• TSRデータインサイト

コメ農家の倒産・休廃業が過去最多 ~ コメ作りの「あきらめ」、さらに増加も ~

 コメ価格の高騰が止まらない。農水省が18日に発表した3月の米価格(相対取引価格)は2万5,876円で、1年前の約2倍の高値だ。
 政府は備蓄米を放出したが、小売業者にはなかなか届かず、韓国産やアメリカ産の輸入拡大も検討されている。
 2024年のコメ農家(米作農業)の倒産と休廃業・解散(休廃業)が統計を開始した2013年以降で最多の89件に達した。2025年もすでに倒産が2件発生し、コメ不足で生産農家が苦境に陥る異常事態になっている。
 不安定な価格推移や生産コストの上昇を早く止めないと、後継者問題が深刻になっているコメ農家の倒産や休廃業を後押しすることも危惧される。



 コメ価格は、食生活の変化でコメ離れが進む一方、古米などの過剰在庫もあって2014年産は1万2,000円を割り込んでいた。その後、在庫調整などで価格は1万5,000円台で安定していたが、コロナ禍で飲食店の休業などが広がって需要が減退。在庫の積み上がりから価格は下落傾向をたどっていた。
 ところが今回は、コメ不足を目にした消費者がコメ購入に動き、需給バランスが崩れて価格が上昇に転じた。本来、在庫が増えると米価は下がるはずだ。それが今は在庫を一定水準に保ち、米価を安定させる手法が効かなくなった。不作や在庫の供給不足が、価格上昇を招く悪循環を招いている。
 米価下落はコメ農家の意欲と収入ダウンを招き、作付面積の減少や廃業や倒産が増える。米価は微妙なバランスで成り立つのだ。

米の相対取引価格の推移

コメ農家の倒産・休廃業が過去最多

 東京商工リサーチの企業データからコメ農家(米作農業)の倒産と、事業を停止した休廃業・解散を集計した。コロナ禍は小康状態にあったが、2023年は83件に急増。2024年も過去最多の89件に達した。
 コメ農家は疲弊している。2025年はこれまで以上に事業継続を断念するコメ農家が増える可能性が高まっている。

米作農業の倒産、休廃業・解散 年次推移


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年5月1日号掲載「取材の周辺」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

銀行員の年収、過去最高の653万3,000円 3メガ超えるトップはあおぞら銀行の906万円

国内銀行63行の2024年度の平均年間給与(以下、年収)は、653万3,000円(中央値639万1,000円)で、過去最高となった。前年度の633万1,000円(同627万5,000円)から、20万2,000円(3.1%増)増え、増加額は3年連続で最高を更新した。

2

  • TSRデータインサイト

タクシー業界 売上増でも3割が赤字 人件費・燃料費の高騰で二極化鮮明

コロナ禍を経て、タクシー業界が活況を取り戻している。全国の主なタクシー会社680社の2024年度業績は、売上高3,589億5,400万円(前期比10.6%増) 、利益83億3,700万円(同11.1%増)で、増収増益をたどっている。

3

  • TSRデータインサイト

「調剤薬局」 中小・零細はリソース不足で苦戦 大手は戦略的M&A、再編で経営基盤を拡大

 調剤薬局の大型再編が加速するなか、2025年1-8月の「調剤薬局」の倒産は20件(前年同期比9.0%減)で、過去最多の2021年同期と2024年同期の22件に迫る多さだった。今後の展開次第では、年間初の30件台に乗せる可能性も高まっている。

4

  • TSRデータインサイト

りそな銀行、メイン取引先数が増加 ~ 大阪府内企業の取り込み加速 ~

関西や首都圏で大企業から中堅・中小企業のメインバンクとして確固たる地位を築くりそな銀行。「2025年全国メインバンク調査」ではメインの取引社数は3メガバンクに次ぐ4位の4万511社だった。東京商工リサーチが保有する全国の企業データを活用しりそな銀行がメインバンクの企業を分析した。

5

  • TSRデータインサイト

メインバンク調査で全国5位の北洋銀行 ~圧倒する道内シェアで地域経済を牽引~

「2025年全国メインバンク調査」で、北洋銀行(2万8,462社)が3メガ、りそな銀行に次ぎ、調査開始の2013年から13年連続で全国5位を維持した。北海道に169店舗、都内1店舗を構え北海道内シェアは約4割(37.9%)に達する。

TOPへ