• TSRデータインサイト

「ミュゼプラチナム」の第三者破産、利用者が知っておくべきこと

~ 現代ビジネス法研究所・吉元利行代表に聞く ~

 5月16日、脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を運営するMPH(株)(TSRコード:036547190、東京都)の債権者が東京地裁に破産を申し立てた。ミュゼは積極的な広告宣伝などから業界大手の地位を固め、利用者(契約者)も多い。第三者破産はどのような手続きなのか。また、申し立てられた今、利用者はどのように対応すればいいのか。
 東京商工リサーチ(TSR)は、大手信販会社で長年法務に携わり消費者問題に詳しい吉元利行氏(現代ビジネス法研究所代表)に話を聞いた。


―第三者破産の申請から破産開始決定や棄却など結論が出るまでの間の利用者の立場は
 これまでと変わらない。従来通り、運営会社にはサービスの履行や契約に則った返金を要求することができる。

―現時点で利用者ができることは
 破産開始決定が出ると、破産者を当事者とする破産財団に関する訴訟手続きは中断する。個別に支払いを求めた訴訟を提起し、強制執行が可能となっても、開始決定とともに手続きが中断する。したがって、いま何かをやっても徒労に終わる可能性がある。
 第三者破産の場合、自己破産よりも開始決定がでるまで時間がかかる場合が多い。
 ただ、今回のケースでは従業員への給与未払いなどが明らかになっているため、破産手続開始原因の事実の疎明がしやすいのではないか。このため、裁判所は早期に開始決定を出す可能性もある。
 手続きが早く進むほど資産の流出を防げるため、その意味で今回の第三者破産は債権者にとってメリットがある。

―支払いにあたり、クレジット・信販会社を利用していた場合は
 役務(サービス)を受けられる状態にない場合は、「支払い停止の申し出書面」をクレジット・信販会社に提出すれば、代金の請求は停止される。

―いわゆる「前払いビジネス」を巡っては、過去に多くの被害が発生した
 たとえば、プリペイドカードや電子マネーなどの前払式支払手段の発行者には、原則として未使用残高の2分の1以上の額に相当する額の供託を義務づけている。
 利用者からの信用を受け、将来的なサービスの提供を期待してお金をいただくというのが前払いビジネスでも、上記のような供託制度をルール化するのが良いのではないか。
 また、特定商取引法においては、継続的役務提供(長期にわたるサービス)について規定がある。顧客に交付する契約書面には、預かったお金について保全措置を講じているか否か、記載することが求められている。このような記載内容を見ずに契約している方が多いのではないだろうか。保全措置の有無をしっかり確認するよう、注意をする必要がある。


ミュゼプラチナム看板

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

破産の聘珍樓に予約 約1,000組、前払い客も ~ 横浜中華街の御三家の一角、破産の影響広がる ~

横浜中華街の御三家として知られる老舗の中華料理店である(株)聘珍樓(TSRコード: 017658390、横浜市)と関連2社が5月21日、破産開始決定を受けた。

2

  • TSRデータインサイト

警備業界は大手2社の寡占化が進む 人手不足で倒産・休廃業が過去最多

全国の主な警備会社828社の2024年の業績は、売上高が1兆9,180億円(前年比2.6%増)、最終利益は1,604億円(同15.6%増)と、堅調に推移している。 業界市場は拡大しているが、大手の寡占化が進み、中小・零細事業者は人手不足でコストが上昇し、経営環境は厳しさを増している。

3

  • TSRデータインサイト

ミュゼプラチナム、第三者破産に「積極的な対抗せず」 ~ 運営会社MPH・高橋英樹社長 単独インタビュー ~

大手脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を運営するMPH(株)の動向が注目されている。MPHのほか2社でフランチャイズ展開を進めているが、今回の第三者破産を当事者はどう受け止めているのか。 東京商工リサーチは、MPHの高橋英樹社長と関係者に単独取材した(取材日は5月21日)。

4

  • TSRデータインサイト

2025年1-5月の「早期・希望退職」募集人数は8,711人で前年2倍に急増、相次ぐ大型募集

 2025年1月-5月15日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は19社(前年同期27社)で、前年同期より約3割(29.6%減)減少した。しかし、大手メーカーの大型募集が相次ぎ、対象人員は、8,711人(前年同期4,654人)と前年同期の約2倍(87.1%増)に急増した。

5

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

TOPへ