全国の女性社長 68万4,669人 15年間で3.2倍増、女性社長率は沖縄県がトップ
第14回 2025年の「全国女性社長」調査
全国の約440万社のうち、女性社長は過去最多の68万4,669人(前年比5.4%増)にのぼることがわかった。前年から3万5,407人増え、全社長の15.55%(前年15.24%)を占めた。
調査を開始した2010年に21万2,153人だった女性社長は、15年間で3.2倍(222.7%増)に増えた。都道府県別の女性社長の最多は、東京都の17万5,258人、最少は島根県の1,768人で、100倍の開きがあった。女性社長率は、沖縄県が20.6%で唯一、20%を超えた。
女性活躍推進が叫ばれ、政府の創業支援や事業承継への支援も動き出し、企業や大学を巻き込みながら女性の活躍の場をサポートする取り組みが、少しずつ結実しているようだ。
女性社長の増加は、少子高齢化が進む中で、地域経済の活性化や後継問題の解消などに繋がることが期待される。だが、社会や家庭で女性に求められる役割は旧態依然の側面も残しており、仕事と家事、育児、介護などの両立には、周囲の協力や理解が欠かせない。
政府や自治体は、女性社長へのビジネス支援だけでなく、介護や育児のほか少子化対策などとリンクした社会環境や周囲の意識改革への支援も必要だろう。
※本調査は、東京商工リサーチが保有する2025年7月現在の約440万社の経営者情報(個人企業を含む)から、女性社長(病院、生協などの理事長を含む)を抽出し、分析した。調査は今回が14回目(前回は2024年10月22日発表)。
女性社長率 過去最高の15.55%、都道府県別では沖縄20.65%が最高
2025年の全国の女性社長は68万4,669人(前年比5.4%増)で、前年より3万5,407人増加した。全国の社長の15.55%(前年15.24%)を占め、女性社長率は過去最高を更新した。
都道府県別の女性社長は、最多が東京都の17万5,258人(前年16万5,102人)で、前年より約1万人増加し、17万人台に乗せた。次いで、大阪府6万6,145人、神奈川県4万3,954人、愛知県3万4,474人、福岡県2万9,214人の順で、大都市圏が並ぶ。9位の北海道2万802人までが2万人を超えた。
一方、最少は島根県の1,768人(同1,729人)で、前年より2.2%増えたが全国で唯一、2,000人を下回った。次いで、鳥取県2,303人、福井県2,416人、高知県2,601人、佐賀県2,702人の順。41位の秋田県2,835人から7県が3,000人を割り込んだ。
2025年1月1日現在の女性人口との対比では、10万人当たりの女性社長は東京都の2,459人が最多で唯一、2,000人を超えた。次いで、山梨県と沖縄県が各1,459人、大阪府が1,452人、福岡県が1,097人、茨城県1,081人の順。一方、最少は新潟県506人で、山形527人、島根531人の順。
都道府県別の「女性社長率」(全社長数に対する女性社長の割合)は、最高が沖縄県の20.65%(前年20.62%)で唯一、20%を超えた。次いで、山梨県17.69%、茨城県17.68%、東京都17.47%、兵庫県と大阪府が各16.98%と続く。一方で、最も低かった新潟県9.93%(同9.69%)と山形県9.99%(同9.78%)の2県は、前年に続いて10%に届かなかった。

地区別 「女性社長率」16%超は3地区
地区別の「女性社長率」は、近畿が16.37%(前年16.15%)で最も高く、4年連続でトップ。次いで、関東16.30%(同15.96%)、九州16.02%(同15.81%)の順で、上位3地区が16%を超えた。以下、中国15.01%、四国13.95%、北海道13.89%、中部13.81%、東北13.27%、北陸11.78%の順で続き、前年から順位の変動はなかった。
「女性人口10万人当たり」の女性社長数は、関東が1,351人(同1,269人)で最多。2位の近畿が1,130人(同1,075人)に200人以上の差を付けた。1,000人超えは上位2地区にとどまり、以下、九州969人、中国858人、中部と四国が各820人、北海道783人、北陸718人、東北716人の順。
女性社長数の増加率は、東北が前年比8.7%増で最も高く、続く関東6.4%増までの上位2地区が全国平均(5.4%増)を上回った。一方、最も増加率が低かったのは北陸の2.7%増で、北海道2.84%増、四国2.88%増の順に低調で3%未満にとどまる。

