「港区」は住民の6人に1人が “社長さん” 社長の住む街 「港区赤坂」が13年連続トップ
2025年全国「社長の住む街」調査
全国で社長が最も多く住む街は、 「港区赤坂」が4,596人で13年連続でトップだった。港区は人口に占める社長比率が16.5%(前回15.9%)で、住民の6人に1人が社長だった。2位は渋谷区の13.9%。
タワーマンションや商業施設の開発が進み、「職住近接」志向の社長が増えている。東京都心に近い埼玉、千葉でも「川口市」、「船橋市」、「市川市」、「松戸市」など、東京のベッドタウンが全国30位以内に入った。
県庁所在地の社長比率は、東京23区を除き、2位に大阪市4.1%、3位に福岡市3.39%、4位に京都市3.31%、5位に名古屋市3.2%、6位に横浜市3.0%など、大都市圏の中核都市が上位を占めた。
首都圏以外の社長比率は、22位に兵庫県西宮市、23位に大阪府東大阪市が上位に入った。社長の居住地は「職住近接」がトレンドだが、昔からのベッドタウンや高級住宅地、中小企業の集まる街も根強く、「利便性」と「生活環境」で二極化が加速しているようだ。
※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約440万社)から、社長(個人企業を含む)の居住地を抽出し、ランキングした。前回調査は2024年10月1日発表。
※ 社長居住地の最小単位は「町村」ベースで、 「丁目」は区分していない。
※ 同一人物が複数企業の社長を務める場合、売上高が大きい企業を採用し、重複企業は対象外とした。
社長が住む街 最多は「港区赤坂」が13年連続トップ、唯一の4,000人越え
社長が住む街の全国トップは、東京都「港区赤坂」の4,596人だった。13年連続で首位を守り、唯一、4,000人を超えた。「赤坂」は、若者に人気の商業施設や繁華街がある一方で、高級マンションが建ち並ぶ閑静な居住地だが、各国大使館員や外資系企業の駐在者も多く暮らしている。
2位は、東京都「新宿区西新宿」の3,888人。乗降客数が世界一の新宿駅に隣接し、東京都庁など高層ビル群が並ぶ副都心に位置する。近年はタワーマンションの建設が続いて住宅供給が進み、交通アクセスなど利便性を重視する富裕層に人気が高い。
3位は、赤坂に隣接する東京都「港区六本木」の3,559人。六本木ヒルズが街のランドマークで、外国人社長も多い。次いで、「港区南青山」、「渋谷区代々木」、「港区芝浦」、「江東区豊洲」が続き、上位7位の順位は前年と変わらなかった。
8位に「港区南麻布」が浮上、9位は「中央区勝どき」が初めてベスト10入り
8位は、東京都「港区南麻布」が3,063人で前年10位から浮上した。有栖川宮記念公園が位置し、緑豊かな住環境が人気を集める。港区に8つある“麻布”が付く町名では、最も社長が多い。
9位は東京都「中央区勝どき」が3,060人で前年11位から浮上、中央区では初めて10位以内に入った。工場や倉庫が多く所在していたが、2000年以降、再開発が進みタワーマンションや商業施設が増加。銀座・築地エリアに隣接して人気を集め、町内人口は中央区で唯一3万人を超えて最も多い(2025年1月時点)。

東京都以外では神奈川県葉山町が最多
東京都以外では、神奈川県の「三浦郡葉山町」が1,644人で最も多く、前年同様56位に入った。マリンスポーツを楽しむ富裕層に人気が高く、別荘も多く建ち並ぶ。
このほか、大阪府「大阪市西区南堀江」が61位(前年63位)、同「大阪市福島区福島」が84位(同86位)で続く。ともにタワーマンションの建設が進み、大阪中心部へのアクセスの良さから人気を集める。東京と同様に利便性が高いエリアの人気が継続している。

