「ブライダル産業」の倒産や廃業が高水準 魅力的なプラン・設備の提供が生き残りのカギ
2024年度「ブライダル産業」の倒産、休廃業・解散調査
ブライダル産業で倒産や廃業が目立つ。2024年度の倒産(負債1,000万円)は13件(前年度比27.7%減)で、過去10年で2023年度の18件に次ぐ2番目だった。また、2024年度の休廃業・解散は、4-12月で37件を数え、すでに年度最多だった2023年度の35件を抜き、最多を更新したことがわかった。
結婚式場は、式だけでなくレストランやパーティーなどバンケット部門を強化し、提供するサービスが多様化している。だが、流れに乗り切れない結婚式場紹介業、結婚相談所などを含む「ブライダル産業」は市場撤退を迫られており、ビジネスモデルが曲がり角を迎えているようだ。
3月21日、福岡県を中心に結婚式場を運営していた(株)アルカディア(TSRコード:930096622、久留米市)が破産開始決定を受けた。負債は54億269万円にのぼり、九州・沖縄の結婚式場では過去最大の倒産となった。また、石川県でも結婚式場を運営する(株)かづ美(TSRコード:580112217、金沢市)が2024年12月20日、負債約30億円を抱えて民事再生法の適用を申請したが、再生が困難となり3月21日、破産開始決定を受けた。
厚生労働省の人口動態統計によると、国内の婚姻件数は1972年の109万9,984組をピークにして、その後は減少をたどり、2024年は49万9,999組とピークの半分以下に落ち込んだ。
この間に新型コロナが直撃。三密回避で結婚式のキャンセルや延期が相次ぎ、ブライダル産業は大打撃を受けている。
ブライダル産業の「新型コロナウイルス」関連倒産は、2020年度63.6%(11件中、7件)、2021年度66.6%(6件中、4件)、2022年度75.0%(4件中、3件)、2023年度72.2%(18件中、13件)と深刻さを増し、2024年度も53.8%(13件中、7件)と半数を超えた。
2024年度の全倒産(1万144件)に占めるコロナ関連倒産(2,613件)の比率は25.7%だけに、他産業よりコロナ禍の影響が直撃したことがわかる。結婚式場は典型的な装置型産業で、設備などへの先行投資が大きい分だけ、式のキャンセルや営業自粛が収益悪化を招いた格好だ。
コロナ禍が落ち着き、ブライダル市場には活気が戻ってきた。だが、少子化で結婚適齢期人口が減少、未婚率は上昇し婚姻数は減っている。さらに、コロナ禍以前から広がっていた「ジミ婚」「ナシ婚」が一般的になり、ブライダル産業を取り巻く環境は厳しさを増している。
ブライダル業界では、手軽にパートナーとつながるマッチングアプリも広がり、結婚相談業や結婚式場仲介業は否応なしに変革を迫られている。
ただ、「結婚」は人生の一大イベントに変わりはない。マーケットは縮小しても底堅いニーズが見込まれるだけに、ユーザーに選ばれる魅力的なプランや設備は欠かせない。今後、他社との差別化を図るサービス、価格の見直し、そして顧客の満足度が生き残りのカギになるだろう。
※本調査は、日本標準産業分類の「結婚式場業」「結婚相談業,結婚式場紹介業」の倒産(負債1,000万円以上)および「休廃業・解散」を集計、分析した。