• TSRデータインサイト

日産の再建計画、取引企業の半数がマイナスの影響 「賃上げ計画」、「サプライチェーン」に深刻な影響懸念

2025年6月「日産自動車の経営再建」に関するアンケート調査


 日産自動車の経営不振の影響が取引先に広がっている。日産グループと直接・間接問わず売上のある525社のうち、約半数(50.2%)が日産の経営再建計画が自社にマイナスの影響があると回答した。
 マイナスの影響への対応は、「仕入・外注先との契約を見直す」29.5%、「賃上げ計画を見直す」27.9%などと回答。日産の再生計画案は、取引先の見直しや賃上げなど、幅広い分野に広がる恐れがでてきた。
 東京商工リサーチ(TSR)は6月2日~9日、企業対象のアンケート調査を実施した。

 日産は5月、経営再建計画「Re:Nissan」を公表し、2027年度までに世界の17工場を10工場に統廃合し、約2万人の従業員を削減する計画を打ち出した。
 同時に、「サプライベースを見直し、より少ない数のサプライヤーでより多くの量を確保し、効率化を図っていく」と、サプライチェーンの見直しを示唆している。
 日産の主要サプライヤーの1社だったマレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064)と主要子会社は6月11日(日本時間)、米国で日本の民事再生法に相当するチャプター11を申請した。

 今回のアンケートでは、日産と直接・間接問わず取引のある企業の5割がマイナスの影響を受け、中小企業の6.0%が「自社の廃業を検討する」と回答し、深刻さを浮き彫りにした。日産の追浜工場や子会社が稼働する湘南工場の閉鎖は報道が先行し、日産からは公表はないままだ。
 工場の統廃合は、取引先にとって社員採用や設備投資など、事業計画に直結する。日産は迅速に、かつ丁寧な情報開示を急ぐべきだ。

※ 本調査は、2025年6月2日~9日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答6,641社を集計・分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(資本金がない法人・個人企業を含む)を中小企業と定義した。


Q1.日産自動車は5月13日に経営再建計画「Re:Nissan」を公表しました。国内外で約2万人の人員削減や拠点の閉鎖などに踏み切る方針です。貴社は、直近1年で日産自動車(グループ会社含む)への売上はありましたか?(単一回答)

◇「売上あり」は8.7%(大企業17.1%、中小企業8.0%)

 日産のグループを含めて直接販売(売上)のある企業は2.5%(6,641社中、167社)で、間接取引のある企業は5.5%(371社)、直接・間接ともに取引のある企業は0.6%(44社)だった。「取引あり」は8.7%(582社)で、「取引なし」は91.2%(6,059社)だった。
 規模別では、直接・間接問わず取引のある企業は、大企業が17.1%(514社中、88社)、中小企業が8.0%(6,127社中、494社)で、2倍以上の差があり、大企業の6社に1社が日産グループと取引していると回答した。
 「取引なし」は91.2%(6,059社)で、大企業が82.8%(426社)、中小企業が91.9%(5,633社)だった。
 日産の再建策は、取引先にも痛みを伴う可能性が高い。約9%の企業が何かしらの影響を受けそうだ。

Q1.日産自動車は5月13日に経営再建計画「Re:Nissan」を公表しました。国内外で約2万人の人員削減や拠点の閉鎖などに踏み切る方針です。貴社は、直近1年で日産自動車(グループ会社含む)への売上はありましたか?

産業別 売上があると回答は製造業が最多

 産業別では、「売上がある」が最も高い産業は製造業の15.0%(1,698社中、255社)だった。部品メーカーや機械メーカーなど製造業が多い。
 次いで、運輸業が10.67%(253社中、27社)、卸売業が10.64%(1,250社中、133社)と続く。
 一方で、「売上はない」が最も高かったのは、金融・保険業の98.5%(71社中、70社)で、農・林・漁・鉱業も98.4%(65社中、64社)と高かった。
 細分化した業種別で「売上がある」が最も高かったのは、輸送用機械器具製造業の43.5%(85社中、37社)、ゴム製品製造業の42.8%(28社中、12社)、非鉄金属製造業の34.6%(26社中、9社)と製造業が上位を占めた。

産業別回答状況

「日産グループへの売上がある(直接・間接)」業種別(上位)

Q2. (Q1で「あると回答した方へ)経営再建計画「Re:Nissan」は貴社の経営に影響を与えますか?(単一回答)

 「売上がある」と回答した企業に日産の再建計画の影響を質問した。「マイナス」が50.2%(525社中、264社)と半数を占めた。対して、「プラス」が1.9%(10社)、「特に影響はない」は47.8%(251社)だった。
 規模別では、「マイナス」は大企業が58.0%(81社中、47社)、中小企業が48.8%(444社中、217社)と大企業が9.2ポイント高かった。大企業は、直接取引も多く、「マイナス」の影響を受けやすいようだ。
 産業別では、「マイナス」が最も高かったのが、運輸業の60.8%(23社中、14社)。次いで、製造業の55.8%(224社中、125社)、卸売業の52.9%(117社中、62社)、情報通信業の52.0%(25社中、13社)の4産業が半数を超えた。

Q2. (Q1で「あると回答した方へ)経営再建計画「Re:Nissan」は貴社の経営に影響を与えますか?

Q3. マイナスの影響にどのように対応しますか?(複数回答)

 「マイナス」と回答した企業の対応方法を尋ねた。最も回答企業が多かったのは、「仕入・外注先との契約を見直す」が29.5%(193社中、57社)だった。工場閉鎖や生産台数の減少に伴う措置で、自社の取引体制の見直しを検討している企業が多かった。「賃上げ計画を見直す」の27.9%(54社)、「採用計画を見直す」20.2%(39社)、「人員削減を検討する」17.0%(33社)など、自社の人事面の変更を予定する企業が多いこともわかった。
 「自社の廃業を検討する」も5.1%(10社)あった。自由回答では、「別産業に更に軸足を移す」「新たな発注先を開拓する」「減収見込みだが、利益貢献度が皆無なので影響なし」などの声が寄せられた。

Q3. マイナスの影響にどのように対応しますか?

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ゴールデンウィーク明け、「退職代行サービス」の利用は慎重に

長かったゴールデンウィークが終わる。職場「復帰」を前に例年4月の新年度からGW明けにかけ、退職する人の話題が持ち上がる。この時期の退職代行サービスの利用も増加するという。4月に実施した「退職代行に関する企業向けアンケート調査」から利用するリスクの一端が浮き彫りになった

2

  • TSRデータインサイト

トーシンホールディングスの「信用調査報告書」

5月8日に東京地裁に会社更生法の適用を申請した(株)トーシンホールディングス(TSRコード:400797887、名古屋市、東証スタンダード)を取り上げる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~

生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増している。バブル経済1988年度(4-3月)以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録した。

4

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度の「早期・希望退職」 は2万781人 約7割が「黒字リストラ」、2009年度以降で4番目の高水準

2025年度に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年度51社)で、人数は2万781人と前年度(8,326人)の約2.5倍に急増したことがわかった。社数は前年度から約1割(9.8%減)減少したが、募集人数は2009年度以降で4番目の高水準となった。

TOPへ