• TSRデータインサイト

玩具業界、「増収増益」傾向 ~ 消費者のエンゲージメントが重要に ~

 「玩具業界」の書き入れ時、クリスマスとお年玉シーズンがやってくる。サンタさんからおもちゃが届くのを心待ちにしている子どもたちは多い。
 サンタさんと直接取引する玩具業界の業績は、ゲーム大手の落ち込みで3期連続の減収減益だった。しかし、大手3社を除く主な384社では、少なくとも5期連続の増収増益と好調を持続していることがわかった。


インバウンドとキダルトがキーポイント

 少子化の進行により、ひと昔前のように子どもだけをターゲットとして事業を展開することは難しくなっている。最近では少子化に加えて物価高ものしかかり、家庭の財布の紐もより固くなっている。
それでも伸びている玩具業界の成長の牽引役は、インバウンドとキダルトだ。以前から日本のアニメ・漫画などのコンテンツは外国人にも人気だったが、訪日外国人の増加が関連グッズの業績向上にも寄与している。また、キダルトとは子供(Kid)と大人(Adult)を組み合わせた造語で、大人になっても趣味として楽しむ「子供心を持つ大人」を指す。
「推し活」も追い風だ。自分の「推し」(応援したい対象)を見つけ、日頃持ち歩く鞄に推しグッズをつけるなど、生活の一部となっているケースも少なくない。

トレーディングカードなどが牽引

 巣ごもりや新商品の反動など業績変動の大きいゲーム大手の任天堂と販売子会社、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの3社を除く「玩具業界」の2024年度の売上高は2兆727億円(前年度比16.2%増)、当期純利益は1,384億円(同21.0%増)だった。2020年度以降、5期連続の増収増益となった。
384社玩具業界のうち、売上増を支えたのが製造業(109社)で、利益は小売業(102社)が押し上げた。製造業はキャラクターグッズメーカーが中心で、小売業はトレーディングカード販売会社などが牽引した。


◇      ◇       ◇
 キャラクターやゲーム、トレーディングカードなど、従来の主力商品だけでなく、近年はカプセルトイ、プライズ(クレーンゲーム景品)など、かつての人気商品へのニーズも高まっている。
 また、ぬいぐるみの販売現場では、マグネットで自立させ写真撮影しやすくしたり、着せ替え用の衣装を発売したりするなど、消費者の需要の寄り添い、「ぬい活」が活発になっている。こうした取り組みにより、商品写真がSNSを通じて拡散し、消費者の行動がさらに活発になる好循環を生み出す。同じ推し同士でのつながりが生まれることで推しへのエンゲージメントも高まっている。
 日本の玩具はキャラクターグッズを中心に世界でも人気だ。インバウンドやエンゲージメントの高い消費者に支えられながら、グローバル市場でも売上を伸ばしそうだ。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