• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

「訪問介護」の倒産が3年連続で過去最多 ヘルパー不足、マイナス改定が響く、政府の支援がカギ

2025年1-11月「訪問介護事業者」の倒産動向調査


 訪問介護事業者の倒産が年間最多を更新したことが、東京商工リサーチ(TSR)の調査でわかった。2025年の倒産は11月末までに85件に達し、2023年から3年連続で年最多を更新した。
 ヘルパー不足や介護報酬の引き下げに加え、人件費やガソリン代や光熱費など、運営コストの上昇で、倒産に追い込まれる事業者が相次いでいる。政府は、総合経済対策で介護従事者への賃上げなど支援策を講じる見通しで、倒産増に歯止めがかかるか注目される。
 
 2025年の「訪問介護事業者」の倒産(負債1,000万円以上)は11月末までに85件(前年81件)で、これまで最多だった2023年67件、2024年81件をすでに超え、3年連続で年間最多を更新した。

 原因別では、大手との競争やヘルパー不足による利用者減少、介護報酬のマイナス改定などによる売上不振が71件(構成比83.5%)と大半を占めた。事業規模では、従業員10名未満が74件(同87.0%)、負債額別でも1億円未満が76件(同89.4%)で、小・零細規模の事業者の倒産が目立つ。一方で、負債1億円以上も9件(同10.5%)発生。中規模事業者にも倒産が広がってきた。

 10地区別では、最多が近畿の27件(同31.7%)。関東の22件(同25.8%)、中部の11件(同12.9%)、九州の9件(同10.5%)が続く。都道府県別では、最多は大阪府の12件。東京都の10件、北海道の8件、神奈川県と愛知県の各6件が続いた。

 政府が11月に発表した総合経済対策では、「医療・介護等支援パッケージ」で介護分野の職員の処遇改善として、「他職種と遜色のない処遇改善に向けて、令和8年度介護報酬改定において、必要な対応を行うこととし、報酬改定の時期を待たず、人材流出を防ぐための緊急的対応として、賃上げ・職場環境改善の支援を行う」と踏み込んだ支援方針を打ち出した。
 だが、コロナ禍の支援効果が薄れた2023年から訪問介護事業者の倒産は、他の介護事業と比較しても増加ペースが際立って高い。コロナ禍前から続くヘルパー不足が深刻さを増し、燃料費や介護用品の高止まりも経営にダメージを与えている。ICTなど業務効率化も重要だが、人手不足に喘ぐ事業者には新たなIT分野への投資は人的にも資金的にも負担が重い。

 全国老人保健施設協会など介護13団体が行った調査によると2025年度の賃上げ率は2.58%と全産業平均5.25%の半分にとどまった。人件費の伸び率鈍化が人手不足を生む悪循環に陥っている。
 訪問介護事業者を取り巻く環境は年々、厳しさを増しており、支援策の効果が注目される。

※ 本調査は、日本産業分類(細分類)の「訪問介護事業」の倒産を集計、分析した。
※ 調査開始は介護保険制度が始まった2000年から。2025年は11月末まで。

訪問介護事業の倒産 年次推移

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

年度上半期の「人手不足」倒産 過去最多の240件 深刻な“賃上げ疲れ”、『賃上げ倒産』が1.7倍に増加

2026年度上半期(4-9月)の「人手不足」倒産は、240件(前年同期比17.0%増)と過去最多を記録した。コロナ禍の2021年度同期の26件を底に、5年連続で前年同期を上回った。調査を開始した2013年以降の年度上半期では、これまで最多だった前年同期(205件)を抜いて最多を更新した。

2

  • TSRデータインサイト

外国人「技能実習制度」認定取消しは累計754社 製造業と建設業で7割占める、ワーストは愛知県の46社

外国人技能実習制度で実習生を受け入れていた企業のうち、法令違反や不正などを理由に実習実施の認定取消処分を受ける企業が相次いでいる。 2017年11月の現行制度施行以降、累計754社にのぼり、2026年度も8月までに50社が公表され、前年度と同水準のペースで推移している。

3

  • TSRデータインサイト

再編が進むホームセンター、キーワードは「1兆円」 ~ 統合や提携、共同購買やPB商品の取り組み ~

ホームセンター業界で統合や提携で競争力を高める動きが加速している。店舗が増えながら1店舗の売上効率が低下する「オーバーストア」状態で、大手各社は次の一手を巡りしのぎを削っている。5期連続(最新期:2025年4月-2026年3月期)で決算比較が可能な48社を分析した

4

  • TSRデータインサイト

1-9月の上場企業「早期・希望退職募集」は22社 人数は5,345人、黒字企業が6割を超える

2026年1月-9月に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は22社(前年同期34社)、対象人数は5,345人(同1万1,909人)だった。社数は3割(35.2%)減少し、対象人数は半減(55.1%)した。

5

  • TSRデータインサイト

新型コロナ破たん、9月は133件発生

 9月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円未満含む)が133件判明し、2020年2月の第1号の発生から累計1万4,700件に達した。2026年は3月に162件と3カ月ぶりの150件超えを記録。しかし、4月は一転して150件を下回り、5月は119件で、2021年1月以来の120件割れとなった。

TOPへ