響を与えたのは、どの厳格化された要件ですか?



 経営・管理の要件厳格化は、不正な在留を減らす効果は大きいとみられる。だが、これから起業を目指す人や、更新許可を申請する経営者にも大きな負担が生じる。
 特に、資本金3,000万円のハードルは高い。2024年に日本国内で新しく設立された法人14万3,367社(個人企業他除く)のうち、資本金1,000万円未満は13万6,624社(95.2%)と9割を超え、資本金3,000万円以上は1,491社(1.0%)にとどまる。また、人手不足のなか、1人以上の常勤職員の雇用義務や日本語能力を有する人材確保も容易ではない。

 外国人経営者が多い小・零細規模のカレー店など「その他の専門料理店」の2025年度の倒産(負債1,000万円以上)は、物価高や人手不足などの影響を受け過去30年で最多の91件に達した。すでに経営が悪化した企業が多いとみられるだけに、要件の厳格化でさらにダメージを受ける可能性もある。
 今回の要件厳格化で、廃業を検討すると回答した企業も5.3%にのぼり、更新前に廃業を決断する企業も増えそうだ。また、コロナ禍の借入で膨らんだ負債を解消できなければ、倒産に直面する企業も出てくる。要件厳格化を進める一方で、副作用への配慮も必要かも知れない。 

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