• TSRデータインサイト

2025年5月の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産は35件 2カ月ぶり30件台 累計1,963件に達する

2025年5月度「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況


 2025年5月の「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用した企業の倒産は、35件(前年同月比47.7%減)だった。12カ月連続で前年同月を下回ったが、2025年では3月(41件)に次いで、1月に並び2番目の高水準だった。
 コロナ借換保証が始まって1年が経過し、返済が本格化する時期を迎える。返済猶予(リスケ)で判断を先送りしているケースもあるが、業績の回復遅れで返済原資の確保が難しい場合、事業継続を断念する企業が今後、増えることも懸念される。
 ゼロゼロ融資を利用後の倒産は、2020年7月からの累計が1,963件に達し、2,000件が目前になってきた。

 「ゼロゼロ融資」は、コロナ禍で急激な業績変動に見舞われた企業に、実質無利子・無担保で融資する制度で43兆円が活用された。コロナ禍で資金繰りを下支えし、企業倒産の抑制に劇的な効果をみせた。だが、コロナ禍からの業績回復が遅れ、物価高や賃上げ、金利上昇なども収益悪化を招くなか、返済が足かせになり2022年の後半から行き詰まる企業が増勢をたどった。

 物価高が続くなかで人手不足がより深刻さを増し、トランプ関税など新たな経営環境への変化にも対応を迫られている。今後、日銀の政策金利の引き上げも見込まれるが、すでに金融機関の貸出金利は上昇しており、これまで以上にゼロゼロ融資の返済負担が重くのしかかることが懸念される。
 政府は2025年1月以降の中小企業の資金繰り支援について、コロナ対応型の支援から経営改善や事業再生、成長促進を含んだ経営課題への対応に舵を切った。企業側も自立的に収益構造の抜本的な転換や見直しを図るなど、業績改善策への実行力が問われることになりそうだ。

※ 本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていた企業の倒産(法的・私的)を集計、分析した。

ゼロゼロ融資利用後倒産 月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

3

  • TSRデータインサイト

チャプター11をめぐる冒険 ~ なぜマレリはアメリカ倒産法を利用したのか ~

ずっと日本にいるのに時差ボケが続いている。  「マレリのチャプター11が近いから関連サイトをチェックし続けろ」と6月6日に先輩に言われて以降、私の生活はアメリカ時間だ。

4

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

5

  • TSRデータインサイト

定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。東京商工リサーチが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。

TOPへ