産業別 女性社長の過半数が「サービス業他」で活躍、飲食業や美容業、介護に多い
女性社長が最も多い産業は、「サービス業他」の34万3,476人(構成比50.1%)で、過半数を占めた。創業の敷居が低い食堂・レストランなどの飲食業や、顧客志向を掴んで女性が活躍しやすい美容業、介護サービスなどの業種に多い。
次いで、不動産業10万1,562人(同14.8%)が続き、初めて10万人を超えた。このほか、小売業6万8,324人(同9.9%)、製造業4万1,429人(同6.0%)が続く。
「女性社長率」は、不動産業が25.15%で最も高く、4人に1人が女性社長だ。次いで、サービス業他19.38%、小売業15.87%、情報通信業13.61%の順で高い。
一方、「女性社長率」が最も低いのは、建設業5.52%。このほか、農・林・漁・鉱業8.31%、運輸業9.48%の順で低く、下位の3産業は10%を下回る。経営者に限らず、一般的に男性労働者が従事するイメージの強い産業で、女性社長率は低調にとどまった。

女性社長の平均年齢は65.2歳、男性より1.6歳高い 年代別分布では70代が最多
年齢が判明した女性社長の平均年齢は65.2歳で、男性社長の平均63.6歳より1.6歳高い。産業別では、不動産業67.6歳が最も高く、小売業67.3歳、建設業66.1歳、卸売業66.0歳、運輸業64.8歳、製造業64.6歳が続き、4産業が全体平均より高い。一方で、情報通信業は57.3歳(前年58.2歳)で、60歳を唯一下回った。
年代別の分布では、70代が25.3%で最も多い。以下、60代24.6%、50代21.3%、80代以上15.1%、40代10.0%、30代2.9%、20代以下0.3%の順。
産業別では、農・林・漁・鉱業、建設業、卸売業、小売業、不動産業で70代の社長が多い。農・林・漁・鉱業は今回の調査で初めて70代の構成比が60代を上回った。一方、運輸業は唯一、50代の社長が最も多い。また、情報通信業では20代以下2.5%、30代8.9%と若い世代が際立つ。

規模別 売上高、従業員数ともに女性社長は小規模傾向、7割が売上1億円未満
売上高や従業員数が判明した企業を分析すると、売上高別の最多は1億円未満の70.5%で、7割を占める。同レンジの男性社長は59.5%で、女性社長が11.0ポイント上回る。次いで、1億円以上5億円未満が22.7%(男性社長27.7%)で続き、5億円未満が93.2%(同87.2%)と9割超を占めた。
一方、100億円以上は0.21%にとどまり、男性社長の1.00%とは約5倍の差が広がる。このほか、50億円以上100億円未満は0.28%(同0.84%)で、50億円以上は0.49%にとどまる。
従業員数別では、女性社長の最多は5人未満の62.1%だった。男性社長の54.0%を8.1ポイント上回る。このほか、5人以上10人未満が17.3%(同20.0%)、10人以上20人未満が10.6%(同11.9%)、20人以上50人未満が6.4%(同8.2%)、50人以上300人未満が2.9%(同4.8%)、300人以上が0.3%(同0.8%)の順。
売上規模、従業員数規模とも女性社長が経営する企業は、男性社長より小規模の傾向が強い。

女性社長に最も多い名前は「和子」 14回連続でトップを守る
女性社長の名前は、1位が「和子」の6,599人だった。本調査において14回連続トップと、不動の地位を守る。女性の生まれ年別では、昭和初期から昭和27(1952)年まで最も多い名前で、女性社長にもその傾向が表れている。
2位には「幸子」6,155人が続き、初めて6,000人を超えた。続く「洋子」5,963人、「裕子」5,424人と、上位4位が5,000人を超える。このほか、3文字では「久美子」4,646人が最も多い。
「子」以外で終わる名前としては、20位の「明美」2,883人が最も多い。このほか、21位の「真由美」2,745人、22位の「直美」2,607人、24位の「由美」2,511人など20位以下に散見されるようになる。
出身大学別 日本大学がトップを守る、東京大学が6位に浮上
女性社長の出身大学は、卒業生が日本一多い日本大学が499人(前年480人)でトップを守った。2位には慶応義塾大学433人(同410人)が入り、上位2校が400人を超える。このほか、早稲田大学382人、東京女子医科大学322人、青山学院大学256人、東京大学222人が続く。東京都以外に本部を置く大学では、7位の同志社大学214人が最多で、14位の大阪大学144人が続く。
国公立大学は、2年連続で順位を上げて6位に入った東京大学222人が最も多く、今回の調査で初めて200人を超えた。このほか、14位に大阪大学144人、15位に広島大学139人、18位に九州大学130人、25位に神戸大学109人、26位に千葉大学106人、28位に東京医科歯科大学104人、31位に京都大学100人が続き、8大学が100人を超えた。