市区郡別の社長比率 社長数は東京都世田谷区が最多、社長比率トップは港区
市区郡別の社長数は、トップ10を東京23区が独占し、20位までに18区がランクインした。
最多は、5万人を唯一超えた「世田谷区」の5万9,162人で6万人超えも視野に入ってきた。23区では大田区に次いで2番目に面積が広く、人口は断トツで最多の92万3,210人が暮らす。町村別で27位に入った「成城」など高級住宅地が点在する。
2位は「港区」の4万4,266人で、3位の「渋谷区」(3万2,228人)と1万2,000人超の差を付けた。人口に対する社長比率は全国トップの16.5%(前回15.9%)で、住人の6人に1人が社長だ。富裕層から人気が高い高級マンションの供給が続き、町村別10位以内に6エリアが入る。
3位は「渋谷区」で、駅周辺の再開発が進み、インバウンド観光客も多く訪れる「渋谷」エリアのほか、閑静な住宅地も多い。町村別では5位の「代々木」のほか、「広尾」、「恵比寿」、「神宮前」が20位以内に入る。社長比率は13.9%(同13.4%)で、港区に次いで2番目に高い。
社長比率が10%を超えたのは、東京都の「港区」、「渋谷区」、「千代田区」(13.4%)、「中央区」(10.3%)の4区だった。「千代田区」の社長数は9,247人で、市区郡別ランキングでは55位にとどまるが、人口が6万8,835人と23区で唯一、10万人を割るため、相対的に社長比率が高い。皇居を取り囲むように「大手町」や「丸の内」などのビジネス街、官公庁が集まる「霞が関」、国会議事堂など政治の中枢の「永田町」などがある。
東京都心に近い埼玉・千葉の市で社長数多く、社長比率は大阪市が高い
東京都以外では、13位の埼玉県「川口市」が2万2,095人で最も多く、東京都以外の市区郡では唯一、2万人を超えた。このほか、20位に千葉県「船橋市」、21位に同「市川市」、29位に同「松戸市」と、千葉県3市が30位以内に入った。4市とも東京都心に近い点が共通する。
首都圏以外では、22位に兵庫県「西宮市」、23位に大阪府「東大阪市」、25位に静岡県「浜松市中央区」、26位に鹿児島県「鹿児島市」、32位に愛媛県「松山市」が入った。
社長比率は、大阪府「大阪市中央区」が9.3%で、東京都以外で最も高く全国5位。このほか、9位に「大阪市西区」6.98%、10位に「大阪市北区」6.91%、12位に「大阪市天王寺区」6.5%と、大阪市が続く。


県庁所在地の社長比率 大都市圏や政令指定都市が上位に並ぶ
人口に占める社長比率を都道府県庁の所在地別でみた。トップは、企業数と社長数が多い東京23区の5.6%。市区郡別トップの港区をはじめ、渋谷区、千代田区、中央区の4区が10%超で、23区全体の社長比率を押し上げた。
次いで、2位に大阪市4.1%が続き、3位に福岡市3.39%、4位に京都市3.31%、5位に名古屋市3.2%、6位に横浜市3.0%など、大都市圏の中核都市と周辺の政令指定都市が並ぶ。
政令指定都市以外では、7位の徳島市2.9%が最高で、8位の那覇市2.85%、9位の甲府市と高松市が各2.84%で続く。
一方、社長比率が最も低かったのは山口市の1.6%だった。山口県は、地元の地銀や大手企業が本社を置く下関市が社長数5,067人で最も多く、社長比率も2.0%と山口市を上回る。経済の中心地と離れているため、県庁所在地の社長比率が低く抑えられたようだ。

「社長の住む街」は、経営する企業に近く、利便性の高い都心部を好む「職住近接」傾向が継続していることを鮮明に映し出した。事業戦略上、都心部に本社機能を置く限り、社長の居住地志向も都心集中が続くものとみられる。また、経営者層の「職住近接」志向を汲み取り、都心部ではタワーマンションによる住宅供給や商業地開発が2026年以降も控えている。利便性の向上がより一層、社長の関心を惹きつけている。
一方、東京商工リサーチが2025年5月に実施した「2024年度『本社機能移転状況』調査」では、東京都から他県へ本社機能を移した“転出”が“転入”を上回った。都心部の地価高騰やコロナ禍を経てリモート会議など非対面取引などの広がりが背景にあるとみられる。
本社機能だけではなく、社長の居住地は「生活環境」か「利便性」で変化の兆しが出ている。