文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~
デジタル全盛のなか、文房具メーカーの業績が好調だ。用途が決まっているため技術やデザインに大きな変化を感じにくいが、文房具の進化は止まらない。国内メーカーの高性能な文房具は、インバウンド観光客のお土産だけでなく輸出も伸びている。さらに、キーボードやフリック入力が当たり前の時代に、高品質な文房具を選ぶケースも増えているようだ。
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度(※1)の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。
※1 7月~6月の本決算を集計
文房具メーカー(万年筆・ペン類・鉛筆製造業、毛筆・絵画用品製造業(鉛筆除く)、その他の事務用品製造業)150社を抽出し、2018年度~24年度までの業績を比較した。
各メーカーはペンだけでなく、手帳や消しゴム、マスキングテープなど、多様な大人向け商品の開発にも力を注いでいる。コロナ禍の2020年度は売上高が6,000億円を割り込んだが24年度は値上げ効果や海外向けが伸び、6,858億2,300万円(前年比6.0%増)、利益は640億700万円(同33.1%増)と、18年度以降で最高となった。

コクヨ(株)(TSRコード:570067421)は、2025年12月期の売上通期目標(連結、以下同)を3,570億円(前期比5.4%増)を見込む。筆記具を主に国内製造している(株)パイロットコーポレーション(TSRコード:295285133)の同期業績予想は1,330億円(同5.4%増)だ。
三菱鉛筆(株)(TSRコード291022120)も、2025年12月期第3四半期の売上高が640億8,100万円と過去最高を記録した。
国産メーカー各社は切磋琢磨し、速乾性の高い蛍光ペンや軽い書き味のペンなど、製品開発に意欲的に取り組んでいる。
さらに、インバウンド効果で、文房具メーカーの実力が世界に知られるようになった。文房具業界は、地道な国内ファンに支えられながら、海外ファンも増やし、グローバル市場でも売上を伸ばしそうだ。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年12月1日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)