楽器販売店の売上高「5%成長」を維持 ~アニメブームでの裾野拡大とギターブーム~
楽器販売店(楽器店)の売上高が「5%成長」を続けている。全国の楽器店182社の2024年(1-12月)売上高は合計783億5,900万円で前年から5.4%増えた。
人口減少や趣味の多様化など楽器販売を取り巻く環境は厳しいが、アニメ人気による初心者層の開拓や電子楽器への需要拡大、資金力のあるシニア層のギターブームや高級楽器の購入などが楽器屋さんの成長を支えている。
ただ、楽器のニーズにはトレンドがある。楽器メーカー大手のヤマハ(株)(TSRコード450030733)は、最大市場・中国での需要減少や嗜好変化に伴い、グローバルで生産体制を見直している。日本国内も現在の状況がいつまで続くかは見通しにくい。
2期連続5%成長
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約400万社)で、日本標準産業分類「楽器小売店(除く音楽ソフト販売)」を主業種とする企業のうち、2024年(1-12月)を最新期とし、3期連続で売上高と最終利益が比較できる182社を抽出し、分析した。
2022年の売上高は合計707億4,800万円だったが、2023年は743億3,800万円(前年比5.0%増)に伸長。さらに、2024年は783億5,900万円(同5.4%増)と「5%成長」を連続して達成した。
一方で、最終利益は苦戦し、2024年は18億4,700万円(同2.8%減)と落ち込んだ。ただ価格転嫁も進んだとみられ、赤字企業率は20.3%(2022年24.7%、2023年20.8%)と改善した。コスト増加を転嫁しながら、きめ細かくニーズを汲み取り販売を伸ばした楽器店と、競争激化でジリ貧の店舗との2極化が進行しているようだ。
ある楽器店(都内)は、「近年は中古買い取りだけでなく、新品の仕入価格が高騰している」と漏らす。ただ、「在庫を多く持つ楽器店に客足は向きやすい。こうしたニーズについていけない小規模の販売店は脱落しており、仕入を絞ることはできない」という。
業界大手の島村楽器(株)(TSRコード:291307450)の業績をみると、2025年2月期売上高は490億円(前期比約7%増)と好調だ。裾野の広がった楽器販売は、初心者にも敷居が低い大手が引き付けている面もありそうだ。
変わるニーズと価格高騰など事業環境は決して追い風ではない。採算改善と需要予測のハーモニーがより大切になっている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年5月2日号掲載「取材の周辺」を再編集)