2025年1-10月の「すし店」倒産が一転減少へ コメ高騰、材料費上昇をインバウンド需要でカバー
~ 2025年1-10月「すし店」倒産状況 ~
2022年から3年連続で増加をたどっていた「すし店」の倒産が、減少に転じた。コロナ禍後、仕入食材の価格上昇や職人不足、ゼロゼロ融資の返済開始などで2024年1-10月の倒産は24件(前年同期比33.3%増)と大幅に増加した。だが、2025年は10月までの累計が17件(同29.1%減)と減少に転じた。
コメ価格の高騰、食材の価格上昇など、コストアップに歯止めがかからないが、多くのすし店には外国人観光客が押し寄せ、売上増でコストアップを吸収しているようだ。
すし業界は、低価格の大手回転寿司チェーンが出店を加速し、競争が激化している。一方で、町のすし店は職人不足や価格競争に巻き込まれ、2022年から倒産が増勢に転じていた。
総務省の「家計調査年報」によると、二人以上の世帯のすし(外食)の年間支出は、2002年の1万6,133円から落ち込み、2011年には1万2,962円まで落ち込んだ。その後は緩やかに回復したが、コロナ禍で2020年は1万2,751円に再び減少した。
コロナ禍が落ち着くと、これまでの反動で外食の機会が増えたほか、値上げ効果もあって2024年は1万6,236円と22年ぶりに1万6,000円台に戻した。
2025年1-10月の「すし店」の倒産(負債1,000万円以上)は17件で、前年同期から約3割減少した。コメ価格の急騰や人件費の上昇、運営コストの上昇が続くが、訪日外国人は9月までに過去最速で累計3,000万人を超え、インバウンド需要が拡大している。特に、「すし店」は、外国人客に人気で、賑わっている店舗も多く見かけるようになった。都内の「すし店」は、訪日客を事前予約制として、仕入れロスが出ないように調整することが業績好調につながっているという。
値上げ効果に加え、インバウンド向けメニューなども寄与し、「すし店」は大手チェーン店を中心に、業績が好調だ。(株)FOOD & LIFE COMPANIESの「国内スシロー事業」は2025年度第3四半期は、売上高が前年同期比11.6%増の1,959億円。くら寿司(株)の2025年10月期第3四半期の国内事業は、売上高が同1.8%増の1,324億円と好調だった。
だが、小規模の町の「すし店」ではこれまで以上のコスト上昇を価格転嫁するのは客足に直結し、難しい。インバウンド需要も有限なだけに、「すし店」の倒産動向が飲食店の先行きをみる指標にもなりそうだ。
※ 本調査は、日本産業分類(小分類)の「すし店」を抽出し、過去10年のすし店の2016年から2025年10月までの倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。
