• TSRデータインサイト

企業価値担保権への注目高く ~ ゴードン・ブラザーズ・ジャパンと金融庁がトークセッション ~

 動産評価や換価、投融資を手掛ける(株)ゴードン・ブラザーズ・ジャパン(TSR コード:296732150、千代田区、GBJ)が主催するトークセッション「企業価値担保権 誕生秘話」が5月20日、都内で開催された。
 動産に係る多くの知見を有するGordon Brothers Group,LLC(アメリカ・ボストン)の日本法人として2006年に設立されたGBJは、バリュエーションや動産換価、ABL等でプレゼンスを有している。

 昨年6月に成立した「事業性融資推進法」の中核をなす企業価値担保権は、企業と金融機関(レンダー)との関係性や窮境局面の伴走支援の在り方を変える可能性を秘め、実務展開に向けて各所で議論が続いている。
 こうした背景もあり、セッションには倒産・事業再生に精通した弁護士や公認会計士、金融機関の担当者など約90名が参加した。

 セッションには、GBJ・堀内秀晃代表取締役社長、金融庁・水谷登美男課長補佐(信用制度参事官室)が登壇した。
 堀内社長は冒頭、「企業価値担保権は水谷氏が政策オープンラボ(金融庁職員による自主的な政策提案の枠組)での水谷氏の取り組みが原動力となった」との見方を示した。そのうえで、「アメリカの担保制度もアイデア実現の1つとなっているが、制度を調べる上で参考にされたのは『アメリカ事業再生の実務』(※1)だ。これは私の共著書だ」と述べ、会場を盛り上げた。

 水谷氏は「当時、金融検査マニュアル廃止に向けた検討をするなかで、アメリカの金融当局の検査監督の実務を調べた。日米では、金融機関の融資実務にも大きな違いがあることが分かり、勉強するなかで、この名著に出会った」と応じ、さらに沸かせた。
 また、「企業価値担保権を取得できる者は、当初、金融機関のみを想定していた。しかし、法制度の整合性などを審議するなかで、担保権は万人が利用できるものである必要があるという指摘を受け、そのために信託を用いることとなった」とのエピソードも披露された。制度構築では、岸田政権下で「スタートアップ育成5か年計画」が閣議決定されたことも後押しになったという。
 水谷氏は、「企業価値担保権の創設の目的は、国内の融資実務をよりよくすること。事業のキャッシュフローに着目した融資により一層取り組みやすくなるよう、企業価値担保権に関連する会計面や金融機関の実務をさらにサポートしていきたい」と法制化に込めた想いを語った。
※1 アメリカ事業再生の実務: 連邦倒産法Chapter11とワ-クアウトを中心に(金融財政事情研究会、2011年2月)



登壇したGBJ・堀内社長(左)、金融庁・水谷課長補佐

登壇したGBJ・堀内社長(左)、金融庁・水谷課長補佐


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年5月29日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)






人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「人手不足倒産予備軍」  ~ 今後は「人材採用力」の強化が事業継続のカギ ~

賃上げ圧力も増すなか他社との待遇格差で十分な人材確保ができなかった企業、価格転嫁が賃上げに追い付かず、資金繰りが限界に達した企業が事業断念に追い込まれている。  こうした状況下で「人手不足」で倒産リスクが高まった企業を東京商工リサーチと日本経済新聞が共同で分析した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「人手不足」倒産 359件 サービス業他を主体に、年間400件に迫る

深刻さを増す人手不足が、倒産のトリガーになりつつある。2025年11月の「人手不足」倒産は34件(前年同月比70.0%増)と大幅に上昇、6カ月連続で前年同月を上回った。1-11月累計は359件(前年同期比34.4%増)と過去最多を更新し、400件も視野に入ってきた。

3

  • TSRデータインサイト

【社長が事業をやめる時】 ~消えるクリーニング店、コスト高で途絶えた白い蒸気~

厚生労働省によると、全国のクリーニング店は2023年度で7万670店、2004年度以降の20年間で5割以上減少した。 この現実を突きつけられるようなクリーニング店の倒産を聞きつけ、現地へ向かった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「税金滞納」倒産は147件 資本金1千万円未満の小・零細企業が約6割

2025年11月の「税金(社会保険料を含む)滞納」倒産は10件(前年同月比9.0%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。1-11月累計は147件(前年同期比11.9%減)で、この10年間では2024年の167件に次ぐ2番目の高水準で推移している。

5

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

TOPへ